ニルリティ/高木 瀾(らん) (5)
「嘘だろ……不法侵入してるのに、こんな事を言うのも何だが……ここもか……。いい加減にしてくれ」
一時的ではあるが「鬼の腕」を封じて、サーバ・ルームの前まで行くと……。
「どうした?」
「このドアロック、見覚え有るだろ」
そう言って、私は、メンテナンス用の強制開錠コードを入力。
「どこの製品だ、これ?」
「一応は……国内企業だ」
「うん……警察関係の組織は……重要な備品の納入は国内企業しか入札に参加出来ない筈」
レンジャー隊の隊長が、そう説明。
表向きは「民生用」だが、戦闘用途においても、レンジャー隊用の強化装甲服より、ほぼ、あらゆる点で性能が上の水城が警察用の強化装甲服に採用されなかった理由も、大半が海外企業によるライセンス生産だった為だ。
「国内企業と言っても、親会社も国内企業じゃないと駄目だったんですよね?」
「え……そうだけど……」
「で、その入札条件で言う国内企業の定義は……株式会社なら、株式の五〇%以上を国内の企業・個人・団体が保有してる事ですよね?」
「な……なに……何か、マズい事でも……」
「これ作った会社、株式の六〇%が安徳セキュリティが保有してて、残りの四〇%を韓国の釜山の『熊おじさんホールディングス』が保有してた筈だ」
「えっ……?」
「ま……待て……えっと……安徳セキュリティって、久留米のヤクザの安徳グループの殴り込み部隊だっけ?」
「何だ、その、露出狂の変態男を目撃した時に『あいつの股間にブラ下ってる貧相なモノは、金玉とチ○コだよな?』と訊くよ〜な阿呆な質問は? まぁ、答はYesだが」
「あと……『熊おじさんホールディングス』って……」
「知ってるのに、何で訊くか理解出来んが、韓国の釜山に本社が有る合法でも違法でも金になれば何でもやる組織だ。判ってる限りでは、日本・中国・台湾・香港・東南アジア合せて三五を超える犯罪組織・テロ組織との間に武器や麻薬の取引が有る」
「何で、そんなのが『親会社』の会社から警察の備品を購入したんすかッ?」
「知らないよッ‼ 警察って言ってもウチと県警は別組織なんだから……」
相棒とレンジャー隊の隊長がボケしか居ない漫才をやってる間に、私はサーバに爆薬を仕掛ける。
爆薬の側には、念の為、ゾンビ対策には余り役に立たなかった簡易焼夷弾。
これで爆薬が爆発すればダメ押しの炎がサーバの記憶媒体を、こんがり焼いてくれる筈だ。
「一〇分後に爆発するようにセットした。このサーバ・ルームは火の海になる筈なんで……」
「ちょっと待って……」
レンジャー隊の隊長が、そう言いながら、誰かと無線通話を始め……。
一方、相棒も首を傾げて……例の「強い霊力を追う呪符」の封印を解き……。
呪符はサーバ・ルームの外へ出て行き……。
「どうした?」
「もう1つか2つ……デカい邪気が出現した」
『おい、2人とも、何が起きてる?』
続いて、後方支援チームから無線通話。
「何だ?」
『「護国軍鬼」と「水城」の聴覚センサが異音を検出』
「異音?」
『小さい上に反響してるんで、場所は良く判ら……』
「助かった……まだ……サーバを爆破してない御蔭で……」
サーバ・ルームのモニタに監視カメラからの映像が写っていた。
さっきまで居た死体の一時安置室。そこで……。
いつの間にか「鬼の腕」が床に落ち砕けている。
だが、肉片の一つ一つが、死に掛けた動物が最後の足掻きをしているように……ピクピクと動いている。
「一時的だが……封印は出来たんだよな?」
「新しい邪気の影響で活性化したか……」
「ごめん、大変な事になってるんで、手を借りていい?」
『おい、お前達が警察署まで乗って来た四輪バギーのカメラに……とんでもないモノが写ってるぞ』
続いて、レンジャー隊の隊長の声と、後方支援チームからの無線通信が、ほぼ同時に響いた。




