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【コミカライズ開始!】追放されたダンジョン配信者、《マッピング》スキルで最強パーティーを目指します  作者: 瀬戸夏樹


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第85話 魔法使いの強み

 ウェアウルフが複数現れても二人の連携が崩れることはなかった。


 吹き抜けの部屋で突然、複数の方向から咆哮が鳴り響いたかと思うと、上階から三体のウェアウルフが飛び降りてきて榛名と美波の前に立ちはだかる。


(ウェアウルフ三体!)


(ちょうど真ん中の位置!)


 真ん中の位置に来た時は、遠ければ榛名が、近ければ美波が対応する取り決めだった。


 今回はかなり遠い。


「てことは私だな。行くぜ!」


 榛名が火弾を放つと、ウェアウルフの一体に当たり、悶絶させることに成功する。


 残りの2体はジグザグに動きながら、距離を詰めてくる。


(右からくるか?)


(それとも左? 正面?)


 二体のウェアウルフは、接近戦になるスレスレで左右に別れる。


「美波、一体そっち行ったぞ」


「分かってる。榛名はもう一匹頼むね」


 ウェアウルフはその素早さで翻弄しながら、距離を詰めてくるものの、二人は互いの守備範囲をカバーし合って守りを崩さない。


 そして痺れを切らして仕掛けてきたウェアウルフに対し、それを上回る速さでもって、一瞬で背後に回り仕留める。


 ウェアウルフは二人に傷一つ負わせることもできず全滅した。


 榛名と美波はハイタッチする。



 ・えっ、2人で3体止めた!? やばすぎ!!

 ・全員動きが速すぎて何が起こったのか分からん

 ・美波がここまで連携できるとはなw

 ・絶対裏で打ち合わせしてただろw

 ・即席でできる連携じゃないって……

 ・クマPの采配大当たりだな

 ・「2対3で完封」ってネット記事書いてもろて



 悟はダンジョンを進みながら、スマートフォンで2人の配信の様子を見ていた。


(この分だと二人の方は問題なさそうだな)


 悟はスマートフォンを一旦ポケットにしまって目の前のことに集中する。


 マップスキルで確認したところ、こちらももうすぐウェアウルフと遭遇しそうだった。


 こよみは隣で先ほどから緊張している。


 ウェアウルフを直に見るのは初めてだという。


「おっ、来たか」


 地の底から響いてくるような唸り声と共に、通路の暗がりの向こうから灰色の毛並みのウェアウルフが姿を現す。


「っ」


 こよみは焦って魔法を放ってしまう。


 魔力が十分に練られていないまま放たれた火魔法は、勢いが弱く、弾速もイマイチだった。


 ウェアウルフは軽く姿勢を低くしてかわし、瞬く間に迫ってくる。


「アイテム〈鬼火篝〉」


 悟は魔力がある限り永遠に尽きない青炎を宿すアイテム〈鬼火篝〉を取り出して、ウェアウルフに向ける。


 するとウェアウルフはあからさまに怯えて、距離を取る。


 回り込もうとするが、すぐに悟はウェアウルフの動きに合わせて位置を変え、篝火を再び向ける。


 こよみは悟の後ろに隠れる。


「わわ。すみません。悟さん」


「気にしないで。ゆっくりでいいから高威力になるよう魔力を練るんだ」


 こよみは悟のアドバイス通り、魔力を練ることに集中する。


 悟はこよみを庇いながら、巧みにウェアウルフの動きを誘導し、逃げ場のない隅に追い込む。


「こよみ、今だ!」


「はいっ」


 こよみは十分に魔力を練った火魔法を放った。


 眩いばかりの輝きに満ちた高濃度の魔炎は、泡のように膨らみながらウェアウルフに迫っていく。


 ウェアウルフは自分の体長よりも大きくなった魔炎に目を焼かれながら、飲み込まれていく。


 このように高火力の攻撃を放てるのがこよみのジョブ魔法使いの強みだった。


「よし。ナイスだよこよみ。今のはいい威力の魔法だった」


「すみません。魔法、無駄撃ちしちゃいました」


「ん。いいよ。このダンジョンではまずウェアウルフのスピードに慣れることからだ。少しずつ無駄撃ちを減らしていってスピードに目を慣らしていこう」


「はい……」


 こよみは悟の優しい指導にホッとする。


 ダンジョンに入るまでは不安だったが、実際に一緒に探索してみると悟は優秀なナビゲーターだった。


 ミスしてもあんまり怒らないし、指示やサポートも的確だった。


(これならなんとかなりそう)


 こよみにとって久しく感じられなかった安心感。


 安心して身を委ねられる感覚だった。


 やがてアイテムの置いてある祭壇の前にたどり着く。


「あ、〈風の護符〉だ」


「こよみ。トラップがある時は〈スペルカード〉だよ」


「あわわ。そうでした。アイテム〈スペルカード〉耐久付与」


 こよみはトラップを乗り越えると、影に潜んでいたゴブリン・メイジと魔法の撃ち合いをして、撃ち勝ち重点アイテムである〈魔石・大〉を手にする。


「よし。いいよ。その感じ」


「えへへ」


 悟はスマートフォンをチラリと見る。


 重点アイテムを手に入れたことでどうやら配信サイトのアルゴリズムから有利な判定を受けられたようだ。


 同時接続数が100人ほど増えている。


 こよみの希望によりコメント欄を閉鎖しているから、盛り上がりには欠けるが、この分なら今回のダンジョン探索中にこよみの希望する登録者数と再生数を稼いで、彼女をC・エクスプローラーに加入させられるかもしれない。


(ま、焦らずじっくりいくさ。時間は十分にあるんだ)


 再び二人の前にウェアウルフが現れる。


 今度はこよみは魔法をすぐに撃つのは控えて、壁を背にしながら駆け引きしていた。


 〈風の護符〉によって素早さの上がったこよみは、俊敏なウェアウルフとでも十分にスピードで渡り合っていた。


 あとはもう少し動きに目が慣れて、立ち回りを覚えれば次のステップに行けるかもしれない。




 悟達がダンジョンに入ってしばらくした頃、中野ダンジョンの前には如月とデュームの精鋭部隊が集結していた。


「お前ら。〈風の護符〉と〈魔石〉はきっちり用意してんだろうな?」


「はい。これでウェアウルフが出てきてもバッチリっす」


「よーし。美波の奴がこのダンジョンで配信してるのは間違いないな?」


「はい。今もガッツリライブ配信してますよ」


(美波のヤロウ。よりにもよってシーエクの榛名とコラボとは。舐めた真似をしやがって)


「お前ら。分かってんな。美波と榛名に圧倒的な格の違いを見せてダンジョンを攻略する。あの裏切り者と炎上煽りカス女に目にモノ見せてやるぞ」


「「「「「はい!」」」」」

8月もだいたい週1投稿になります。

よろしくお願いいたします。

皆様、暑さと台風に気をつけてお過ごしください。

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