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【コミカライズ開始!】追放されたダンジョン配信者、《マッピング》スキルで最強パーティーを目指します  作者: 瀬戸夏樹


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第84話 クマPの赤スパ

 美波はアイテムボックスに〈風の護符〉を入れた。


 するとそれだけで体が軽くなったように感じ、走り出せばどこまでも駆け抜けていけそうな気がしてくる。


(おおー。これが〈風の護符〉。凄い。体が軽い)


「よーし。素早さもアップしたし、このままガンガンいくよー」


 美波と榛名がダンジョンを進んでいくと、トラップのある部屋にきた。


 それも素早さデバフと魔力ドレインの二重効果のあるトラップだった。


(おっ。トラップだ。これも(クマ)Pの情報通り。アイテムがあるのも……)


 トラップの先には〈魔石〉と〈風の護符〉がある。


 そして美波の耳は物陰に潜んでいるモンスターの気配も捉えていた。


(これまではアイテム破壊のせいで削られてたけど……、今は〈スペルカード〉がある!)


「いけそうだな」


 隣で榛名が呟くのが聞こえてきた。


「えっ?」


「ここは私が行くよ」


「!?」


 榛名は音もなく上に飛ぶと、トラップの傍にある高さ5メートルはあろうかという障害物を軽々乗り越えて、向こう側に渡った。


 美波は榛名の人間離れした動きにポカーンと口を開けてしまう。


 向こう側でパンッという乾いた音とモンスターの消失音が聞こえてきた。


 すぐに榛名が何事もなかったかのように現れて、


 消失したゴブリンから手に入れた〈魔石〉をお手玉のように扱いながら姿を現す。


「〈スペルカード〉使わずにゲットしたぜ」



 ・すげー。何今の動き

 ・まったく音しなかったんだがw

 ・音もしなければ見えもしなかった

 ・カメラが追いきれていない

 ・パルクールでトラップを回避する女w

 ・美波がフリーズしてんの珍しすぎるw

 ・相変わらずバケモンみたいな動きだなw



「凄ーい。何、今の動きー。全然見えなかったよー」


 美波は慌ててカメラ目線になってリアクションした。


「〈風の護符〉ゲットー。おーい、美波早くこっちこいよ」


「うん。すぐ行くよー」


(凄いな。これがシーエクの榛名。上への加速はデュームでも敵う奴いないかも)


 美波は次元移動でトラップを回避して向こう側へ辿り着く。


「おっ、それが次元移動ってやつ?」


「うん。私のアサシンスキルだよ」


「すげーな。普通にトラップ潜り抜けられるじゃん」


「魔力は消耗しちゃうけどねー」


「ん? じゃあこの〈魔石〉使う?」


「だいじょぶ。さっき拾った〈魔石〉があるから。心配してくれてありがと」




 ♢




 二人はその後、ほとんど何事もなく進んだ。


 トラップやアイテム破壊に対しても〈スペルカード〉を使えば余裕で対応できた。


(すっごーい。サクサクダンジョン探索進んでいく。これが〈スペルカード〉の威力かぁ)


 美波は〈スペルカード〉の威力、榛名の戦闘力、そして悟の手配する能力に感動しながらダンジョンを進んでいった。


 やがて5階層を超えた頃にいよいよスピードタイプのモンスターが現れる。


 石造りの長い通路。


 風もないのに、どこからかヒュウ……と空気の唸るような音が耳をかすめる。


 その後、すぐに通路の奥の闇からは得体の知れない息遣いと金切り音が聞こえてくる。


 ギリ、ギリッ……ッ!


 黒板を爪で引っ掻くような嫌な音。


 その音が近づいてくると共に、次第にシルエットが露わになってきた。


 全身を濃い灰色の毛で覆い、身長は2メートルを優に超える。


 腕は地面に届くほど長く、爪は銀色に鈍く光る。


 耳は鋭く尖り、目は――燃えるような紅。


 中野ダンジョンのスピードタイプモンスター、ウェアウルフだった。


(きた、スピードタイプ)


(けど……)


 ウェアウルフが疾風のような速さで斬りかかってくる。


 二人は狼を超える俊敏さで攻撃をかわした。


(〈風の護符〉を装備した今の私達なら……)


(余裕でかわせるっ)


 二人はあっさりとウェアウルフの背後に回り込み、仕留めようとする。


 しかし、そこで予想外のことが起こった。


 榛名の射線に美波が入る。


「わっ。美波、邪魔だって」


「えっ!? あっ、ごめ……」


 結局、攻撃を入れることはできず、ウェアウルフに体勢を立て直す時間を与えてしまう。


 二人は気を取り直して、再び倒そうとするも……。


((来る! 右にかわして……))


 またもや動きがかぶってしまう。


「わわっ」


「ちょっ、ちょっとぉ」



 ・ん?

 ・どしたん?

 ・急にぎこちなくなったね



 その後も二人は効果的な動きができず、ウェアウルフ一匹を倒すのにやたら時間と魔力を使ってしまう。


(ふー。どうにか勝ったけど、美波にはもっと動きを合わせてもらわないと)


(榛名。今回は私のチャンネルなんだからこっちに合わせてくれないと)



 ・息合わないねー

 ・二人ともスピードタイプで役割被ってるからな

 ・もっとお互い離れた方がいいんちゃうか?



 二人の足並みの揃わなさはどんどんぎこちなくなっていった。


 特に複数のモンスターが現れた時、効果的に動けない。


(マズいな。このまま美波が合わせてくれないとウェアウルフ2体と遭遇したら……)


(榛名が合わせてくれないと。せっかく〈スペルカード〉があっても無駄に魔力消耗しちゃうよ)


 コメント欄にも微妙に嫌な空気が立ち込める中、スパチャが投稿される。



 ・クマP(¥10000)右の敵は榛名が、左の敵は美波が対応するんだ。利き手を意識して、互いに互いをカバー。被らないように。



「あっ、(クマ)!」


(クマ)P、赤スパだ」


(そっか。美波が左利きで……)


(榛名が右利きだから……)


 複数モンスターが現れる。


「私が右側をやる」


「オッケー。私は左側だね」


 二人はスムーズに左右の敵を分担して、お互いの左右をカバーし合いながら、モンスターを狩っていく。



 ・おっ

 ・動きよくなってきた?

 ・いいよ。いいよ




 そして、またウェアウルフが現れる。


 二人から見て左寄りだった。


(左寄り、それじゃあ右側の私が囮になって……)


(左側の私が攻撃!)


 榛名と美波は即座に左右に展開し、囮と主攻の役割をこなして、目にも止まらぬ速さでウェアウルフの視界を撹乱した。


 ウェアウルフは榛名の動き釣られているうちに、死角に入った美波によって首を落とされる。


 榛名と美波はハイタッチする。


「やったー」


「いぇーい」



 ・連携神すぎる!!!

 ・さっきまでギクシャクしてたのにwww

 ・赤スパチャで息合うのおもろすぎるwww

 ・クマPに感謝ァ!!!!!!!

 ・まさかのスパチャで連携www

 ・榛名の囮の動き→美波の死角からの斬撃、バチバチに決まってて鳥肌

 ・ウェアウルフさん瞬殺で草

 ・ギス→神プレイの流れ、最高すぎる!

 ・クマPの采配すげぇな……



 美波はコメント欄の盛り上がりに感激する。


(指示一つであっさり息が合った。悟……君ってば本当に凄いんだねー)

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