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【コミカライズ開始!】追放されたダンジョン配信者、《マッピング》スキルで最強パーティーを目指します  作者: 瀬戸夏樹


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第52話 案件配信

「これ、誰のー?」


 榛名が1つのダンボール箱を掲げて聞く。


「あ、それ私の部屋の前に置いといてー」


 真莉がそれに応えて言った。


 榛名達は新居での荷解きを終えつつあった。


 といっても、今回は配信用の暫定的な荷解きだったが。


 この案件で住むことになる家をどのように運用していくかは、今後、みんなで相談しながら決めていくことだった。


 とりあえず、今日のところは撮影するところだけ生活しているように見えればいい。


 天音は珍しく鼻歌を口ずさみながら、準備していた。


 それもそのはず。


 嫌だった実家での叔父との暮らしから解放されるのだ。


 榛名と真莉は週1日の頻度で、撮影の時だけこの家に泊まる予定だったが、天音は逆に週1日だけ実家に戻る予定だった。


「楽しそうだね」


「あ、悟さん。そりゃそうですよ。これから新しい家に住めるんですから」


「お母さんも来てくれるんだっけ?」


「はい。週に3日ほどお手伝いさんと一緒にこっちに来てくれることになっています」


「例の叔父さんはきっと悔しい思いしているだろうね」


「めちゃくちゃ悔しそうでした」


 天音はルンルン気分を隠すこともなく言った。


「あはは。まあ、でもよかったよ。思ったよりすんなりいきそうで。お母さんの反対を受けてたら、流石にちょっとややこしかったからね」


「それもこれも悟さんのおかげです。本当にありがとうございます」


「役に立てたようでよかったよ。んじゃ、今日の配信も頼んだよ」


「はい!」


(よし。この案件配信、絶対成功させるぞ)


 天音はそう思いながら、悟に恩返しすることを心に誓った。


 C・エクスプローラーの活動が軌道に乗れば、自然と悟の名誉も回復していくはずだ。


 蓮也も活動休止になったことだし、悟の実際の貢献に世間の人々が気付くのも時間の問題だろう。




「コホン。では、C・エクスプローラーの配信を始めていきます」


 天音はドローンに向かって宣言した。


 ・待ってました

 ・ん? ここはダンジョンじゃないね

 ・どっかの家?


「今回はダンジョンではなく、案件でいただいた新居の配信をしていきます。これから私達シーエクの拠点として活用していく予定の物件です。週一回ほどみんなで集まって配信していく予定ですので、ぜひ見てくださいね。さて、このお家は寝泊まりできるだけでなく、ダンジョン配信の拠点としても有用だということですので、早速、室内をご紹介していきます」


 天音は広々としたリビングを画面に映した。


 キッチンと一体になっているリビングである。


「こちらはみんなで共有するリビングになります。大人数でパーティーできるくらいの広さになっています。そしてこのソファですが……」


 ソファの方を見ると、小さくなっているフェンリルがいた。


 フェンリルは仰向けになりながら、お腹を見せて眠っている。


「このようにフェンリルさんがぐっすり眠ることができるくらいフカフカのソファです。フェンリルさん、おやつの時間ですよー」


 天音がそう呼びかけると、フェンリルがパッと目を覚まして駆け寄ってくる。


 そして天音の手に持った餌に食い付く。


 ・フェンリルさん、カワヨ

 ・テイムしたモンスターも飼えるのか

 ・フェンリルさんも居心地よさそうだね


「では、続いてこちら錬金術の部屋になります。素材やアイテムをたくさんストックすることができて、錬金術に最適な環境です。隣にはシャワールームも付いています。おや? 誰かシャワーを浴びているようですね。中に入ってみましょうか」


 ・!?

 ・使用中のシャワー室に潜入?

