第62話 青フクロウの能力
榛名は通路からひょこっと顔を覗かせて、次に進む部屋の中に目を走らせた。
やはり魔石が奥に置かれてあり、そこまでの道程に魔法陣のトラップが敷かれている。
「ここはいいの?」
榛名は振り返って悟に聞いた。
「ああ。〈スペルカード〉を使う必要はない」
悟はマップを見ながら言った。
「よっし行くか」
・ん? 〈スペルカード〉使わんのか?
・榛名、トラップ見えてるぞ
・もう在庫切れ?
しかし、榛名が近付いてもモンスターは現れず、榛名はあっさりと魔石を手に入れた。
・およ?
・モンスター出ない場合もあんのか
・あぶねー。アイテム無駄撃ちするところだったな。
・しかし、なんでモンスター出ないの分かったんだ?
「今のは悟さんがマップスキルで読んでたからだよん」
真莉が不思議そうにしているリスナーのために解説を入れる。
・なるほどー
・そっか。マップスキルで事前に敵がいないのが分かってたんやね
・〈スペルカード〉の作戦はマップスキルありきってことか
・こんな風にも使い道もあるんやな。マップスキル
・効率いいダンジョン攻略、イイね!
更に進んでいくと、また魔石の置いてある部屋にたどり着く。
(この部屋はっと……。!?)
悟がマップスキルで部屋の様子を見ていると、モンスターが潜んでいることに気付いた。
それも〈リムーブの杖〉を持つゴブリン・メイジだった。
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〈リムーブの杖〉
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室内のアイテム1つに〈リムーブ〉の魔法をか
けることができる。
そのアイテムは部屋から排除され、ダンジョン
のどこかに飛ばされる。
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(〈リムーブの杖〉。そうきたか)
悟達がアイテムに手を伸ばそうとした瞬間、〈リムーブ〉の魔法をかけてどこかに飛ばしてしまおうという算段に違いなかった。
アイテムを飛ばされてしまっては、耐久付与の〈スペルカード〉をかけても意味がない。
(まあ、予想はしてたさ。破壊するばっかりじゃないだろうってね)
悟はアイテムボックスの中身を確認する。
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〈スペルカード〉回収(単)
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室内にあるアイテム1つを回収して、使用者の
アイテムボックスに収納する。
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(回収の〈スペルカード〉を使うのもいいが、ここは……)
「天音」
「!?」
天音は悟に声をかけられて嬉しそうに振り返る。
「君のモンスター青フクロウを使おう」
「かしこまりました。召喚、青フクロウ」
天音が唱えると、鎖の先に青フクロウが現れる。
青フクロウはパタパタとアイテムの側まで飛んでいき、アイテムをその足で掴む。
それを見計らったかのようにゴブリン・メイジが〈リムーブ〉の魔法を放ってきた。
しかし、魔法はアイテムに当たる直前で〈青フクロウ〉に吸収される。
「!?」
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青フクロウ
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羽を広げれば、移動系の魔法を吸収することが
できる。
吸収した魔法は魔力か、アイテムに変換するこ
とができる。
変換せずに数分経つと権利を失う。
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ゴブリン・メイジは怒り狂ったように魔法を撃ち続けるが、どれだけ魔法を放っても羽を広げた青フクロウに吸収されてしまう。
ゴブリン・メイジの魔力が切れたところを見計らって、青フクロウは魔石を掴んだまま飛び立ち、一瞬で詰め寄ると、ゴブリンの額を嘴で突いて倒した。
ゴブリン・メイジは消滅して、その後に〈リムーブの杖〉を残す。
・出たー。天音ちゃんの青フクロウ
・タイミングバッチリだね天音ちゃん
・てか、今の〈リムーブ〉の魔法か?
・あー、こういうパターンもあるのね
青フクロウはパタパタと飛んで帰ってきて、天音の手の上に魔石をポトリと落とすと、彼女の肩に止まった。
「ナイス天音」
「青フクロウもよく頑張ったねっ」
「ふふっ。ありがとうございます」
「青フクロウ5回くらい魔法受けてたよな。何のアイテムにすんの?」
「重点アイテム? それとも〈スペルカード〉?」
「んー。では、今回は〈スペルカード〉にしましょうか。青フクロウさん、お願いします」
天音が頼むと、青フクロウはフーッと息を吐き出す。
すると吐き出した息は魔力を伴って形を作り、〈スペルカード〉となる。
天音はカードを受け取ると、カメラの方に向き直る。
「このように今回はアイテム破壊・除去のモンスターへの対応を悟さんにレクチャーしてもらいながら進んでいくことになります。ちょっと攻略ペースは遅くなりますが、ご了承くださいね」
・はーい
・ゆっくり攻略していこう
・何時間でも見てるよー




