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荒神録 ─ Demonic Divinity Saga ─:毒戰寒流  作者: HasumiChouji
第三章:ピースブレイカー
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ニルリティ/高木 瀾(らん) (2)

 秋に死んだ知り合い……と言うか事実上の戦闘術の師匠……がオーナーだった駅ビル内のうどん屋「玄洋」では、冬限定メニューが始まっていた。

「さて……牛すきうどんと、水炊きうどん、あと鶏すきうどん……どれにすッかな? どれがオススメだ?」

「牛すきうどんだと……黒毛和牛より肥後褐牛(あかうし)の方がオススメだな」

「お前、霜降り肉に親でも殺されたのか?」

「たっぷり食べたいんなら、赤身の方がいいだろ」

 そんな事を話しながら、食券を買って席に付く。

「水炊きの方が良かったかな?」

 先月まで、いわゆる「関東難民」向けの人工島「NEO TOKYO」で暮していた(ひなた)にとっては、九州(こっち)のうどん屋では普通の「ねぎ・天かす取り放題」が、まだ、珍しいようで、どんぶりの中に入ってる山盛りの青葱の方に視線を向けている。

「ところでさ……お前の話の通りなら、お前の親父さんの一族の本家の息子ってのは、何で、途中で修行から脱落したんだ?」

「ああ……それか……。あたしなんて、そこそこ程度の『魔法使い』に過ぎねえけど……その『そこそこ程度』になんのも結構大変なのよ」

「どう言う事だ?」

「『魔法使い』系に必要な能力とか素質ってのは、いくつも()んのよ。単純な気とか霊力とかのデカさに……センスみて〜なモノに……どれか1つが化物級でも、別のどれかが駄目だと、そこで脱落決定。結局、1人前になれるのは……そうだな……『成績が学年トップの科目も有れば、5段階評価で2か1の科目も有る』よ〜な奴より、まぁ、あたしみて〜な『全科目が4に近い3』みて〜な……自分で言ってて面白みが無さそ〜な奴が多くなっちゃう訳よ」

「なるほど……」

「なんつ〜かね……スカした横文字で言うなら『セルフ・コントロール』ってヤツ?……それが出来ないと、どんなに力やセンスが有っても駄目。力だけ有っても、センスみて〜なのが無いと駄目。その正反対も駄目。力は有るがセンスが駄目だったりセルフ・コントロールってのが出来ねえ奴が修行中に変な『事故』を起こしたら、タチの悪い魔物や悪霊に取り憑かれて、ま、あんまし『人間』たぁ呼びたくね〜代物に変ったり、辺り一帯が一般人立入禁止レベルの心霊スポットと化すなんて、ネット・スラングで言うなら『稀に良く有る』だ。ついでに、あたしの師匠はマシだったからいいけど……修行方法は超体育会系なのに、脳味噌まで体育会系になったら、はい、脱落決定、なんて酷い(ひでえ)流派まで有る(あん)だぜ……」

「俗に『魔法』で一括りにされてる割には……武術とかの修行に近い気がするな……。私がやってた格闘技なんかの修行も、そんな感じだった」

「ま……それに近いかもな。知性が魔法に重要な能力ってのは、ファンタジーRPGの中だけの話……多分だけど」

「そう言えば……日本の伝統武術には、密教や修験道と関わりが有る流派も少なくなかったな」

「水炊きうどん大盛り、肥後褐牛(あかうし)の牛すきうどんの大盛りと……かしわおにぎりと稲荷寿司が2つづつ。御注文は以上でよろしいですか?」

「あ、どうも」

「それで大丈夫です」

 やがて、うどんをすする音に、肉や野菜を食べる音。

美味(うめ)えな、これ。ああ、そうだ、どこまで話したっけ? えっと、あたしの親父の家系の……更に本家の残念な後継(あとと)り息子か……あくまで親戚内とか『本家』と付き合いが有った人達の間の噂だけどさ。あいつ……力は半端無かったんだよ。力だけはな。一族の歴史でも、めったに無い級の超天才だと思われてた……。修行を始める前まではな」

「問題は何だったんだ?」

「視えなかった。何も」

「へっ?」

「気・霊力・霊その他モロモロ……お前と同じだよ」

「ちょっと待て……力だけは有るのに、その手のモノを認識出来ないとなると……」

「そう、力は半端ねえのに……肝心の自分の力を感じ取る事が出来ねえ……。つまりは……ええっと……何て言やいいかな……ああ、そうだ、目隠しされた状態で車運転するよ〜なもんだ。発車させるまでが一苦労だし……万が一、発車させる事が出来たら……どんな事故が起きるか判ったもんじゃねえ」

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