 ・錬金術師ということは、ま、まさか……


「もしもーし」


「はーい。入ってまーす」


 天音が声をかけると真莉が返事を返してくる。


「真莉。中に入ってもいいですか?」


「どうぞー」


 シャワー室の扉が開くと気持ちよさそうにシャワーを浴びている真莉の顔がアップにされ、徐々にカメラが首から下へとおりていき、水着に包まれた真莉の体を映す。


 ・ズコー

 ・なんだよー。水着かよ

 ・まあ、そりゃそうだよなw

 ・いやぁ。これはこれでいい

 ・目の保養になります


「このように錬金術で疲れた体もシャワールームですぐにリフレッシュすることができます。錬金術師でこの部屋を借りたいという方は応募フォームから申し込んでくださいね」


「コラボ依頼待ってるよー」


 バスローブを着た真莉が、笑顔でカメラに向かって手を振る。


 ・普通にこの部屋使いたい

 ・シャワールームも綺麗だねー

 ・別の目的で利用したがる奴いそう

 ・その水、言い値で買おう


 錬金術部屋を出た天音は、次いで個室の並ぶ2階の廊下に向かった。


「こちらはそれぞれの個室になります。みんなで一緒に住むとはいうものの、シェアしているのは1階の各種施設だけで、それぞれ鍵付きの個室が用意されています」


 天音はドローンに廊下の端まで映させた。


 10室ほどの扉が付いている。


「では、ちょうど榛名が部屋にいると思うので、お邪魔してみましょう」


 天音は備え付けられたインターフォンを押した。


 すると、受話器が取り上げられる音と共に榛名の声が聞こえてくる。


「ふあーい。どうしたの?」


「榛名。例の案件配信です。入ってもいいですか?」


「うぃー。どうぞ」


 気怠げな声が返ってくる。


 天音が入ると、広々とした部屋が映された。


 テレビや冷蔵庫、テーブル、ソファなど一通り家具が揃えられており、この部屋に篭っても十分生活していけそうだった。


 階段も付いており、3階もある。


「このように基本的になんでも揃ってるので、この部屋に篭っているだけでも生活していけます。榛名は3階かな? 行ってみましょう」


 天音が階段を登ってその先にある扉を潜ると、布団の中で丸まっている榛名がいた。


 フェンリルが布団を剥ぎ取るとパジャマ姿で髪もボサボサ、いかにもそれまで寝ていたように見える榛名が現れた。


「榛名。カメラ回ってますよ」


「うーん。まだ眠いよぉ」


「ダメですね。完全に寝起きモードです」


 ・榛名w

 ・榛名、寝ぼけてるやん

 ・眠そうな榛名は新鮮だな

 ・榛名ちゃん、髪ボサボサやで

 ・パジャマ榛名、可愛い


 天音はしばらく寝惚けているフリをしている榛名とじゃれあって、リスナーに見せた後、榛名の個室を後にした。


「では、本日最後にシーエクの事務所の方をのぞいてみましょう。こちらになります。あ、誰か働いていますね」


 天音がこっそり事務所に入ると、パソコンの前でカタカタしているクマの着ぐるみがいた。


 ドローンによって撮影されていることに気付くとギョッとして振り向く。


 ・クマw

 ・こんなところでなにやっとるんや、クマw

 ・書類溜めすぎやろw

 ・事務処理苦手か?w


 クマはアワアワしながらパソコン画面を隠したり、書類を隠したりする。


「あら、(クマ)さん今、お忙しいですか?」


「も、もうちょっと待って」


「あらー。残念です。では、事務所の配信はまた次回以降ということにしましょう。はい。というわけで、これで1回目のお(うち)配信を終わります。こんな感じで毎週、シーエクのみんなの暮らしぶりを配信していきます。今後はゲストを呼ぶことも予定しているので、この配信に出たいという方いらっしゃいましたら、ぜひ応募フォームから申し込んでくださいねー。では」


 天音は抱っこしたフェンリルと一緒に手を振って配信を終えた。


「シーエクは現在、D・ハウスの案件チャレンジ中です。D・ハウスの物件は概要欄にあるURLから閲覧できるので、ぜひ見に行ってくださいねー」




 蓮也は薄暗い自室で歯軋りしながら、C・エクスプローラーの配信を見ていた。


「くっそー。楽しそうに配信しやがって。こっちはお前らのせいで活動休止してるっていうのに」


 蓮也はイライラしながらエゴサーチを行う。


 蓮也の釈明配信は依然としてネタにされていた。


 活動休止期間は定まっていないが、まだしばらくの間は復帰できないだろう。


 次いでDライブ・ユニットのチャンネルを開いてみた。


 Dライブ・ユニットのチャンネルは、蓮也が欠けたために著しくPVを落とし盛り上がりに欠けている……ということもなく割と和気藹々と配信していた。


(くっ。こいつら。なに俺がいないところで楽しそうにやってんだよ)


 このままじゃ、悟だけでなく、蓮也もいらない子扱いされてしまう。


(ふざけんなよ。誰がこのグループを育てたと思ってんだよ。俺のいないディーライなんてディーライじゃねぇよ)


 蓮也は再び掲示板のウィンドウを前に出す。


(だいたい榛名アンチの奴らは何やってんだ。こんだけ有名になってたら、もっと活発になっても……ん?)


 蓮也はシーエクアンチスレに投稿された一部の書き込みにスクロールの手を止めた。


 ・このクマが某大手グループをクビになったっていう噂は本当なのかな?

 ・ガチやで。こいつは普通に契約違反で追い出された奴

 ・クマと榛名はやっぱデキてんのかな?

 ・榛名はクマのセフレ


(待てよ。悟が榛名と、いや3人全員とデキてるってことにすれば、普通に炎上するんじゃないのか?)


 むしろ、なぜ一番最初にこの手を思い付かなかったのだろう。


 蓮也は我ながら不思議に思った。


 Dライブ・ユニットの裏切り者がグループをプロデュースして、女性配信者を食っている。


 ネットユーザーや週刊誌が食い付きそうな格好のネタじゃないか。


 蓮也はそこまで考えると弾かれたようにマウスとキーボードを操作し始めた。


 各種ネット掲示板やSNSにおいて工作活動を開始する。

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― 新着の感想 ―
[一言] デマ流したのあっさりバレて更に炎上しそうな予感。w
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