アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (5)
「いいお報せと悪いお報せだ。応援が、もうすぐ到着だ。福岡市と佐賀県と熊本県から、機動隊にSATにレンジャー隊が山程」
「今更、戦闘部隊が来て、何が出来るんすかッ⁉ 今、要るのは、医者と救急車でしょッ‼」
司令部かどこかとの無線通話を終えたらしいレンジャー隊の隊長が、余りに間抜けな事を言い出したんで、あたしは警察署の周囲を指差した。
「日本中の医者や救急隊員が、今すぐに、ここに来れたとしても……死体に黒タグ付ける以外に出来る事有るのか?」
あたしのツッコミに、レンジャー隊の副隊長兼パワー型が疲れ切ったような口調で、再ツッコミ。
警察署は、既に瓦礫と化し……その周囲には、ヤクザどもの死体が山程。ヤクザと言っても、大半は河童だけど。
「で、悪いお報せは何なんすか? まさか、応援が来るってのが悪いお報せ?」
レンジャー隊の副隊長兼パワー型が、そう言った。
「熊本の方から、国防戦機が、もう1台来てる」
その時……轟音。
とんでもない轟音。
いや、あたしらは……ヘルメットの聴覚センサが半自動で音をシャットアウトしたので、なんかすげ〜音がした、って情報だけが網膜投影式のゴーグルに表示……ん?
「あの……この辺りの地図を表示。あと、あたしらの現在位置と、さっきの音がした方向を地図の上に表示」
『は〜い』
後方支援要員から返事。
「あ、流石にAIじゃ無理なんだ」
『まだ、ここまで曖昧なワードが含まれる指示は、ちょっとね。「さっきの音」の意味を統計的に解釈したりとか』
なるほど、あたしが思ってる「AIがやりがちな言葉の解釈ミス」とは違う事が起きるらしいけど、具体的に、どんな馬鹿な事が起きるかまでは、さっぱり判んね。
って……。
音の推定原因は……爆発。
推定される音源までは㎞単位の距離。
そして、音源の方向は……。
「おい、羅刹女達は大丈夫かッ⁉」
『ああ……。だが、もう1台の国防戦機が来ても……迂闊に撃破するな』
「えっ? どう言う事だよ……」
『今、起きた事から奴らが何をやったか推測出来るだろ? やっぱりだ。今回の敵の指揮官の思考パターンは、私に良く似てる。そして、向こうも自分と似た思考パターンの奴が、こっちに居る事に気付いただろう』
やれやれ……何か……とんでも……ん?
「熊本県からの応援か?」
レンジャー隊の隊長が指差す方向に警察仕様の防弾マイクロバスが何台も……ん?
のろのろ……ふらふら……のろのろ……ふらふら……のろのろ……ふらふら……えっと、まあ、そんな感じだ。
防弾仕様のマイクロバスを追って来たモノが居る。
「あ……あの……あれの最高時速って……」
「足に有る車輪とAIによるバランス制御で……時速七〇㎞以上でも、安定した走行が出来る筈……なん……だが……えっと……」
そうは見えない。
警察のマイクロバスの後方から、えっと、ここに居る連中を一瞬で皆殺しに出来そうな糞ゴツい大型機関砲を持った4m級の戦闘用パワーローダーが……すげ〜低スピードでマヌケかつ危なっかしさ満載の感じの……過積載のトラックみたいな走り方で……。
「えっと……何か、重いモノでも積んで……」
『その国防戦機は、とんでもない量の爆薬を積んでる。下手に迎撃すると、半径数百mか……下手したら1㎞以上の範囲が吹き飛ぶぞ』
相棒から最悪の連絡。
「はぁッ?」
だが、本当に最悪の事態は……続いて起きた。
マイクロバスのドアが開き……そして……。
「嘘……」
「おい、まさか……」
「冗談じゃねえよ、どこで……やられたんだ、一体?」
いや、副隊長兼パワー型が言った冗談そのまんまだ。「応援が来る」ってのこそ、悪いお報せだった。
マイクロバスから次々と下りてくる、機動隊にSATにレンジャー隊。
そいつらは、ほぼ全員……体から、とんでもない邪気を放出していて……動きは、どこかぎこちなかった。




