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【コミカライズ開始!】追放されたダンジョン配信者、《マッピング》スキルで最強パーティーを目指します  作者: 瀬戸夏樹


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110/111

第110話 青空

 榛名と美波は亜空間移動で駆け込んだ部屋に潜みながら息を殺していた。


 カボチャ頭の悪魔(デストラ・ランタン)が放つオレンジ色の灯りが遠ざかるまでひたすら沈黙して待つ。


「……行ったか?」


「うん。大丈夫」


 榛名と美波はその場にどさりと腰を下ろす。


「ふー。どうにか逃げ切ったね」


「くっそ。なんだよ。あのスライム。品川ダンジョンでロブ・スライムが出るなんて情報あったっけ?」


「いや、なかった。何らかのイレギュラーで紛れ込んだかもしくは……」


「?」


「いや、何でもない。悟さんからの指示は?」


「離脱しろだって」


 榛名はドローンを操作してルート入りのメールを美波に見せる。


「仕方ないね。〈ハガネ風車〉と〈身代わりの護符〉なしでこれ以上探索するのは危ないし」


「ちぇ。優勝できると思ったのになぁ」


 榛名と美波はルートに沿って移動し、たどり着いた転移魔法陣からダンジョンを離脱した。




 ♦︎




 灯華(ともか)は桐沼に詰め寄っていた。


「白状してもらうよ。今大会での不正だけじゃない。これまで裏でやってきた数々の悪事についても洗いざらい……」


「いや、違うんだ。これには深いわけが……」


「誰だって事情はあるさ。その是非を判断するのは私でもなければあなたでもない。私はただあなたのやったことを世間に公表するだけ。でも、その前にできれば自分から罪を認めて欲しいな。桐沼さん、あなたにも良心くらいはあるだろ」


「チクショー」


 桐沼は魔法陣に手を置いて魔力を注ぎこんだ。


「!? 何をっ……」


 ロブ・スライムが召喚される。


 ロブ・スライムはそのゼリー体を伸ばして、灯華の手足の自由をあっという間に奪ってしまう。


 そして灯華の口元を塞ぐ。


(うっ。息ができない)


 スライムの圧迫感に負けて、スマートフォンも手放してしまう。


 スマートフォンはロブ・スライムの体内に取り込まれる。


(桐沼の悪事の証拠が……)


 灯華のスマートフォンはどんどんロブ・スライムに吸収されて、ゼリー体の奥へと沈んでいく。


 灯華の息も限界が近づいていた。


(誰か助けて……。悟さん……)


 灯華はスライムの海に溺れながらもがくが、何も掴まるものはない。


 やがて意識が薄れていく。


(助けに来てくれるわけないか。ドジ踏んじゃったな。こよみに冷たくした罰かな。ごめんね。こよみ)




 ♦︎




(う。ここは?)


 青い空が見える。


 天国だろうか?


 けれどもその割には体が重い。


「あ、目を覚ましましたか?」


「灯華ちゃん。大丈夫?」


 ヘルメットを被った救急隊員らしき人とこよみが心配そうに顔を覗き込んでくる。


 灯華は自分が担架に乗せられていることに気づいた。


 どうやら死んでいないようだ。


「こよみ。アンタ大会は?」


「途中で棄権したよ。悟さんが灯華ちゃんが危ないって気づいたから。ダンジョンから離脱して」


「桐沼は?」


「あそこでのびてるよ」


 灯華が首だけ動かして見ると、桐沼が縄に縛られた状態でのびているのが見えた。


 近くには桐沼の召喚アイテムを押収している悟がいる。


 どうやら桐沼は悟にやられたようだ。


「悟さんが灯華のスマホの位置情報を(もと)に桐沼のいる部屋に駆けつけたの」


「そっか。悟さんには位置情報渡してたもんね」


「びっくりしたよ。ダンジョンを攻略してたらいきなり悟さんが『ロブ・スライムが消えた!?』『蒼井さんが危ない』って言って、攻略を切り上げるから」


(悟さん、来てくれたのか)


 灯華は一応、悟には部屋に踏み込んで桐沼を取り押さえる旨、連絡していた。


 もっとも返事を待たずに踏み込んでしまったが。


「実際、死ぬかと思ったよ」


 灯華は力なく笑った。


「無茶しちゃダメだよ。なんでこんなことしたの? まさか悟さんが言ったの? こんな危険なことやれって」


「悟さんは悪くないよ。桐沼のことは見張るだけで、危険なことはしないようにって言われてた。事を運ぶ時は周りの大人を頼るように。どうしても緊急の時にはまず一言相談してくれって。でも我慢できなくって。ついつい踏み込んじゃった。まさか殺しにかかってくるとは思わなかったから。それにこれ以上こよみを傷つけられるのは許せなかったから」


 灯華はポロポロと涙をこぼす。


「もう助からないって思った。それでもしょうがないって。でも、助かっちゃった」


「灯華ちゃん……」


「生きててよかった。こよみにまた会えて。もう会えないと思ったから。ずっと謝りたくって」

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