アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (5)
「おい、あたしのは無いのか?」
副店長から早速クレーム。
「私のを貸す、来い」
相棒は、そう言いながら、走り出す。
「よっしゃッ‼」
副店長も走り出し……。
「や……やれ……こいつら……全員……殺……」
だが、あたしに霊力を搾り取られてるせいか、奴の声は弱々しく、ゾンビどももボケ〜っと突っ立ってるだけで言う事を聞こうとしない。
相棒が、副店長に長巻を渡した次の瞬間、2人は左右に飛び……。
続いて、相棒の腕の隠し刃が展開。
右腕の刃の横殴りの斬撃で1体目のゾンビを撃破。
続いて、左足の脛の刃が2体目にヒット。
攻撃が次の攻撃に繋がる流れるような動きで、次々とゾンビが消滅していく。
「おりゃッ‼」
副店長の方も、長巻を展開した次の瞬間に、横一閃の斬撃。
一度に複数体のゾンビを仕留め、続いて突き。
今度は、一度に2体のゾンビを刺し貫く。
「あんた、案外、強かったんだな」
「案外とは何だよ」
レンジャー隊の副隊長兼パワー型は、軽口を叩きながら、大型の金属腕でゾンビ達を殴り付ける。
こっちは力まかせの戦い方だが、一撃で2〜3体のゾンビをブチのめし……。
「や……やめ……」
「じゃ……そろそろ……終りにすっか」
奴の悲鳴を聞いて、あたしは、そう答える。
奴から奪った力に、あたしの力、そして愛用のハンマーと師匠の形見のナイフの2つの焦点具の力を上乗せして……。
「吽ッ‼」
ハンマーを地面に叩き付ける。
あたしを中心に炎が広がっている……ように見えるが、あくまで「霊視」だ。
もっとも、霊力は周囲を浄化していき……。
「がッ‼」
「ぐえッ‼」
「ごッ‼」
ゾンビどもは次々と消滅していく。
「おい、もう少し、あたしの見せ場……」
副店長が、そうボヤく。
「あんたは、現場に出たがり過ぎた。こいつの着装者の代りより、あんたの代りの方が見付けるの大変なんだぞ」
相棒が自分の「鎧」を指差しながら、そう応える。
「うるせえ、なら、ウチが作るモノに、今後、文句をたれるんじゃねえ」
「出荷前にマトモなテストや検査をやってくれるならな。冗談抜きで『工房』の品証部門の人数を増やしてくれ。もちろん、マトモな技術者をな」
「はいはい」
「おい……ところで、こいつ……大丈夫か?」
レンジャー隊の副隊長兼パワー型は……倒れて……意識は有るが……あくまで……かろうじての状態になってる今回の元凶を指差して、そう訊いた。
「こ……殺せ……断われん……筈だ……」
「はぁ?」
「大丈夫なのか、こいつ……かなりグロッキーみたいだけど……」
「治療さえマトモなら助かるかも知れね〜けど……回復しても、魔法が使えるかは別問題ってとこっすかね」
「なるほど……江戸時代の侍で喩えるなら……結構な剣豪だったのに、手の指を全部切り落されたよ〜なもんか。そりゃ、死にたくもなるな……」
「ま、そんなとこっす」
その時、ドローンが5台ほど到着。
「何を運んできたんだ?」
「ああ、こいつが使ってた国防戦機に積まれてた爆薬の一部だ。ここの農場を完全に焼き払う手筈だが……」
「証拠が消えちまうが……ま、今の御時世、警察は信用出来ねえしな」
相棒の説明に、レンジャー隊の副隊長兼パワー型が、そう応じる。
「おい、警官が証拠消えてもいいって、どう云う事だよ?」
副店長が当然のツッコミ。
「仕方ねえだろ。冗談抜きで、ウチの勤務先も他の警察機構も信用出来ねえんだ。上も下もな。こんな農場、下手に残しといたら、どんな屑野郎の手に渡るか知れたモノじゃねえ」
「こ……殺せ……」
「まだ言ってるのか、こいつ。おい、こいつは、あんたらに任せる。ちゃんと治療して、ちゃんと取調べろ」
「ああ、判った……」
「たのむ……ころ……して……く……」
「ごめん、あたし、ラノベとかは読む方だけど……『くっ殺』は好きじゃねえんだ」




