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--- オワリ ---


 ポピーも部屋から去り、ようやく一人になった俺がうつらうつらと夢に入りかけたとき、突如、額を何かブラシのようなもので叩かれた。

 うっすらと目を開けると、そこには、見慣れた悪魔の姿があった。

「……ロノウェ」

「もぉ 酷いですねぇ 僕のことぉ 忘れてたでしょお?」

 複雑な文様を全身に刻んだ真っ白な毛並みのサルは、歯をむき出しにして威嚇するようにキキっと啼いた。

「すまない」

 先ほどの衝撃は、ロノウェが長い尻尾で額をはたいたせいだろう。

「ホントに もぉ 結界の中に籠ってさぁ 何してたのか 知りませんけどぉ」

 ああ、そうか。

 俺がずっと軍神アレスの結界の中にいた所為で、ロノウェは俺のもとに戻ってこられなかったのだ。

 結界に入れず、周囲をうろつく小さなサルの姿を想像すると、どこか滑稽で、自然に笑えた。

「それは本当にすまない事をした」

「もぉ あり得ないんですけどぉ そんなこと言ってたら 僕 伝言忘れちゃうかもぉ」

「伝言?」

「アイツだよぉ 黄金獅子の末裔からぁ アナタに伝言」

 黄金獅子の末裔。

 悪魔たちがそう呼ぶ存在は一つしかない。

 一気に目が覚めた。

「ラック」

「そぉ そいつ 僕の契約者でもない癖に 僕のこと使いやがってぇ」

 ぶつぶつと文句を言うロノウェ。

「しかもぉ アイツ 僕の尻尾引っ張って」

「ロノウェ」

 間延びした口調がいつもにもましてまどろっこしかった。

「あいつはなんて言ってた?」

「ちょっとぉ 僕の話なんて どぉでもいいわけぇ?」

 ロノウェは不満げに尾をぴんと立てた。

 そして、小さなサルは、大きくため息をつくと、たった一言、こう言った。

「『死なないで』」

 それは紛れもなくあいつの言葉で、俺が伝えたメッセージへの答えだった。


――必ず、生きてリュケイオンで会おう。


 ただそれだけを頼りに。

「ラックは今何処にいる?」

「知りませんよぉ 僕が会ったのは セフィロト国 だったけどぉ」

「……そうか」

 自分が結界に籠っていた時間がいったいどれほどのものなのか見当もつかない。

 まだあいつはセフィロト国にいるのか、それとも、リュケイオンに入ったのか。

「僕 もぉ 帰りますよぉ? こんな 面倒な用事はぁ もぉ やめてくださいね」

「ああ、ありがとう、ロノウェ」

 ふっとかき消えるようにロノウェの姿が消失した。

 はやる感情を抑え、再び目を閉じる。

 ここはリュケイオン。あれほど焦がれた大地だというのに、共に在るべき伴侶の姿がない。

 いま、あいつはいったい何処にいるのだろう。

 会いたい。

 今すぐに会って抱きしめてやりたい。

 きっとまた、あいつは一人で泣いているに違いないから。


 今すぐに会いに行きたい感情と、マルコシアスの片割れを知ってしまった迷い、そして魔界存続の可能性を知った今、いったいどんな顔をしてあいつに会えばいいのか分からなかった。

 俺とあいつの魂の一端を握るのは、対になる存在――マルコシアスとグラシャ・ラボラス。

 きっとこの先に避けようもない未来が待っている。


 俺は、俺だけはお前の傍からいなくなったりしない。ずっとここにいる。忘れもしないし、死んだりもしない。隣にいて、一番に助けてやる。もし、お前が嫌がったとしても放さない――何度も繰り返した誓いを、俺はまた破ってしまった。

 あいつはまた、いつかのように「うそつき」と俺を責めるのだろうか。




 それでも、すべてを振り切って、あいつの傍に行きたかった。


 例えばこの先もっと恐ろしい出来事が多く待ち構えていたとしても――





ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

少々短いですが、第12章はここでおしまいです。



再会は、「ASCENDANT PRELUDE -tail-」に持ち越し。



ブログ(http://lostcoin.blog.shinobi.jp/)でこっそりやってたキャラの人気投票は、大差をつけてアレイが一位でした。

びっくり。


軍神アレスの話もミリアとポピーの話も、アーディンの話も次章に持ち越し。

相変わらず、人数が増えて自分でも把握できな(ry




次章「ASCENDANT PRELUDE」をいつ頃はじめるかはまだ決まっていませんが、今年中にheadかtailかどっちかかたっぽくらいはやっつけたいと思います。



ではでは、また次章でお会いしましょうノシ



2010.10.4 早村友裕

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シリーズまとめページはコチラ
登場人物紹介ページ・悪魔図鑑もあります。
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