2 ジーク視点 やっぱり白がいい
休暇に入る前のことだった。
「白か……。それとも、たまには黒……」
「ジーク?」
うーんと唸る僕を、不思議そうな顔をしたアイナが覗き込む。
僕はそんな彼女を上から下まで見て……
「白、だな……」
と勝手に決めた。
黒もたまにはいいかなと思ったけど、彼女にはやっぱり白や水色が似合う。
「な、何が……?」
「今度の休暇の時、君に着てもらう水着の色」
「白好きだね……。去年もじゃなかった?」
「アイナ。男はね、好きな子に白を着せたがるものなんだよ」
「男性の総意みたいな言い方して……。大人っぽい色がいいって人もいるんじゃない?」
「僕は白がいい」
「そう……」
アイナはすっかり諦めた様子だ。
嫌だとは言われなかったため、自分の意見が通ったものとして受け止めた。
時間を見つけて業者と話し合い、アイナのよさを引き出す白い水着を作り上げた。
話し合いの場にはアイナもいたけれど、意見を口にしたのは僕ばかりだった。
***
そして、時は今に戻る。
別荘に着いた僕たちは、料理人が用意した昼食を食べ、少し休んでから海に出ることにした。
僕らしか入れない場所だから、アイナの水着姿を他の男に見られることはない。絡まれたりすることもなく安心だ。
「着替え、手伝おうか?」
着替えのために二階へ向かう彼女にちょっかいをかける。
心底呆れたような声で、
「……バカ」
と返ってきた。
手厳しいなあ、と肩をすくめてみたけれど、アイナは僕の相手なんてしてくれない。
すたすたと二階へ上がるアイナと、一階に残された僕。
僕は一人ふっと笑い、カーテンを閉めてから水着に着替えた。
自分の水着はなんでもよかった。せっかくなら奥様とお揃い感を出してみては、と言われたから、僕のものにも白を取り入れてみた。
上半身裸になるとアイナが恥ずかしがるため、上にはシャツを着用する。
元々軽装だったこともあり、着替えはすぐに終わった。
まだ着替え中であろうアイナの様子を見に行くかどうか迷い、スケベと怒られることを考えてやめた。
少し経つと、階段を降りる音が聞こえてくる。
そちらに視線をやれば、恥じらうアイナの姿が見えた。
「ど、どうかな……? って、一度見てるか」
胸元にはリボン。彼女の可愛らしさを引き立たたせている。
白いビキニではあるものの、下半身には布を巻き、肌の露出を抑えてあるから上品に見える。
大きな胸と、細い腰。それより下はひらひらと揺れる布に隠されており、シルエットも綺麗だ。
我ながらいい仕事をした。
「アイナ。すごくいい」
「そう……」
一言に凝縮された僕の感想に、アイナはなんとも言えない顔をした。
旦那のスケベ心を感じ取って呆れているんだろう。
そんなのいつものことだ。僕は構わずアイナに近づき、彼女の手を取った。
「じゃあ、行こうか」
「うん」
窓からウッドデッキへ出て、庭へ。その先には、白い砂浜と青い海がある。
ビーチパラソルの設置等、事前の準備はしてもらったから、僕らがやることは特にない。
これから僕らは、海で水のかけあいっこをしたり、ボール遊びをしたり、のんびり夕焼けを見たりするのだ。
「ところでだけど、それ、紐だよね。紐が解けるハプニングとか……」
「ありません」
浮かれて調子に乗る僕に、きっぱりと言い放つアイナ。
本当に紐が解けないのか、ハプニングが起こるのか。それは、これからわかることだ。




