表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ開始!】追放されたダンジョン配信者、《マッピング》スキルで最強パーティーを目指します  作者: 瀬戸夏樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/101

第73話 憂鬱の理由

 悟は静林学園の校門前まで来ていた。


(ここが静林学園か)


 ちょうど放課後になったようで校門からゾロゾロと生徒達が出てくる。


 少し待っていると、目当ての人物、霧崎こよみが一人で歩いてくるのが見えた。


「こんにちは。霧崎こよみさんだよね?」


 悟が声をかけると、こよみは気怠げな目でこちらを見てくる。


「いきなり声をかけてごめんね。僕はこういう者なんだけれど」


 悟が名刺を渡すとこよみは繁々とそれを眺める。


「ダンジョン配信の……プロデューサー」


「C・エクスプローラーっていうグループ知ってる? そこの新規メンバーを今、募集していて。ぜひ君のことを……」


「お断りします。では」


「ちょっ、ちょっと」


 悟は慌ててこよみを追いかける。


「話だけでも聞いてくれないかな」


「すみません。急いでいるので」


「〈スペルカード〉」


 こよみの足がピタッと止まる。


「配信見させてもらったよ。〈スペルカード〉の使い方、知りたくない?」


 こよみは振り返ってジッと悟の顔を見る。


(〈スペルカード〉。今季のダンジョン配信で鍵になると言われてるアイテム。ダンジョンで使ってみてもイマイチ何が凄いのか分からなかったけど。この人は使い方を知ってるの?)


「その様子だとやっぱり〈スペルカード〉が重要だっていうのは知ってるみたいだね」


 悟がそう言うと興味を示すものの、それも一瞬で再び警戒感を強める。


「あなたの力を借りるつもりはありません。だいたい私が過去に何したか知ってるんですか? 私が起こした事件のこと知ったら、どの道スカウトなんてできなくなると思いますよ」


「デュームとのこと?」


「!?」


「調べさせてもらったよ。君もデュームと過去に一悶着あったみたいだね」


「君も? それって……」


「僕達も今、彼らと対立してるんだ。だから君をスカウトってわけじゃないけど」


(デュームと対立? なんでこの人こんな平気そうなの?)


「それはそうと……」


 悟はふと居心地悪そうに周囲を見回す。


 こよみもようやく周囲から奇異の目を向けられていることに気付いた。


 静林学園の生徒達が遠巻きに見ながら、ヒソヒソと話しているのに気づく。


「何? あの人?」


「霧崎の知り合い?」


「なんかデュームって言ってなかった?」


「デュームってあのデュームのこと?」


 悟は照れ笑いを浮かべた。


「ここだと目立つから、どこか店にでも入らない?」




 学校から離れた場所にある喫茶店に入った悟とこよみは、飲み物を頼んでから話し始める。


「配信動画見させてもらったよ」


「……」


「コメント欄とダイレクトメール欄閉じてるんだね。よっぽど酷いコメントでも来たのかな?」


「デュームの人と最近、SNSで揉めて」


「それでコメント欄荒らされた?」


「はい。デュームの人に勧誘されたんだけど、そのやり方が強引だったから、SNSで非難したんだけど、それが炎上しちゃって」


「あー、あれか。ウチもやられたよ。結構、酷いよね」


「それで友達にも迷惑かけちゃったし。もう二度とそんなことがないようにしないとって思って」


「友達?」


「はい。ずっと一緒にダンジョン配信やってた友達がいたんですけど、私が炎上しちゃったせいでその子の再生数まで落ちちゃって。それでもう一緒に配信やってくれないって言われちゃって」


「ふむ。つまり君がコメント欄閉じているのに配信を続けているのは……」


「私が再生数取り戻せば、その友達と仲直りできるかなって……」


「なるほど。それなら僕の方で力になれると思うよ」


「えっ? 雪代さんが?」


「うん。これを見て」


「これは……ダンジョン庁のホームページですか?」


「そう。ここに重点アイテムリストってやつがあるだろ? 今季はこのアイテムを取得すれば、配信サイトのアルゴリズムで高評価を得られて、サイト内での扱いがよくなるんだ。だからアイテム破壊を防御できる〈スペルカード〉が有効になるわけだけど……」


「アルゴ……、アイテム破壊?」


「ああ。ごめんごめん。一気に言い過ぎたね。要は重点アイテムを取得すれば、再生数が伸びる。そのために〈スペルカード〉を使うのが有効ってことだよ。そうだね」


 悟は名刺にURLを書き込んでこよみに渡す。


「もし、今季ダンジョンの再生数稼ぎに興味があるなら、そのURLの動画を見てくれ。〈スペルカード〉の有効な使い方と重点アイテムの取得方法について解説されてるから」


「あの……でも……」


「その動画を見て、シーエクとコラボする気になったら、いつでも連絡して。ちなみにその動画内のクマは僕だから」


「あのっ。私、こんな情報教えてもらっても何も返すものが……」


「気にしないで。ダンジョン配信者同士、情報交換するのは基本だろ? それに動画を見て何も感じてもらえないならどの道それまでさ」


 悟は時計を見て席を立つ。


「今日はこのくらいで失礼するよ。とにかく今、僕らはコラボ相手がいなくて困ってるんだ。デュームは規模が最大手だし、味方は一人でも多く欲しい」


 悟は財布からお代を抜き取って、テーブルに置いた。


「それじゃまたね」


 こよみは店から出て行く悟を見届けた後、テーブルに残ったジュースをちびちび飲みながら、置いていかれた名刺を見つめて、物思いに耽った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