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【コミカライズ開始!】追放されたダンジョン配信者、《マッピング》スキルで最強パーティーを目指します  作者: 瀬戸夏樹


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第70話 トラのポケット

「よしよし。フェンリルさんよく頑張りましたね」


 天音がそう言いながらフェンリルの頭を抱きしめて撫でると、フェンリルは従順に頭を預けながらクゥンと鳴き声をあげる。



 ・フェンリル可愛いー

 ・フェンリルさん絶好調やな

 ・こんちはー。初めてです

 ・初めて来ました。今期、テイマー難しいのに凄いですね



「あ、初めての方も来られてますね。ありがとうございます。では、せっかく初めての方も来られたことですし、自己紹介しておきましょうか」


 天音はカメラに向かって居住いを正す。


「この天音チャンネルは、モンスターさんと触れ合う和やかな配信を目指しております」



 ・モンスター(伝説級)と触れ合う和やかな配信

 ・サラッとおかしなことをw

 ・いまだにフェンリルテイムできてるの信じられん



「今回はモンスター、ポケットラをテイムする配信です。ポケットラは二足歩行で歩く虎で、お腹にアイテムを入れるポケットを持っています。今季のダンジョン配信においてはアイテムをたくさん保有できるのが有利だと言われているので、ポケットラさんをテイムすればダンジョン攻略がとても有利になると思われます。何よりもその毛並みの柔らかさは絶品と言われており、撫でた時の手触りはえもいえぬものだそうです」



 ・ポケット、猫科、二足歩行、うっ、頭が……

 ・名前は何エモンになるんやろなぁ

 ・おい、やめろw



「ポケットラは人間が近づくと、ポケットの中にしまっている移動型アイテムを使い、速攻で逃げてしまいます。そこで、ここは策を講じて罠を張ります」


 天音は〈魔石〉を地面に置いた。


「ポケットラには落ちているアイテムを拾って、自分のポケットに入れるという習性があります。このアイテムを拾わせて手が塞がっているうちに襲いかかり、先ほど通り抜けてきたデバフトラップに追い込んでテイムしてしまおうと思います」



 ・おー、頭いい

 ・頭脳派だね天音ちゃん

 ・容赦なくて草

 ・モンスターと触れ合う和やかな配信(策略と無慈悲な追い込みアリ)



 フェンリルはクンクンと地面に鼻を擦り付けて匂いを嗅ぐと、天音の耳元で何やら唸り声をあげる。


 天音はフェンリルの言うことに耳を傾ける。


「ふむふむ。なるほど分かりました。ポケットラはもうすぐこの場所に来るみたいです。待ち伏せしてトラップの場所まで追い詰めましょう。あ、来たみたいです」


 天音はフェンリルと一緒に茂みに隠れた。


 完全にフェンリルの体毛に包まれて、自身の匂いを消し去る。


 そうして待っていると、ノシノシと歩きながら二足歩行のトラ、ポケットラがやってくる。


 ポケットラはクンクンと鼻を効かせて狼の匂いがするのを感じ取った。


 血の匂いも。


 しかし、大して気に留めない。


 狼ごとき虎である自分の敵ではないのである。


 ポケットラが怖いのは魔力を使って自分を捕縛してくる人間だった。


 人間が現れれば、アイテムを使い速攻で逃げる。


 しかし、天音の匂いは嗅ぎ取れなかった。


 天音はダンジョンに入る前から念入りに自分の衣服や髪にフェンリルの匂いをなすりつけていた。


 やがてポケットラは地面に〈魔石〉が転がっているのを見つける。


 念のため四つ足になりクンクンと鼻を近づける。


 狼の匂いがする。


 狼が〈魔石〉を咥えてここまで来て何かの拍子に落としたのだろうか?


 特に不審な点はないので、ポケットラはアイテムを拾うことにした。


 二足で立って、肉球付きの手でアイテムを掴む。


(今だ! フェンリルさん)


 天音が鎖を通して思念を送ると、フェンリルは飛び出して巨大化した。


 ポケットラはギョッとして、フェンリルの方に向き直る。


 思ったよりデカい狼だった。


 急いで戦闘体制を整えなければ。


 ポケットラはアイテムを自分のポケットにしまいながら、後ろに飛び下がる。


 しかし、その拍子に素早さ低下のデバフトラップを踏んでしまう。


 しかし、まだまだ焦らない。


 フェンリルもこのトラップに誘き寄せれば、条件は互角。


 ポケットラがいよいよ焦ったのは、茂みから少女が出てきたのを見た時だった。


 顔に「しまった」という表情を浮かべる。


 ポケットから離脱アイテムを取り出そうとするも、素早さ低下のデバフと、アイテムをポケットに入れる動作、突然の出来事が立て続けに起こったことへの焦りで、ワンテンポ動作が遅れてしまう。


「やあっ」


 そのまま天音の手元から飛んできた鎖に絡め取られて、テイムされる。


 交渉の結果、ポケットラは天音に使役されることとなる。


「やりました。ポケットラ、テイム成功です」


 天音はポケットラに抱きつきながらカメラに笑顔を向ける。


 ポケットラは不満そうに膨れっ面を見せる。



 ・ポケットラ、ゲットー

 ・わーい

 ・トラさん、膨れとるやないかw



「はー。トラさん、いい匂いです」


 天音はポケットラに抱きつきながらクンクン匂いを嗅ぎ、ポケットラの滑らかな毛並みに頬擦りする。



 ・あ゛ー、天音ちゃん可愛いんじゃー

 ・癒される

 ・トラさん、裏山

 ・天音ちゃん匂いフェチやな

 ・トラ、そこ代われ

 ・トラさん、いつまで膨れとるんやw



 ポケットラは「あーあ、変なのに捕まっちゃったよ」とでも言いたげなヌボーっとした表情を続けていた。

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