表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ開始!】追放されたダンジョン配信者、《マッピング》スキルで最強パーティーを目指します  作者: 瀬戸夏樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/101

第92話 ホワイトな会議

 トモカは自宅で電話をかけていた。


 コール音が10回ほど鳴った後でようやく繋がって桐沼の軽い声が聞こえてくる。


「あっ、トモカちゃん? ごめんね。すぐ連絡かけられなくって」


「桐沼さん、あの配信はどういうこと? なんでこよみの配信にデュームの連中が出て揉めてんの?」


「あっ、いやあれはだね……」


「私がデュームに入る代わりにこよみのチャンネルを荒らすのをやめる。そういう約束じゃなかったの?」


「いや、あれは違うんだって。あれは美波を追っかけてたらたまたま……」


「とにかく、こよみとの抗争を続けるつもりなら、デュームには入れないよ。例の話は無かったことに」


「ちょっ、待ってトモカちゃん。今、デュームは女性配信者求めてるから入ったら色々とお得……」


 トモカは桐沼が喋り切る最後まで待たずプツッと電話を切る。


「はー。こよみのやつ、いったい何やってるんだか」


 トモカのPCにはこよみが(クマ)に抱えられながら、デュームの連中から逃れている様子が映っている。





 中野ダンジョンから帰ってきたこよみは、Dハウスに招待されていた。


 今日はここに泊まっていくといいと言われてのことである。


 家に電話して、一息ついたところだ。


 すでにC・エクスプローラーに入ることを心に決めている美波は、会議室で悟達と一緒にいる。


 こよみはとりあえずトモカとの仲を回復してから改めて返事したいと悟に言っておいた。


「それにしても……ふふっ」


 スマートフォンから確認できる再生数。


 デュームの騒動や成り行きで榛名、美波と一緒にコラボしたこともあるだろうがすでに20万再生を突破していた。


 チャンネル登録もどんどん増えている。


(これならトモカちゃんもまた一緒に配信してくれるかな?)


 そんなことを考えながら共用リビングに入ると、二足歩行ででっぷり太った猫耳の生物と鉢合う。


 腹にはポケットが付いている。


 オレンジと黒の縞模様から察するにトラだろうか?


 こよみはギョッとするも、そのモンスター、ポケットラは、意にも介さず冷蔵庫の方にノシノシ歩いていく。


 そして冷蔵庫の扉を開くとガサゴソと漁り出して、自分のポケットに食糧を詰めていき、最後に飲料の入ったペットボトルを手に持ってリビングに向かった。


 そしてそのままドスンとソファに腰掛けると、テレビのリモコンを操作して番組を流す。


 リラックスした様子で背もたれにかかりながら、飲み物をグビグビ飲んでいる。


 こよみが唖然としていると、ポケットラはようやくそこでこよみの存在に気づき、「ん? お前も飲む?」と言わんばかりにポケットから取り出したペットボトルを差し出してくる。


(えぇ)


 こよみが反応に困っていると、すぐ脇を子犬のような大きさのフェンリルが駆け抜けていき、ポケットラの膝に首を乗せてくつろぐ。


 ポケットラはポンポンと自分の隣を叩いてこよみに座るように促した。


 仕方なくこよみが座ると、フェンリルはゴロンと仰向けになってお腹を見せてくる。


 こよみがおへそ辺りを撫でると、「クゥーン」と気持ちよさそうに鳴き声を上げた。


 ポケットラは肉球のついた手で乱雑にスナック菓子の袋を開けると机に広げる。


 ボリボリと食べながら、チラリとこよみの方を向いて「ん? お前も食べていいよ?」とでも言いたげな目を向けてくる。


 こよみはスナック菓子をひとつまみ口に入れる。


(何、この家。変……)




 悟、榛名、真莉、天音、美波は会議室で、今回の中野ダンジョン攻略動画を見ていた。


 カボチャ頭の魔法を〈身代わりの護符〉で防ぐ場面になると、真莉と天音は「おおー」と感嘆の声を上げる。


「すごーい。完全にアイテム破壊防いでるじゃん」


「こんなアイテム、よく見つけましたね」


「見つけたばかりのアイテム使いこなすなんて。さっすが悟さん!」


「このアイテムがあれば企画の幅もグンと広がりますね」


「その代わり悪い知らせもある」


 悟はモニターを操作してネット通販の〈スペルカード〉ページを開く。


 一枚10万円を超えていた。


「ありゃー」


「メチャクチャ暴騰してますね」


「デュームが同じダンジョンで壊滅して、()しくも〈スペルカード〉の有効性が証明されてしまった。在庫はまだあるけど……」


「この分じゃ新規調達は難しくなりそうですねー」


「余計なことしてくれたなデュームの奴ら」


「ま、こんな時に備えてウチは〈スペルカード〉節約しながらダンジョン攻略する方法模索してきたんだ。それよりも〈身代わりの護符〉だ」


「今後は〈身代わりの護符〉の確保だな」


「これまでの〈スペルカード〉運用ノウハウを活用して、一気に〈身代わりの護符〉も調達しちゃいましょう」


「僕の方でもできるだけ〈身代わりの護符〉の情報を集めとくよ」


 美波は会議を聞きながら感動していた。


(すごーい。パワハラせずに会議できるなんて)


 デュームにいた頃は毎回必ず誰かが吊し上げられて、それを中心に会議が進んでいた。


 美波は人気配信者だから吊し上げから逃れていたが、見る度に嫌な気分になっていたのを覚えている。


「どうした美波?」


「凄いね。パワハラのない会議なんてあるんだ」


 榛名と真莉、天音はキョトンとする。


 悟はブラック企業にいたことがあるのでなんとなく事情を察した。


(デュームもなかなか闇が深いな。配信の様子から察しはついてたけど)


「会議なのに誰も詰められないなんて夢みたいだよ」


「えーっと、美波、君はもうシーエク加入希望ってことでいいの?」


「うん」


「じゃあ、企画達成次第、加入ってことで。ま、この勢いならすぐに100万再生いくだろ」


「シーエクへようこそ羽柴さん」


「美波ちゃーんよろしくねー」


 真莉と天音が美波の手を取る。


「二人ともよろしくー。コラボしよーね」


「ええ。もちろん」


「もちのろんだよ」


「あの子、こよみはどうすんの?」


 榛名が聞いた。


「魔法使いの子ですか?」


「結構、いい動きしてますよねー。それに可愛い」


 真莉が動画を回しながら言った。


「こよみは例の友達との連絡待ち。ま、すぐに結論は出ると思うよ」


(問題はデュームの方だな。如月がこのまま黙っているとは思えない。果たしてどう来るか)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