第99話 傾向と対策
スペル・リンク・フェス参加者が準備する中、会場では開始に先立って実況解説の映像が流れていた。
「さあ。いよいよ始まります。スペル・リンク・フェス。実況にはダンジョン解説歴十年の田辺さんをお迎えしております。よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします」
「田辺さん、ここ品川ダンジョンは火力有利なダンジョンと言われていますが、その辺りどう見ますか?」
「はい。一見、デュームにとって有利なダンジョンを選定したのではないか、という批判が目立ちますが、実際にはこれ裏の狙いがあるんですよ」
「裏の狙い……ですか?」
「はい。この品川ダンジョン選定の裏には、マッピングスキルの弊害を無くす意図があります」
「ほう。そうなんですか?」
「ええ。私は兼ねてからマッピングスキルの有害さを主張してきましたが……、マッピングスキルを駆使すると自然にアイテム探索に偏り(ペラペラ)……、スペルカードの高騰を招くことになり(長々)……」
「あー、はいはい。それでは品川ダンジョンの火力有利の構造について解説お願いします」
田辺はぞんざいにあしらわれてムッとするも、気を取り直して解説に戻る。
「品川ダンジョンは弓矢を装備したモンスターや遠距離魔法を使ってくるモンスター、更には高火力広範囲の魔法でなければ破砕できない障害物が設置されており、常にリスポーンしています。そういったことから、火力の集中が得意なデュームが有利と言われていますが、忘れてはならないのはこの大会が〈スペルカード〉を用いた大会だということです」
「ふむ。では、〈スペルカード〉が絡むとデュームが有利とは限らないと?」
「はい。デュームは他のグループに比べ、〈スペルカード〉の導入が遅れた背景があります。この大会によってその印象を払拭したいという思惑があるんでしょうね。〈スペルカード〉はドロップアイテムの保護防衛を目的としたアイテムです。デュームが〈スペルカード〉を上手く運用できず、魔石などを上手く補給できなければ、火力が高くとも敗退する可能性は高くなります。また、『各自の持てる〈スペルカード〉は三枚まで』と銘打たれたルールも興味深いですね」
「というと?」
「〈スペルカード〉三枚では、品川ダンジョンを攻略するのは困難です。それよりもアイテム破壊を使うモンスターが多いですからね。なので、各グループでチームワークと連携が試されることになります。どこで誰が〈スペルカード〉を使うか。また、アイテムを誰が持つか」
「なるほど」
「デュームは結束力が鍵となるでしょう。一方で、C・エクスプローラーはこれまでかなり〈スペルカード〉を節約しながらダンジョンを攻略する方法を研究しています」
「では、田辺さんはC・エクスプローラーが有利だと?」
「そうとも限りません。というのも、品川ダンジョンの場合、ダンジョン内部の構造がほぼすべて解明されているため、マッピングスキルがあまり意味を成さないのです」
「ああ。そこでマッピングスキル無用論に繋がるんですか」
「そうです。雪代悟のマッピングスキルがあれば、パーティーの〈スペルカード〉運用をサポートし、大きく節約を助けることができますが、品川ダンジョンではダンジョン内の構造がすでに分かっているので、マッピングスキルを使わなくてもアイテムや敵の位置が把握できる。つまり他のグループもアイテム破壊のタイミングをあらかじめ掴んでいるので意味がないのです」
「なるほど。ところで、田辺さん……」
「ん? なんです?」
「マッピングスキルで〈スペルカード〉の運用をサポートできるなら、通常マッピングスキルは有用なのでは?」
「………………」
「………………」
気まずい沈黙が流れる。
逆にコメント欄は加速した。
・ちょっw
・リポーターさんw
・語るに落ちてて草
・マッピングスキル、超有能だった
・マッピングスキル使うわ
・リポーター、そこに気づくとは鋭いなw
・リポーター、セマユキかな?
「あっ、ダンジョンへの突入が始まるようです」
「さあー、それでは〈スペルカード〉のC・エクスプローラーと火力重視のデューム、いったいどちらが有利なのか。また、他のグループの動向も見逃せません。どうなるか楽しみですね。いったんCMです」
♦︎
悟達はダンジョン突入前、最後の作戦会議をしていた。
「デュームは一つ大事なことを忘れている。カボチャ頭の悪魔の存在だ」
「あのカボチャ頭さんがこの品川ダンジョンにも現れるんですか?」
天音が目を丸くしながら聞いた。
「あれ? でも、品川ダンジョンでそんな報告あったっけ?」
美波が首を傾げる。
「いくつかの動画を見て回った結果、カボチャ頭の悪魔が出現する法則には目星がついた」
「本当ですか?」
「いったいどんな法則が?」
「至ってシンプル。〈スペルカード〉を所持してダンジョンに入ると現れる」
「ああー」
「なるほど。それで私達はカボチャ頭さんによく遭遇するんですね」
「この大会ではかつてないほど大量の〈スペルカード〉がダンジョン内に持ち込まれる。それは逆に言うと、カボチャ頭の悪魔がかつてないほどたくさん現れるということでもある」
「ということは……」
「〈身代わりの護符〉が手に入るってこと?」
榛名が目を輝かせながら言った。
「そういうこと。カボチャ頭の悪魔のドロップする〈身代わりの護符〉を手に入れれば、その後のダンジョン攻略が圧倒的に有利になる。アイテム破壊を警戒しなくて済むからね。だから、ダンジョンに入ったら、すぐにカボチャ頭の位置を知らせるよ。みんなそれぞれいの一番にカボチャ頭の悪魔を狙ってくれ」
「ラジャー」
「もし、悟の読み通りカボチャ頭の悪魔が現れたら、私らが圧倒的に有利だな」
「ああ。ただ、まだ仮説だから確実とは言えないけどね」
「一応、セカンドプランも用意しておいた方がいいのでしょうか」
「それにカボチャ頭が現れたら、またダンジョン内が混乱するんじゃない? もうデュームの奴らのグダグダに巻き込まれるのはごめんなんだけど」
美波がウンザリした様子で言った。
「そうだね。ま、カボチャ頭の悪魔が現れなかったら現れなかったで普通に〈スペルカード〉を使って攻略しよう。デュームが壊滅した時の対策も考えてある」
悟は5人にデューム壊滅に備えた作戦を授けた。




