アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (6)
「多分、あの国防戦機は遠隔操作か半自動操縦で、コックピットにはパイロットの代りに爆薬が満載されてる」
副店長がそう説明する。
「爆薬って、どれ位の量だ?」
レンジャー隊の副隊長兼パワー型が当然の質問。
「推定でいいなら、国防戦機の重量バランスがおかしくなる位の、とんでもない量だ。重量ベースだと人間1人分の体重の少なくとも数倍」
「はあ?」
「あの国防戦機がヨロヨロとしか動けないのは、人間で喩えるなら、すげえ重い荷物を変な運び方をしてるようなものだからだろう。通常なら、無茶な運転をしても制御AIが倒れないようにバランス制御をしてくれる筈だが……」
「賢いAIサマでも、本調子が出ないような重量の爆薬っすか?」
「詰んでるじゃねえか……」
「だから、爆薬を積んでるって言ってるだろ」
「違う、将棋だったら、こっちが投了しなきゃいけね〜よ〜な状況だって事」
「ああ、そっちの『詰み』か」
大量のゾンビ……それも防具付き。
更に、その後に控えてるのは……ロクに動けないみて〜だけど、固定砲台だと割り切って使えば、結構な威力の銃弾をバンバン撃てる4m級の軍用パワーローダー。
ダメ押して、そのパワーローダーの中には、半径数百mか下手したら㎞単位を焼け野原に出来る量の爆薬。
ゾンビも国防戦機も動きがトロいから……逃げる事も出来る……いや待て……。
向こうは、多分、遠隔操作でハンパない量の爆薬を爆破させる事が出来る。
で、ゾンビが破壊されたら、そこには異界への門が開く。
あたしらは爆発で丸焼き。
残るのは、一般人立入禁止レベルの心霊スポットにして焼け野原。
何か……手は有る筈だ……。
つか、何か巧い手が有ってくれ。
でも、この手を考えやがったのは……あたしのクソ性悪な相棒と似たよ〜な思考パターンの奴らしい。
つまり、巧い手が有っても……それは、あのクソ頭がいいサイコ野郎を出し抜ける手……。
んなの、あたしに思い付ける訳が……。
「もういい、あたしは、どうなってもいいから……」
この場に居る味方(一時的な味方を含む)全員が、あたしの方を見る。多分、ヘルメットやマスクの下で、どんな表情をしてるか想像は付く。
『短かい付き合いだったな……。いつか、一緒に酒でも飲みながら愚痴なんかを聞いて欲しかったのに、寂しくなる』
「クソ真面目な口調で、んな冗談言うんじゃねえッ‼ そんなんで場が和むと思ってんのか⁉ このサイコ野郎ッ‼」
『で、どうすればいい? ああ、もちろん、私の冗談のセンスを、今後、どうマシにしてくかの話じゃなくて、これからすぐに私が、どこの誰を、どうやってブチのめすのが、お前の御希望かとか……ま、そんな感じの事についてだが』
「後方支援チーム、判ってる限りで、一番近い、龍虎興業の下部組織の拠点はどこだ?」
『えっ?』
『なるほど』
「お前が一緒に居る連中の中で、なるべく火力がデカいのを連れて、そこを襲撃しろ。そして……例の麻薬の原料を栽培してる農場の場所は判ってんだろ? そこに行って、農場を焼き払え。そこまでの道の途中に龍虎興業の拠点が有るなら、片っ端からブッ潰せ」
あたしは……わざと強化装甲服「水城」の拡声器をONにして、そう言った。……イチかバチかの賭けだ。
『無茶苦茶ですよ』
後方支援要員から当然のツッコミ。
「こっちは、どっちみち詰んでんだ‼ 潔く死ぬ‼ 後は、残った奴らに任せるッ‼ あたしらの弔い合戦だ、派手にやれッ‼」
『気に入った。それでこそ、私の相棒だ。お前の墓は一番高価いのにするから安心しろ』
「そうか……。で、あたしに少しは惚れてくれた?」
『何故かお前からは、女性としての魅力を少しも感じなかった。仲間としての実力は、これでも買ってたがな』
「最後の最後まで言いたい放題言いやがるな、おい」
「勝手に、お前らに含めるな……」
レンジャー隊の副隊長兼パワー型がボヤキ気味の口調で、そう言った。
「あの世で、殉職した後輩に袋叩きにされるな、俺達……」
「どうしよう……半分以上、名前、ロクに覚えてねえや……」
続いて、レンジャー隊の汎用型2人が、本当に、あの世とやらに居る殉職した連中が聞いたら、この2人を袋叩きにしそうな……何つ〜か、何かの感覚が完全に麻痺してる冗談を言い出した。




