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アータヴァカ/関口 陽(ひなた) (2)

「おい、何、考えてやがる⁉」

 流石にレンジャー隊の副隊長(ブルー)がブチ切れてる。

「事態を終息させる為には、犯罪者の手だろうが、犯罪組織と区別困難になった警察の手だろうが、使えるモノは何でも、使わせてもらう。おい、『アータヴァカ』、動画配信者を擬似ゾンビに変えた奴をすぐ見付けてくれ」

「まったく……」

 あたしは大通りに出る。

「あ……おい……大丈夫だったか?」

 大通りの歩道では……ふっ飛ばされた狼男が、七〇過ぎぐらいの婆さんと、その孫らしい幼児に声をかけていた。

「子犬には優しい不良なんてのは、ありがちな漫画で山程見たけど、子供と老人に優しい狼男のヤクザなんて、初めてみたよ……」

「うるせえ、俺は古い男なんでな。子供と老人は国の宝だと思ってる。俺みたいなのがヤクザになるしかねえ世の中の方がおかしいんだよ。あと、新入りの『正義の味方』さんよ。早速、相棒の悪い癖が伝染(うつ)ってねえか?」

「へっ?」

「お前のクソ相棒みてえに、四六時中、くだんね〜事、ブツブツ言ってるぜ」

 そして……周囲を見渡し……。

「あの、レンジャー隊さん達、早く、一般人避難させて‼」

 あたしの頼みに、えっ? って感じになってるレンジャー隊の汎用型(グリーン)の生き残り達だけど……。

「とりあえず、あいつの指示に従え」

 レンジャー隊の隊長(レッド)が、そう指示を出す。

 けど……。

「手際……悪いな……」

 相棒が辛辣な指摘。

「仕方ないだろ。今年の3月末のアレ以降、ウチは『補充メンバーが3ヶ月生き延びた(ためし)が無い呪われた小隊』扱いされてんだぞ」

「一部の古株は別にして……訓練が足りてない新人ばかりって訳か……」

「で……どいつをブッ倒しゃ話は終りなんだ?」

 狼男が、そう言うと……あたしは……指差した。

 野次馬の中に居る……フードの男で顔を隠してる男を……。

 中肉中背って言葉を現実化したような感じの体格。

 登山用っぽい感じのフード付の上着。

 下はカーゴパンツに……あれ?

 あたしが愛用してるのと同じメーカーの靴だ。

 ハイキング程度の軽い登山にも町中でのウォーキングにも向いてるタイプのハーフブーツ。

 そして……隠すつもりもないほどの邪気を放ち……あれ?

 さっきから……ある違和感を感じていた。

 それが確信に変った。

 雑居ビルに開いた「異界への入口」と……動画配信者達が変貌した擬似ゾンビ。

 その2つの「邪気」のタイプが違う。

 こいつは擬似ゾンビと同じタイプの邪気だ。

 そして……そいつは……。

 フードを下す。

「……お……鬼?」

 短い……けど……それは……確かに「角」と言えるモノだ。

 でも……ありがちなファンタジーもののラノベの「魔族」なんかの頭に生えてるヤツとは違う。ああ……あの手の角は……やっぱり人間が考えてデザインしたものだ。

 出鱈目な場所から……出鱈目な方向に何本も……。明らかに皮膚を突き破り生えてる。その角の周囲の皮膚や肉は……化膿……腐敗……。

 顔色は……クソ悪い。髪や眉毛は……嫌な感じだ……半端に生え残ってる。ほとんどが禿なのに、頭の何箇所かに妙に長い髪。

 目は……白目の部分が明らかに変な色。でも、目の焦点は合ってるようだ。

「あああ……」

 そいつは口を開き……。

 乱杭歯って言やいいのか?

 何本も抜けたり折れたりしてる歯。残った歯は普通より伸びてるが……どれ位伸びてるかは歯によって違う上に……虫歯か?……妙なドス黒い色に変色してる穴っぽいモノがいくつも。

『映像から種類は判るか?』

 相棒が後方支援チームに連絡するが……。

『知っての通り、鬼っってのは……雷撃を操る青鬼と冷気を操る赤鬼を除いて、似たような外見の変身能力者や妖怪系(古代種族)を雑にまとめて「鬼」って呼んでるだけ。事実上、ほぼ一人一系統。鬼っぽい姿ってだけの情報じゃ能力や長所・弱点なんかは判らない』

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