第４９話 トレンド１位
【Ｃ・エクスプローラー総合スレ（ダンジョンカップ後夜祭）】
・みんなダンジョン・カップおつかれー
・おつかれー
・熱かったな
・思った以上に圧勝でワロタw
・表彰式の画像ペター（３人とクマが表彰台の上でカメラに向かってポーズを取っている）
・可愛い
・こんなグループあったんだ
・いや、ノーマークだったわ
・グループとして活動したのは今回が初めてだからね
・榛名って娘、可愛いね
・この中だと真莉一択やろ
・いやいや、天音ちゃんも
・３人とも可愛い
・Ｃ・エクスプローラーのＣって何のＣ？
・chloeクロエ、新芽とか新緑とかって意味。
・coolとか、cuteという説も
・いろんな見方ができるね
・チャンネル登録したわ
・今回の大会でまた伸びてしまうな
【探索ガチ勢がシーエクについて語るスレ】
・なんで今まで無名やったんやコイツら
・無名ではない。ただ、可愛い系のジャンルに括られてた節はある
・この榛名ってやつの動き、人間離れしすぎだろ
・速すぎる。最新のドローンカメラが追い切れてないぞ
・よくコラと間違われる
・先にネタ動画の方見たから、てっきりコラ動画かと思ってた
・同じく。ネタ動画だと思ってたから流してたorz
・同じ理由で知らなかった奴、多そう
・真莉も万能すぎるだろ
・攻撃、支援、回復、全部できる
・バランスよすぎる
・天音のモンスターテイム能力やばすぎんか
・フェンリルと青フクロウどっちも操れるの凄すぎる
・というか、どうやってテイムしたんや。どっちも遭遇するのすら難しい激レアやろ
・わかってねーな。お前ら。本当に凄いのはクマな
・それな。クマの采配とマッピングスキル過小評価されてんの意味わからんわ
・派手な戦闘するわけじゃないからな。キッズにはこの価値がわからん
「ふー」
自宅でネットサーフィンを終えた悟は、背伸びして一息ついた。
「悟さん。何してるんですか？」
明るく甘い声がしたかと思うと、誰かが悟の肩に手を置いた。
「その声は……真莉。来てたのか」
「えへへ。鍵開いてたので入っちゃいました」
「悟ー」
元気な声と共にドタドタした足音が聞こえてきた。
次いでトントンと規則正しい足音も聞こえてくる。
榛名と天音も来るなと思ったら、案の定、榛名が部屋に飛び込んできて、次いで天音がひょこっと顔だけ出して控え目に部屋を覗き込んでくる。
「引越し手伝いに来たぞ」
「お邪魔します。悟さん」
今日はダンジョン・カップの賞品の１つ、Ｄ・ハウスの案件開始日だった。
住居には４人分以上の鍵付き個室があるため全員住める。
悟も本居をそこに移す予定だった。
「ん？ ネットやってたの？」
榛名が横から割り込んでパソコン画面を見ようとする。
「ああ。シーエクのエゴサしてた。評判は上々だよ。ホラ」
悟が適当にシーエクについて語っている呟きや掲示板の投稿をピックアップしてみせる。
榛名の垂れた長い黒髪の隙間からＰＣ画面を見て、マウスを操作する。
「おっ、私のことも書いてるじゃーん。どれどれ？」
榛名は悟の手に自分の手を重ねてガリガリとマウスを操作する。
天音も隣に来て、デスクにもたれかかり、頬杖をついてＰＣ画面を眺める。
こうして悟は３人の美少女に囲まれる形になった。
３人とも本当はトレンドも自分のエゴサも一通り終えて知っていたが、そんな素振りは見せずにＰＣ画面を眺める。
３人とも悟と一緒にもう一度それを見たかったのだ。
「動画の切り抜き拡散止まりませんねー」
天音がおっとりした声で言った。
「全国テレビで中継されたからな」
「ああ。普段ダンジョン配信を見てない層にもリーチしてる証拠だ」
「それだけに残念ですよね」
真莉が不満気に溢した。
「せっかく大会で優勝したのに、トレンド１位は取れなくて」
