アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (5)
「起きて、到着たよ」
「は……はい……」
後方支援チームの権藤さんの車でやって来たのは……阿蘇山の近くに有る……。
一見、良く有る温泉旅館。
それも、温泉地に良く有る「建増ししてる内に中に入ったら迷いそうな構造になっちまった」のが外観からでも判るよ〜な感じのヤツだ。
でも、実は……。
弱った体に、大地から吹き出す「気」が染み込む。
この辺り一帯は中国の風水なんかで言う「龍穴」みて〜なモノらしい。
「じゃあ、支払いはコレで。病院って言っても、民間・公的どっちの健康保険も効かない上に、魔法系の治療だけじゃなくてCTとかMRもガンガン使うようなとこなんで」
そう言って渡されたモノは……。
「今時、現金っすか? それも、こんなとんでもね〜金額?」
紙のお金が一〇〇枚ぐらいは入ってそうな封筒を……2つ。
「クレジット・カードや銀行振込や電子マネーも使える。けど、あくまで非推奨」
「何でっすか?」
「現金以外だと……やろうと思えば患者の身元の手掛かりになる。この病院が信用出来る理由の1つが、それだよ。この病院そのものが、スタッフや……何だったら幹部も信用してない。不心得者が紛れ込んでも、患者に与える被害がなるべく小さくなるシステムになってる」
「なるほどね」
「けど、一応は領収書もらっといて。今渡したお金を使った場合は、ジュース1本でも」
「判りました」
「あと、判ってるよね? ここは中立地帯。犯罪組織・テロ組織・公的機関、そして『NEO TOKYO』の自警団や俺達みたいな連中まで、金さえ出せば素性を訊かずに治療をしてくれる。他の患者の中に、史上最悪クラスの連続殺人鬼やテロ組織のボスや自分の家族や友達や恋人を殺した相手が居ても見ざる・言わざる・聞かざるに徹して」
「はい」
あたしが、そう答えた途端、権藤さんの表情が……。
けど……視線が向いてた先は、あたしじゃなかった。
振り返って、その視線の先を……えっ?
「どこのマヌケっすか?『患者の素性を一切訊かない』病院に……素性が思いっ切りバレそうな車で乗り込んで来やがった阿呆は……?」
対異能力犯罪広域警察のマークが入った白黒のバンが4台、この「病院」の駐車場の乗り入れてきやがった。
って……何か、嫌な予感しかしね〜んだけど……。




