ニルリティ/高木 瀾(らん) (3)
「来てる……茂みの中だ」
上空と地上のドローンが撮影した画像をリアルタイム解析した結果、道の両脇で何かの動きを検知。
「かなりの邪気。ゾンビだ」
相棒が、そう続ける。
「こいつを使え。倒せないまでも、動きを封じる事は出来る」
副店長が、そう言って対ゾンビ用の弾が入った拳銃と弾倉をレンジャー隊の副隊長 兼 パワー型に渡す。
「どこから来る?」
「一〇時から一一時と、一時半から二時半の2つの方向から。茂みに隠れてるので、確実とは言えないが、一〇弱〜一五体程度。来るぞ」
私が、そう言った瞬間……敵が姿を現わし……計一三。
次々と拳銃を撃ち……霊力が込められた弾丸がゾンビの体内で砕け、ゾンビの動きを封じ……。
何だ?
どうなってる?
私以外の攻撃が……無い。
「吽ッ‼」
相棒の絶叫。「魔法使い」系の基礎訓練の一貫として、ある程度のセルフ・コントロールのスキルを身に付けている筈の相棒が……まるで、迷いを無理矢理振り切るかのような悲痛な声。
同時に3体のゾンビの皮膚や肉が……まるで、燃え上がるかのように蒸発していく。
「おい、最初から飛ばし過ぎ……」
そう言いかけて、ようやく気付いた。
思えば……私が、この「稼業」を始めて最初に戦った敵の中に……幼ない頃から成長抑制剤を投与されて作られた言わば「人造少年兵」が居た。
あいつらを……私より年下の子供に見える奴らを、叩きのめしてから……何かがふっ切れてしまったようだ。
ひょっとしたら……成長と「闇堕ち」とやらは紙一重なのかも知れない。特に、こんな仕事をやってる場合は……。
「ふ……ふざけた……真似を……」
彼女自身が「関東難民」であるレンジャー隊の副隊長 兼 パワー型の声は……。
「くそ……予想して然るべきだった……」
十年前の富士山の歴史的大噴火により大量発生した国内難民……通称「関東難民」。
彼らの中では、関東の外で新しい居住地や仕事を見付けた者も……関東難民の為に作られた人工島「NEO TOKYO」に移り住んだ者も居る。
だが……それが全てではない。
事実上の奴隷労働を強いられる者も居る。
関東難民を犯罪者予備軍扱いする者も居て……それが「予言の自己実現」として機能する場合も有る。ある集団を犯罪者予備軍扱いする者が一定数居れば、その犯罪者予備軍扱いされた集団は……仕事や生活の選択肢が減り、やがて……。
だから、この少し先に有る「魔薬」の材料を栽培している農場で、関東難民が奴隷労働させられていた事も判っていた。
彼らが、ゾンビに変えられ、私達を迎え撃つ兵力にされる可能性も……予想済みだった。
だが……。
「あたしさ……この子ぐらいの齢だったんだよ……あの日にな……」
相棒に聞こえないように、護国軍鬼の制御AIに、相棒のバイタルを表示するように命令。
心拍数……呼吸ともに……平常。
判断が付かない。
完全にフッ切れているのか……目の前で起きた事から心を閉ざしているのか……そして、この事が、この後、良い方向と悪い方向のどちらに働くのか……。
「行けるか?」
「ああ……仕事だ。成行きも有ったが……あたしが選んだ仕事だ。給料分の働きは、ちゃんとやる」
「そっちは……?」
「行ける」
「何とかな……」
ゾンビの中には……一〇歳前後の子供も混じっていた。
その子供達が、着ている服や靴の種類・汚れ具合や擦り切れ具合などから……ゾンビに変えられるまで奴隷労働に従事していた可能性が高かった。




