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【コミカライズ開始!】追放されたダンジョン配信者、《マッピング》スキルで最強パーティーを目指します  作者: 瀬戸夏樹


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第80話 お試し加入

 悟達は静林学園の中にあるカフェテリアに入った。


 カフェテリアには開放されている席もあったが、打ち合わせするために仕切りの設けられている席や完全に隔絶された個室もある。


 ダンジョン配信に力を入れてる学園なだけあって、学生達がダンジョン関係者らしき人達と打ち合わせしている姿がそこかしこで見られた。


 ただ、悟達ほどの大物は見当たらない。


 学生にしろ業者にしろ、悟達の姿を見るや「あっ」と声をあげて噂話を始める。


「あれって雪代悟と榛名?」


「羽柴と霧崎もいるぞ」


「どういうこと? あの2人ってシーエクの関係者なの?」


 悟は奥の個室に目を移す。


「個室に行こうか」


 悟は受付で個室を借りたい旨、告げる。


 幸い、空いている部屋があったので、すぐに衆目の視線から逃れることができた。




 ♢




「うおー、いいじゃん」


 部屋に入ると、榛名はキョロキョロ見回しながら興奮したように言った。


 確かにちょっとした会議室みたいだった。


 ノートパソコンやホワイトボード、プロジェクターなどもあって、学生向けの施設としては充実しすぎていた。


「注文はタッチパネルから受け付けております。何かご用件がある際はそちらの電話からどうぞ」


 店員はそう言って一礼すると、部屋を出ていく。


「いいなー。静林はこんな施設あって」


「桜間はこういうのないの?」


 美波が尋ねた。


「ないんだよ。意外と伝統校でさー。建て替えに慎重なんよ」


「へー。意外」


 4人は席に座り、飲み物で一服すると、話し始めた。


「んじゃ、改めて。C・エクスプローラーのプロデューサー雪代悟と言います。今日、ここに来たのは他でもない。君達2人をスカウトするためだ」


 悟は美波に名刺を渡しながら言った。


「みんな知っての通り、今季のダンジョンは厄介でね。既存の戦力では厳しくなることを見越して、新メンバーを募り、戦力を補強したい」


「デュームに睨まれて、みんなウチとコラボするの怖がっててさ」


 榛名がやれやれと言った感じで肩をすくめる。


「もし、うちに来てくれれば、バックアップすると共に今季のキーアイテム〈スペルカード〉の供給を約束するよ」


 悟が〈スペルカード〉と言うと、美波はピクッと反応する。


(やはり、相当〈スペルカード〉を集められなくて困ってるみたいだな)


「霧崎さん、〈スペルカード〉の動画は見た?」


「あ、はい。まだちょっとよく分かんないところはありますが……」


「オーケー。細かいことについてはダンジョンで潜りながら教えていくよ」


「羽柴さん、君はどう?」


「んー。〈スペルカード〉欲しいのは山々なんだけどさ。ただ、今、私デュームリスナーに睨まれてんだよね」


 美波が先ほどまでと打って変わって歯切れの悪い言い方をした。


「今、C・エクスプローラーに入ると余計炎上しちゃうんじゃないかと思うんだけど」


「それはある程度リスクを許容してもらうしかないね」


 悟がため息を吐きながら言った。


「ウチとしても可能な限りのケアとサポートは行うつもりだけど。僕らとしてもデュームの言い分を認めるわけにはいかないんだ。メンバーみんな〈スペルカード〉重視の方針を変えるつもりはないし、デュームのやり方に異議を唱えることで一致している。向こうが意見を変えない限り、僕らとしては矛をおさめるわけにはいかない」


「ええ、それは理解できます」


 すると榛名が妙にウキウキしながら乗り出してきた。


「なぁなぁ。デューム脱退の件、ゲンザイに垂れ込んだのってお前なの?」


「違うよ。私は〈スペルカード〉供給されないのが不満で抜けただけ」


「ネットでは噂だぜ。美波がゲンザイに垂れ込んだんじゃないかって」


「まさか。そんなことやって私に何の得があるんだよ。ただでさえ、デュームと縁を切りたいっていうのに」


(榛名。何、聞いてるんだよ)


 悟は呆れるものの、ふと思い直す。


(けど、この機会にデュームの内情について聞くっていうのもいいかも)


「美波。なぜデュームは頑なに〈スペルカード〉を使わないんだ?」


「さぁ。如月による権力集中のためなんじゃないの? あとは上下関係を厳しくして統率をはかりやすくするとか」


「なるほど」


(体制を維持するためには〈スペルカード〉よりも今の人海戦術の方が都合がいいってわけか。大所帯ならではの悩みって感じだな)


「逆に悟に聞きたいんだけどさ。C・エクスプローラーのメンバーって、〈スペルカード〉1日にどのくらい配給してもらえるの?」


「基本的に必要なだけ配給するよ。企画や潜るダンジョンによってマチマチだけど、より多く希望するならその分出す」


「その企画っていうのはどういう風に決めてるの?」


 美波はその後も積極的な体を装って様々なことを尋ねてきた。


 悟も悟で彼女に色々聞いて探りを入れてみたところ、要は〈スペルカード〉は欲しいけれど、グループの縛りには囚われたくないようだった。


(相当、デュームで嫌な思いしたんだな)


「じゃあ、こういうのでどうかな。お試し加入で一時的に入るってことで。一定期間内にお互い相性が合うかどうか見極めて、合わなければそれまで。特に不満がなければ本契約って方向で」


「でも、それだと〈スペルカード〉は……」


「もちろん、必要なだけ配給するよ」


 そう言うと、美波は目をキラキラ輝かせて悟のことを見つめてきた。


「?」


「悟……君ってば、柔らかいね」


「えっ? そ、そう?」


「感動したよ」


「う、うん」


(まさかこんなことで感動されるとは。デュームは今、相当縛りがキツイんだな)


「ぜひお試し加入させて」


「うん。こちらこそよろしく頼むよ」


 悟はこよみの方を振り返る。


「こよみ。君はどう? 君もお試し加入でいい?」


「私はその……再生数が欲しくて……」


「ふむ。じゃあ、お試し期間内に満足のいく再生数が稼げれば加入するって方向でいいかな?」


「はい」


「デュームに今以上に睨まれるかもしれないけれど、それは大丈夫?」


「はい。デュームに叩かれても再生数が伸ばせるって分かれば、トモカちゃんも……。いえ、なんでもありません。大丈夫です」


(ふむ。まだ何か心の中でモヤモヤしてるものがあるみたいだな)


「よし。それじゃあ具体的な日取りだけど……」


 とりあえず当面は加入のことは伏せておいて、コラボという体裁をとることで合意した。


 悟はこよみ、美波とコラボの日取りと大雑把な内容だけ確認して、その日は別れた。

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