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アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (4)

「な……何だと……馬鹿な……だが、この程度……」

 奴は……炎で形作られた……龍か蛇に体を呪縛されているように見える。

 しかし……。

「吽ッ‼」

 奴の全身から凄まじい気合が放たれると共に……。

「う……うげ……」

 炎の龍が弾け飛んだ瞬間……奴は……嘔吐。

「な……なんだ……こ……これは……?」

「判んねえか? おめえの術を無理矢理破った奴が居る。その反動が、おめえの体に返って来ただけだ」

「だ……誰が……私の術を……貴様か……?」

「さて……? あたしは、おめえよりも、力も技量(わざ)も劣ってんのは知ってるだろ」

「な……なら……誰が……私の術を破ったと……?」

()()()()()()()()()()()()

 一瞬、ポカ〜ンとした後に……奴は……どうやら……気付いたようだ。

 このフザけた真似をやりやがった、この糞野郎への怒り……。

 この人間のクズに、名前も人格も無い道具にされ踏み付けられた人々への同情……。

 それが……あたしを……師匠が言っていた「慈悲と忿怒を同じ心に同時に持つ」境地に到達させてくれたようだ。

「倶利伽羅龍は、おめえに返した。迦楼羅焔と金剛剣は……」

 あたしは仲間達を見渡す。

「こいつから奪った力を、あんたらの武器に宿らせた。あんたは……そのデカい腕に」

 あたしは、まず、レンジャー隊の副隊長(ブルー)パワー型(イエロー)に言った。

「えっ?」

「あとは……おめえの長巻と手足の(ブレード)にな……」

 続いて、相棒にそう告げる。

「なるほど……試してみるか……。不自惜身命」

 相棒は……「火事場の馬鹿力」の解放用の自己暗示と、「鎧」のリミッター解除キーワードを兼ねた言葉を唱え……。

 相棒の鎧の各部が開き……そこから余剰エネルギーが溢れ出る。

 相棒は、ほぼ助走無しでジャンプ。一瞬にして、例の鬼の真上まで飛ぶ……。

 そして、空中に居る間に、長巻を展開し終っており……。

「があああ……」

 長巻で軽く触れただけで……鬼の体と、その体に宿っていた邪気や魔物は消滅。

 通常の物理攻撃では開いてしまう「異界への門」は影も形も無い。

「おい、力はこの阿呆持ちだ。好きなだけ、派手にやれ」

「ふ……ふざけ……」

「残念だったな。元は……あんたの術だが……解除出来るのは、あんたじゃなくて、あたしみてぇ〜だ。好きに使わせてもらう」

 師匠に言われた、あたしの真の力を引き出すヒント……その言葉の一節が脳裏に受かぶ。

『荒神の君は、(これ)、如来の権身にして、仏法を保たんが為に仮に明神と称す』

 ……どうやら……慈悲と忿怒を同時に心に抱いた時……あたしは……相手を攻撃する忿怒尊の術だけじゃなくて、相手の攻撃を、あるいは無に帰し、あるいは返し、あるいは奪う……如来や菩薩の術も使えるようになったらしい。

 とは言え……師匠が言ってたように……この状態になれるのは、一生の内で、この一回だけかも知れねえが……。

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