ニルリティ/高木 瀾(らん) (1)
当の私自身が、こんな感じだから、沈着冷静な奴でも的外れな判断をする事などいくらでも有るし、「怒り狂っている奴は理性的な判断が出来ない筈だ」という予断は単に間違っているだけではなく、あまりにも陳腐で凡庸な間違いにしか思えないんだ。
「効いてるか?」
霊力を込めた散弾をゾンビに命中た後、相棒に確認する。
「ああ。完全にくたばった訳じゃないが……『異界への門』は開いてない」
別の世界から来た実体の無い悪霊や魔物に取り憑かれ「擬似ゾンビ」「ゾンビ」化した人間にも、取り憑いたモノの違いにより、色々と性質の違いが有るらしいが……今回のは「魔法的・霊的なものではない、純粋に物理的な方法で肉体を破壊すると、傷口が『異界への門』と化してしまう」という罠みたいな性質の奴らだ。
下手な方法で倒してしまうと、私や妹のような「霊的・魔法的な攻撃・存在の影響を、ほぼ受けない」ような人間は無事だろうが、それ以外の大半の人間は次々とゾンビ化するエミデミックの始まりだ。
しかも、ありがちなゾンビ映画と違って、ゾンビに噛まれなくてもゾンビと化す。「自分の判断である程度移動出来て、霊的・魔法的な方法でしか存在を検知出来ない」というタチの悪いゾンビ・ウイルスの蔓延だ。
「次、霊力を込めた9㎜パラベラム通常弾の効果を確認する」
そう言って、左脇のホルスターから右手で拳銃を抜く。
迫り来る元警官のゾンビが2体。
「あいつらのタイプは?」
「『鬼』と同じタイプの邪気だ」
「了解」
効かなかった場合の為に、相棒は真言を唱え霊力を溜めている。
私は、拳銃を撃つが……。
散弾で倒した奴と違って、銃弾は命中したのに、平気で歩いて来る。
「霊力を込めた武器でも、貫通すると効果なし、または効果が著しく低い模様」
「吽ッ‼」
相棒が放った「気」で、2体は倒れる。……と言っても、私には、その「気」が見えないのだが……。
「次……霊力を込めた9㎜パラベラム・ホローポイント弾の効果を確認する」
そう言って、私は、右脇のホルスターに入れた拳銃を抜いた。




