第105話 インターバル
「この先の魔法陣で合ってるよね?」
真莉は天音の方を振り返りながら聞いた。
「ええ。ここで間違いないです」
天音は悟から送られてきたマップ情報を見ながら言った。
「よし。それじゃ、行ってみるわ」
真莉はアイテム・装備を一旦すべて放出して通路の脇に置き、巨大手裏剣〈ハガネ風車〉だけ持って部屋に入った。
魔法陣に向かって歩いていくと、すぐにカボチャ頭の悪魔が上空から現れる。
「出たなカボチャ頭! せいっ」
真莉はカボチャ頭の悪魔から放たれる炎を軽やかに避けると〈ハガネ風車〉を投げつける。
〈ハガネ風車〉はアイテム破壊攻撃も跳ね返して、カボチャ頭の悪魔を両断する。
カボチャ頭の悪魔が消滅すると、アイテム〈身代わりの護符〉がドロップされた。
「よーし。ヤッタァ。〈身代わりの護符〉ゲットォー」
「やりましたね真莉」
「これでもうカボチャ頭の悪魔は怖くない! ダンジョンもサクサク進んでいくよー」
二人は転移魔法陣を踏んで次の階層へと向かった。
実況・解説席でもダンジョン内の異変に気づきつつあった。
「おーっと、どういうことでしょうかこれは?」
リポーターは会場に映された複数のカメラを切り替えながら言った。
「デュームの草間チームだけではありません。合計10以上のチームがダンジョンを逆走しています」
「これはどうにも只事じゃありませんね」
田辺も真剣な表情になる。
「どうも同時多発的にダンジョン内で何かが起こっているように思えます」
「複数チームの逆走。いったい何が起こっているんでしょう」
「分かりません。情報を待ちましょう」
「あっ、今、入ってきた情報によりますと、どうもデュームの草間チームはカボチャ頭の悪魔に遭遇したようです」
「プッ。カボチャ頭の悪魔とか」
「おや? 田辺さん。今、冷笑しましたか?」
「いえ別に? ただ、先刻もお伝えしたとおり、品川ダンジョンはすでに開拓され尽くしているダンジョンです。もはや出てくるアイテムやモンスターはすべて分かっているんです。その中にカボチャ頭の悪魔はいないんですよ」
「では、草間チームが見たというカボチャ頭の悪魔は?」
「おそらく見間違いですね。しかし、デュームの草間ともあろう者がこんな戯言を言うとは。いやはや。彼もヤキが回りましたね」
「おーっと、しかしここで新たな情報です。デュームの水島チームがカボチャ頭の悪魔と遭遇し、交戦しているとのことです」
「なにぃ!?」
「これはどういうことでしょう田辺さん」
「そんなバカな。そんなはずはない。ちゃんとカメラを映すんだ」
「では、切り替えます。あっ、見えました。確かにカボチャ頭の悪魔です。ほら、みなさん見てください。バッチリ映ってますよ。ほらほらほら!」
「なっ、ヤメロォ。これ以上映すんじゃない。カメラ切り替えろ!」
「いえ、きっちり検証する必要があります。これはカボチャ頭の悪魔で間違いないでしょうか?」
「切り替えろって言ってるだろ! 他の選手も映さないと不公平でしょうが! あ゛あ゛ー」
♦︎
如月はその豪運でもって奇跡的にカボチャ頭の悪魔に遭遇することなく、中間地点までたどり着こうとしていた。
「みんな入ったか? よし行くぞ!」
三つ目の転移魔法陣をチーム全員で踏んで魔力を注ぎ込む。
(よし。ここまでほぼノーミスで来られた。品川ダンジョンを選んだのは正解だったな。〈スペルカード〉の運用も上手くできている。次は中間地点だな)
中間地点とは三つ目の転移魔法陣を踏んだ先に現れる空間で、ダンジョン内の各ルートはいったんここで合流する。
中間地点に辿り着くと、各探索者はいったんここで転移魔法陣が現れるのを待たなければならない。
転移魔法陣は一定時間内にダンジョンに侵入したチームの半数がたどり着くか、たどり着いた者以外がすべて脱落するか、時間切れになるかしなければ開かない仕組みである。
つまり、この中間地点に辿り着くまでに少なくとも参加したチームの数は半分に減ることになる。
まさしく前半戦と後半戦のインターバルがもたらされる空間と言えた。
(草間と水島はもう中間地点に辿り着いているかな?)
草間はデュームの中でも〈スペルカード〉の研究に熱心だったから、如月達よりも先にたどり着いていても不思議ではない。
(なんにせよウチのチームの誰かがトップでたどり着いているはずだ)
如月がそんな風に考えているとやがて転移が完了する。
中間地点へとたどり着いた如月の目に飛び込んできたのは視聴者のコメントに対応している榛名と美波だった。
「お? 危機感ニキじゃん」
「ちーっす如月先輩」
如月は思わず部屋を見回す。
榛名と美波以外誰もいない。
「なん……だと?」




