第108話 ロブ・スライム
「ちっ。言わんこっちゃねぇ」
大会の運営委員を担当していた桐沼は、ダンジョン内の様子を見ながら舌打ちした。
桐沼のスマホには中間地点に到達するまでデュームのメンバーが半分以下になっている様子が映されていた。
そして更に彗が運悪く後半戦の初っ端からカボチャ頭に遭遇してしまっている。
(だから言ったんだよ。まともにやり合ってもいいことなんて一つもねぇってさ。やっぱ俺が汚れ仕事やるしかねぇか)
桐沼は事前に準備していた罠を作動させるべくさりげなく運営委員から離れる。
個室に入るといそいそと召喚魔法陣を用意し、手元の袋からスライムを取り出す。
♦︎
カボチャ頭の悪魔が杖の先を光らせる。
「う、うわあぁぁ」
彗は魔装銃を乱射するが、カボチャ頭の悪魔が魔法を発動するのとほぼ同時だった。
彗の弾丸はカボチャ頭の悪魔の頭部を掠めただけで、致命傷には至らなかった。
逆にアイテム破壊の魔法は彗達の装備、アイテムなどを悉く破壊する。
デュームの第一チーム、如月隊はすべての武装を解除された状態でその場から逃げ出した。
追いかけてくるカボチャ頭の悪魔の炎魔法によって一人、また一人と狩られながらどうにか装備とアイテムを調達する絶望的なダンジョン探索が始まる。
その間、彗はというと醜態を晒し続けた。
「あぁぁぁ。あっ、あぁっ」
奇声を発しながら顔を歪ませ、目や鼻、口、肌などあらゆる場所から体液を発散させながら、ダンジョン内を逃げ回る。
その一方で、仲間を切り捨てることには余念がなく、モンスターに捕まりそうになったら誰か一人の足を引っかけて置き去りにし、その隙に逃げるということを繰り返していた。
それは長年かけて身に付けた習性のようなものだった。
今まではカメラの外で行われていたことや、上手く編集で誤魔化したり、メンバーのフォローによって有耶無耶にされたりしていたものが可視化された瞬間であった。
これには長い間支持してきた熱心なリスナー達も呆れるほかなかった。
・彗さん、何やってんの
・これはないわ
・さっき豪語してたのはなんなの……
・顔から何か出てますよ
・やめてくれ、もう見てられん
・消せ
・味方囮に使うのやめなよ
・これはひどい
・信じてたのに……
・こんな奴だったとは
・ごめん、今日は流石に擁護できんわ
♦︎
榛名と美波は後半戦も順調に進んでいた。
「榛名、カボチャ来てるよ」
「へっ。凝りねぇ奴らだなっ」
榛名は〈身代わりの護符〉が付いた〈ハガネ風車〉をぶん投げてカボチャ頭の悪魔を一刀両断する。
「おおー。ナイス榛名」
「どうよ。私のカボチャ割りは」
「よっ。神配信者」
「あ、悟からだ」
榛名は端末にメールが来ているのに気づいて、美波と一緒に見る。
「何々? 今、一番進んでんの私達だってー」
「デュームの連中はカボチャ頭に苦戦してるだろうな」
「逆に後半の方が進みやすくなったね。カボチャ頭が多くなって」
「ああ。この調子でガンガン行くぜ。ん?」
榛名達が進もうとするとまたカボチャ頭の悪魔が上から降りてくる。
「またかよ。もうお前のドロップアイテムはいらないぜっ」
「ん? なんだろ。あれ」
美波は少し先に召喚魔法陣が浮かんでいるのに気がついた。
そしてそこからロブ・スライム(アイテムを略奪するスライム)が現れる。
「!?」
「いっくぜー」
「ちょっ、待って榛名」
榛名が〈ハガネ風車〉を投げようとすると、ロブ・スライムが体を伸ばしてきて、榛名から〈ハガネ風車〉を取り上げてしまう。
「いっ!?」




