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【コミカライズ開始!】追放されたダンジョン配信者、《マッピング》スキルで最強パーティーを目指します  作者: 瀬戸夏樹


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第93話 討論番組

 その日の仕事を終えた悟は、リビングのソファに座ってテレビ画面を操作していた。


 これから始まる番組『ダメぽTV』。


 そこに如月彗が出演するはずだった。


 番組が始まるのを待っていると、ガチャリと扉のノブが回る音がする。


「失礼しまーす」


 扉が開いて、入ってきたのは真莉だった。


「あれ? 真莉? 今日は帰るんじゃなかったの?」


「悟さんと一緒に情報収集しようと思って」


「えっ?」


「今日、如月さんが出る番組あるでしょ? 『ダメぽTV』」


 真莉はスマホを取り出して、番組情報を表示しながら言った。


「悟さん、これからこの番組を見て情報収集するんじゃないかと思って」


「うん。そうだけど。よく分かったね。あれ? 言ってたっけ?」


「悟さん、会議終わった後、もう一仕事しそうな顔してたから」


 真莉ははにかみながら言った。


「リビングで何か見るみたいだったから。ネットで調べたらちょうど如月さんが『ダメぽTV』に出演するって情報を見つけて。ひょっとして悟さん、これで情報取集するのかなーと思って」


「……なかなか鋭いな」


(テスト前、学校の先生の微妙な言い回しや表情から山を張るのが上手いタイプだな)


 悟はそんなことを思った。


「一緒に番組見ていいですか?」


「うん。いいよ」


「わーい」


 真莉はスリッパを脱いで膝を折り曲げ、悟のすぐ隣にちょこんと座る。


 ミニスカートから真莉の艶かしい膝と太ももがチラリと覗く。


「これって討論番組ですよね」


「うん。『ダメぽTV』は時事ニュースを扱った討論番組だよ。生放送だから臨場感がある上、専門家と芸能人が入り乱れて討論するから毎回カオスな展開になって面白いんだ」


「若い人に人気の有名人とかも結構出てますよねー。セマユキさんとか知ってますよー」


「ここで如月が〈スペルカード〉について語るみたいだから、それで今後のデュームの方針も分かるかもしれない。1時間くらいニュースの話とかしてるけど大丈夫?」


「全然大丈夫です。なんならテレビが終わった後も一緒にいたいなー。なーんて」


「あ、始まるみたいだよ」


 テレビ画面に『ダメぽTV』のロゴが表示されたかと思うと、切り替わってスタジオの様子が映される。


 真莉は悟の視線がテレビに集中した隙にさりげなく体を悟の方へと寄せる。




 画面に司会の男が映されて軽快に話し始める。


「さぁ始まりました『ダメぽTV』! 今日のテーマは『ダンジョン探索に〈スペルカード〉は必要か?』。高騰する〈スペルカード〉、果たして本当に必須なのか――討論してまいります。司会の平梅です。本日はゲストに大手配信者グループデュームのリーダー如月彗さん、ダンジョンカップ解説者の田辺さんをお呼びしております。よろしくお願いします。ではまず、セマユキさん。この件、いかがでしょうか?」


 セマユキに画面が切り替わる。


「いや、そもそもダンジョン配信者ってあんま儲からないんすよ。収益化できてるのは上位0.1%だけで。だから、〈スペルカード〉がどうこう言う前に、配信やめてバイトした方がいいと思うんですよね」


 コメント欄

 ・初手極論キター

 ・バイト推奨w

 ・ここから来るぞ怒涛の論点ずらしが


 司会の平梅は慌てて、せまゆきのトークを遮る。


「はい、ありがとうございます。では如月彗さん、このあたりいかがでしょうか?」


「ええと、我々デュームはですね、〈スペルカード〉を一切使わないことをポリシーにしています。〈スペルカード〉がなくてもダンジョンの深層に到達してる人はいるんですよ。例えばC・エクスプローラーの真莉とか」


 コメント欄

 ・いやシーエクは〈スペルカード〉研究ガチ勢やん

 ・如月、お前この前シーエクの手法ボロクソ言ってたろ


「しかも〈スペルカード〉を使う団体がいると他のグループに迷惑がかかっちゃうんですよね」


「ほう。そうなんですか」


「ええ。前回、ダンジョンに潜った時も〈スペルカード〉使ってるグループがいたんですけど、ウチにモンスターが集中しちゃって。大変でしたよ。その時の経験ではっきり分かりました。〈スペルカード〉は禁止にすべきです。でないと一緒に潜っている他のグループの迷惑になってしまうんで……」


