アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (6)
「お前、また、妹と喧嘩したのか?」
瀾にビデオ通話をしたら、背景に写ってるモノが、明らかにあいつん家の部屋じゃねえ。
『違う。しばらく、夜中はここで「護国軍鬼」の調整をやる』
「何の?」
『射撃補正機能だ』
「えっ? でもさ……もう有るだろ?」
『既に有る射撃補正機能は、銃を扱い慣れてない奴やフラフラになってる状態でも、実用上十分な命中精度にする事は出来る。でも、今回、必要になりそうなのは、それ以上の精密射撃だ』
「そ〜なの?」
『と言っても、3〜5mの距離から、一般的な拳銃で相手もこっちも動き回ってる状態で、目や開いてる口に銃弾を命中る程度だが……』
「すげ〜のか、出来る奴がゾロゾロ居そうな程度の話なのか、良く判んね」
『今の私では、ちょっと不安だ。今までやってきたのは、あくまで「相手の戦闘力を削げば十分。結果的な相手の生死はそれほど重要じゃない」ような撃ち方なんでな』
「あ、そ……あと、背後に居るの誰?」
『……本気で訊いてるのと、嫌味か何かの、どっちだ?』
『付き合わされる身にもなってくれ……。夜中の0時過ぎに北九州まで帰って、更に昼間は仕事で、夜中に、また、こっちまで来て……の繰り返しだぞ』
悲鳴をあげてるのは「工房」の副責任者。コードネームは「北の港のカフェの副店長」。または単に「副店長」。
『あと、プログラム組める奴まで……』
久留米チームの後方支援要員の声も聞こえたが……。
『で、何の用だ?』
「あのさ、お前、両手利きだったよな? それも、自分で訓練して、両手利きになった……」
『そうだけど』
「どうやった?」
『そうだな……両手に箸を持って食事をするとか……』
「他には?」
その時、瀾は近くに有る紙とシャープペンを目の前に置いて……。
さらさらさらさら……。
『両手で絵を描くとか』
紙に描かれてるのは、2匹の向かい合ったデフォルメされた恐竜。恐い系の顔のと、おとぼけ系の顔のが1匹づつ。
「なるほどね……」
『何をやるつもりだ?』
「巧くいくかど〜か、判んね〜けどさ……」
『何だ?』
「あたし、やり方次第では、一度に複数の術を使えるよ〜になるかも知れね。それが、あいつに勝てる鍵になるかも」
問題は……「守護尊」があたしと同じ奴が極端に少ない事。
早い話は、出来るかも知れね〜事は判ってるが……どうやれば出来るようになるかの情報が、ほとんど無い。
『あと、そっちに入院中の今回の元凶らしい奴だが……』
まぁ、あいつには周囲の「邪気」を浄化して自分の力として取り込む能力は有るが……四六時中、あんなゾンビどもと行動を共にしてたら、流石に健康には良くなさそ〜だ。
「奴がどうかしたか?」
『奴が退院したら、すぐに連絡をたのむ。まぁ、一応、熊本県内のチームが、そっちの病院の周囲を監視してるが、そっちの病院とトラブルとマズい事になるんで、十分とは言えない。情報のルートは複数有った方がいい』
「奴が退院したら、また、何かやりそうなのか?」
『ああ……私が奴なら……機動隊か対異能力犯罪広域警察のレンジャー隊か……その辺りの警察の精鋭部隊と交戦する』




