アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (3)
やがて階下から対異能力犯罪広域警察のレンジャー隊が4人やって来た。
指揮官仕様と汎用型が3人。
大昔のTV特撮の戦隊シリーズを思わせる格好だが、あたしらと違って防毒・防塵マスクは特別な場合しかしないらしく、顔の下半分は剥き出し。
あと、こいつらが着装してる強化装甲服は、防御力・出力・稼働時間の全てで……下手な民生用強化服以下らしい。
何でも、警察用の強化服の入札の条件の中に「日本国内で生産された事」ってのが有ったらしいが……困った事に、ある程度以上高性能な強化服は、設計したのは日本企業でも、海外の工場でのライセンス生産がほとんどらしいせいだそうだ。
2人で、眠ってる最中のデブを運び出し、残りが万が一の為の護衛らしい。
「あの……下に居る機動隊とさ……わざとトラブってもらえないかな? 怪我人が出ない程度に……」
レンジャー隊の現場指揮官が、とんでもない事を言い出しやがった。
「はぁ?」
「いや、折角、撮影チームを連れて来てんでさ……えっと……その……」
「脚本も事前打ち合わせも無しに? どんな『事故』が起きるか知れたもんじゃない。プロレス・ファンが怒り狂うようなニュアンスでの『プロレス』だって、もっと考えてやりますよ」
そう答える相棒。
「あ……あのさ……」
あまりの事態にツッコミを入れざるを得ない。
「警察と違法自警団がズブズブの関係って、マズいだろ」
「階下では県警と法的にマズい事をやりまくってる動画配信者がズブズブの関係だ」
「おめぇさ、『あれがOKなら、何で、こっちはNGなんだ』論法は大嫌いだ、とか言ってなかったっけ?」
「まぁ、こう云う事になった場合のリスクを最小限にする為に、警官は、時々、勤務地や部署の異動が有るんだけどね」
おいおい、こっちでは……警察は下手な悪党よりタチが悪いって噂は聞いてたけど……ガチで「悪をもって悪を制する」「タチの悪い悪を討つ為ならマシな悪は大目に見る」つもりで、ホントに悪堕ちしてるらしい。それも、御本人達は自分達が悪堕ちしてる事に気付いてない、最もタチが悪い悪堕ちだ。
「こいつが目を覚ましたら、かなり危険な心霊現象が起きる可能性が有るので、間違っても普通の病院で検査受けさせないで下さい。あと、しばらくの間、こいつの勾留場所には近付かないで」
「了解」
その時、ヘルメット内の網膜投影モニタにウィンドウが1つ表示され……。
「あ……っ?」
「おい……これは?」
『ついさっき、こっちのドローンが撮影した映像』
後方支援チームより無線通話。
あたしと相棒は窓に駆け寄り……。
「どうしたの?」
レンジャー隊の指揮官も、それに続き……。
「ATVに詰んでる煙幕弾を発射。狙撃手が潜んでる可能性が有る場所との間に煙幕を張ってくれ」
『もう始めてる』
下を見ると、道路を挟んで反対側のビルに居たらしい県警のマーク入りのボディアーマーに狙撃銃の奴と狙撃観測手らしい警官、更にレンジャー隊の狙撃・索敵型に狙撃の補佐役らしい汎用型が路面に叩き付けられ……多分、死亡。
相棒は、散弾銃に弾を込めて、窓から半身を乗り出し……。
「届くか?」
相棒の、その一言と共に……道路の反対側のビルの上層階とこのビルの屋上との間に張られているロープに向けて簡易焼夷弾が発射された。
炎はロープを焼き切り……。
「うわああ……ッ⁉」
そのロープを滑車でつたって、道路の反対側から、こっちのビルに渡って来ようとしていたヤツの悲鳴が轟く。
「あ……あれ……」
「この件、俗に言う『九州3大暴力団』のどれかが絡んでるな。下手したら、その内の複数が」
地面に叩き付けられた阿呆の姿は……河童だった。