 そうして彗が更に持論を展開しようとする素振りを見せると、セマユキが割って入ってくる。


「如月さん、デュームの下っ端隊員に無償で下働きさせてますよね。それってブラックじゃないっすか? ただでさえ、無賃労働なのに〈スペルカード〉も支給しないとか可哀想じゃないっすか?」


「……ですから、うちは高額な〈スペルカード〉を使わずとも戦えると……」


「いやいや、如月さん、デュームはこの前中野ダンジョンで全滅しかけたじゃないですか。あれって『戦える』って言うんですか? 僕の中では“壊滅”って言葉に分類されるんですけど」


「あれは一時的な壊滅で……」


「一時的な壊滅!? 一時的な壊滅ってなんすか? 普通の壊滅とどう違うんですか? デュームのホームページ真っ赤っかですよ。ただでさえブラックなのに、メンバーほとんど動けなくなって可哀想じゃないっすか」


「ばっ、ちがっ。だから……、あれは……、あれは悟と美波がぁー」


「ちょっ、落ち着いてください! 次、田辺さんお願いします!」


 いきり立つ彗を司会の平梅が必死に止めて、話を田辺に振る。


「私はこう思うんですよね。(フリップをパーンと出す)――マップスキルが悪い」


 スタジオがざわつく。


「この〈スペルカード〉有用論は、マップスキルが前提になってるんですよ。マップスキルを駆使すると自然にアイテム探索に偏る。それが『〈スペルカード〉が必要』という世論を作ってるんです。どうもマップスキルを駆使しているグループが事前に〈スペルカード〉を買い込んで高騰を狙っている節があるんですよね」


「いや、そもそもダンジョン配信やめれば〈スペルカード〉買う必要ないじゃないですか。バイトやればいいんすよバイト」


 割り込んでくるセマユキに田辺は苛立ちながら反論する。


「あのねぇ、ダンジョン配信者の大半は兼業なんです。正社員やりながら夜に潜る人だって多いんですよ」


「でもダンジョン配信者って限界ギリギリの生活してるって、ダンジョン庁のデータに出てますよ?」


「ダンジョン庁の調査では、探索者の多くが兼業です」


「その多くってどれくらいなんですか? 数字出てないと意味なくないですか?」


「え、それは……」


「それにダンジョン配信しても収益化できないなら、バイト掛け持ちした方がよくないっすか」


「いや、だからぁ」


 その後も討論は迷走を続けた。


 如月と田辺は〈スペルカード〉とマップスキルを規制する方向に話を持っていこうとするも、セマユキが揚げ足とりをして話の腰を折る展開が続いた。


 セマユキの茶化すような態度に、如月と田辺が怒号をあげて、その度に司会が割って入るもまとめられず、議論は収拾がつかなくなっていく。


 コメント欄

 ・なんやこの番組w

 ・誰も〈スペルカード〉の話してなくて草

 ・如月と田辺、セマユキで〈スペルカード〉語ってる時点で……

 ・悟か榛名呼べよ


 平梅が締めの声を張り上げた。


「はい! そこまで。えー、議論も白熱してきましたが、そろそろ時間も押していますのでこの辺にしたいと思います。今日も白熱した討論ありがとうございました! ……結論は、まぁ、〈スペルカード〉は高いけど必要かもしれないし、バイトも大事! ってことで! 皆様、ご視聴ありがとうございました。『ダメぽTV』をご覧の皆様、チャンネル登録とコメントの方よろしくお願いしまーす」


 コメント欄

 ・司会も投げてて草

 ・カオスすぎるw

 ・結論:バイトしろ

 ・ひでぇ番組だなw

 ・時間損したわ




 ピッ。


 悟はテレビを消した。


 悟と真莉は微妙な顔をしていた。


「悟さん。〈スペルカード〉の規制なんてできるんですか?」


「いや、無理だと思う」


(如月……。何しにこの番組出たんだよ)


「なんかごめんね。変なことに付き合わせちゃって」


「いえいえ。悟さんと一緒にテレビ見れて楽しかったです」


 2人はそう言って和やかにリビングを出たものの、特に話すこともなくなってしまったので、お互いの部屋へと帰っていくのであった。

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