「ああ、それね」
悟は別のウィンドウを開いた。
Ｄライブ・ユニットの炎上関連の記事を検索したウィンドウだ。
適当に検索しただけで以下のようなタイトルがヒットする。
【蓮也、リスナーを煽り散らかし炎上wwwwww】
【蓮也さん伝説になる】
【蓮也さんリスナーにレッテルを貼る→お前らブチギレwwwwww】
【蓮也の言ってることって正論だよな？】
【漢蓮也、差別と戦うwwwwww】
先日からずっとこの調子だった。
おかげでせっかくのＣ・エクスプローラー、ブッチギリ優勝の快挙も、炎上騒動にかき消されてトレンド１位に上がれずにいた。
【蓮也、リスナーを煽り散らかし炎上wwwwww】
・蓮也さん……？（セリフ付き画像ペター）
・どうしたんすか？ いきなり。
・蓮也さん、こういうこと言う人だったんだ。なんかショック
・本性現したね
・まーた炎上してんのかこの箱は
・今度は何やったんや
・ダンジョン・カップ中、リスナーに暴言吐いて炎上した
・それだけ？ 別にそんくらいならここまで炎上することなくない？
・動画貼っとくで。ペター
・すまん。これは荒れるわ
・蓮也さんは先に差別発言を受けたんや。リトガーにも先に攻撃されて足を引っ張られたんやで。
・まあ、いいじゃんそういうの
・こいつに限らず最近、配信者は調子乗りすぎや
・蓮也はなんて言っとるんや？
・沈黙を守っとるな
・流石に今回ばかりは謝った方がええんちゃうか？ ディーライファンも批判的やで
・もう遅いわ。チャンネル登録外した
・今頃、事務所にクレームの電話殺到してるんやろなぁ。電話全然繋がらんわ
・スポンサーにも飛び火しそうやね
・全国区のテレビでやらかしやからな。イメージ悪すぎるわ
【蓮也の言ってることって正論だよな？】
・差別はあかんやろ
・お前じゃいっ
・オメーが言うな！
・まさか掲示板でやるような煽りを配信でやるとはなぁ
・撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ！
・漢蓮也、差別と戦うwww
・なお、差別コメントは別になかった模様
・そんなもん削除されてるに決まってるだろ
・検証動画見たけど特に見当たらんかったで
・そもそもコイツの何を差別すんねん。特にマイノリティ要素とかないやろ
【蓮也さん伝説になる】
・伝説……の始まりですね（蓮也トレンド１位の画像と田辺のセリフ付き画像）
・私は最初からこうなると思っていました。
・草
・すげえ。田辺の言ってたディーライが優勝するってそういう意味だったんだ
・トレンド１位はワロタwww
・これもう田辺は予言者やろ
・漢蓮也、体を張って田辺の解説を守る！
・蓮也さん……（号泣）
・田辺「やれ」蓮也「はい」
・リトガー「解せぬ……」
・優勝はシーエクです！
・ちょっ、やめてくださいよ。まるで私が何度も外したみたいじゃないですか
・外しとるやろがい！
・なぜ解説者なのに予想してしまうのか
「くっそおお。どんだけ工作しても、炎上止まらねぇ」
蓮也は自宅でネット工作作業に勤しんでいた。
しかし、どれだけ動画を削除しても次々に転載されるし、どれだけ掲示板で工作してもアンチスレが次々と立ち続けて、対抗スレを埋めてしまうのであった。
「これじゃまるで俺がリスナーに暴言吐いたみたいじゃねーか。姑息な印象操作しやがって、ダンＪ民どもがぁ。先に差別されたのは俺だっつってんだろ」
蓮也は飲み終えて空になったエナドリを机に叩きつけた。
「まとめサイトの奴らは何やってんだ。さっさとスレ立てして世論誘導しろや」
そうして蓮也がパソコンをひたすらカチャカチャしていると、スマートフォンに着信が入った。
アブ・プロダクション社長からの電話だった。
