第109話 暴かれた悪事
ロブ・スライムは榛名の〈ハガネ風車〉を手元に引き寄せると、自分のゼリー体の中に入れて誰にも触れないようにする。
「あっ、〈ハガネ風車〉が……」
「こんのぉ」
榛名は怒りに任せて炎弾を乱射するが、ロブ・スライムはスッと身長を低く変形してかわす。
(この動き。誰かが操っている? さっきの召喚魔法陣といいやっぱり誰かの仕業なのか?)
美波にはとても自然発生したモンスターの動きとは思えなかった。
明らかに人間の意思が宿っている。
(マズいな。大会参加者を狙ったものだとしたら……)
「こんのやろー。いきなり現れて、何私のアイテムを……。うっ、美波?」
美波が突っ込もうとする榛名の肩を掴んで止める。
「榛名。熱くなっちゃダメだ。カボチャ頭が来てる」
「うっ」
「一旦、離脱するよ」
美波は亜空間移動でその場から離脱した。
間一髪でカボチャ頭の悪魔からのアイテム破壊を免れる。
♦︎
会場では、大型スクリーンに如月達が敗走する姿が映されていた。
集結したデュームファンと運営委員は、冷え冷えで映像を見守っていた。
静けさに包まれた会場には、リポーターと解説の音声だけが聞こえていた。
「さぁー、田辺さんの予想に反してカボチャ頭の悪魔が大量発生しています」
「ふーん。そうですか(スマホいじいじ)」
「田辺さん? 不貞腐れてるんですか?」
「いえ。別に? ただ私はこうやって皆さんのコメントをチェックしているだけで」
「おーっと、ここでシーエクにアクシデントです」
「何だと?」
田辺がスマホから目を離して、スクリーンを振り返った。
「露骨に嬉しそうな顔しないでください」
「シーエクに何があったんだ? 早くカメラ切り替えて」
スクリーンには榛名達がロブ・スライムに苦戦した上で、離脱する様子が映されていた。
田辺とリポーターは首を傾げる。
「これは……ロブ・スライム!?」
「どういうことでしょう田辺さん。なぜ品川ダンジョンにロブ・スライムが?」
「これは……マッピングスキルのせいですね」
・ファッ!?
・いや、なんでやねんw
・おかしいやろ……
・そういうのやめなよ
・悟「……解せぬ」
・これは流石にワロタw
・おい田辺、お前もう船降りろ
♦︎
控え室では桐沼がスマートフォンで榛名達の様子を見ながら、ほくそ笑んでいた。
「へへへ。とりあえず榛名と美波は潰せたな。次は……」
「そこまでだよ。桐沼さん」
「!?」
桐沼が振り返ると、そこにはスマートフォンを構えたトモカがいた。
「やっぱり、あんただったんだね。こよみのチャンネルを炎上させたの」
「お前はトモカ!? なんでここに?」
「悟さんから依頼を受けてたんだ。こっそりあんたの行動を見張ってるようにってね」
(バカな。鍵はかけてたはず)
桐沼は思わず扉のある方向に目をやる。
「運営委員会の人に言えばあっさり開けてもらえたよ。桐沼さんに伝えたいことがあるって言ったらね。まあ、協力してもらえなくても、どのみちこじ開けてたけど」
「いや、違うんだよ。これはダンジョン内に不審な召喚魔法陣が映ってるっていうタレコミが来て……。それでこの部屋を調べてみたらこの召喚魔法陣が……」
「無駄だよ。あんたの悪事は全部撮影させてもらった」
「ぐっ」
「白状してもらうよ。今大会での不正だけじゃない。これまで裏でやってきた数々の悪事についても洗いざらいね」




