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【本編完結】私の居場所はあなたのそばでした 〜悩める転生令嬢は、一途な婚約者にもう一度恋をする〜  作者: はづも
結婚後 夫婦の日常編

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2 ジーク視点 本当は君もモテてるんだけどね という話

 妻、アイナ・ラティウス・シュナイフォードは僕と同じく23歳。

 長く美しい金の髪に、澄んだ空のような瞳。

 10代の頃と顔つきはあまり変わらず、やや童顔。

 美人というよりは可愛い系統。

 身長は、この国の女性としては少し低め。

 胸は服を着込んでいてもわかるほどに大きい。

 そんな彼女を男が放っておくわけもなく。

 けれど、放っておかない男筆頭が僕だから、他の人はアイナに何もできずにいる。


 夜会になんて行けば、アイナを盗み見る男はいくらでもいる。

 小柄で可愛らしく、優しくて頑張り屋で。おまけに胸が豊かな女性がいたら、気になってしまうだろう。

 僕も男だ。気持ちはわかる。

 わかるというだけで、アイナに近づかせる気はなかった。


「アイナ。少しの間、ここから動かないで待っててくれるかな?」

「へ? うん」


 これは、ある夜会でのやりとりだ。

 何も気が付いていないアイナを残し、僕の妻を盗み見ていた男たちのもとへ向かった。

 今回も、いやらしい視線をアイナに向ける男がいる。全く懲りないものだ。

 距離が近くなると、本人には聞かせたくない言葉も耳に入ってきた。

 正面から突撃。笑顔を作って牽制する。


「失礼。私の妻に何か?」

「ひっ……! い、いえ……」


 ひっ、とは失礼な。夫の登場に、男たちは素早く退散していった。

 追い払ったらすぐにアイナの元へ戻る。

 一人にしておくと、鼻の下を伸ばした男が寄ってくることがあるのだ。


「お待たせ、アイナ」

「なにか話してきたの?」

「うん、男同士の大事な話」

「そうなんだ……?」


 男同士であることを強調すれば、アイナはそれ以上追求してこない。

 僕はこんな風に、彼女が知らないところで他の男を散らしていた。この戦いはずっと前から頃から続いている。

 子供のころは僕が隣にいるだけでもよかった。

 成長し、アイナの魅力が増した今はそれだけでは足りない。

 次もそのまた次も、僕は男たちの駆除を続けるのだろう。



***



「ジークってモテるよね……」


 夫婦の部屋にて。

 ベッドに転がるアイナが深い溜息をつく。

 ワンピースの裾から覗く足が艶めかしい。彼女の動きに合わせ、たっぷりとした胸が柔らかく形を変える。

 こんな無防備な姿、他の男に見せられたものではない。


「急にどうしたんだい」

「ジークにきゃあきゃあ言う人、たくさんいるよね。妻の私が隣にいるのに……」

「あれは……見物してるだけじゃないかな?」

「顔のいい男を?」

「ま、まあ……」


 顔がいい自覚はあるから否定しにくい。

 アイナの言う通り、僕は女性に人気がある。けれど、舞台の演者や歌手に向けるような感情がほとんどで、本気で僕に恋焦がれているわけではない。

 それでもアイナとしては不満なようで、また溜息をつき、拗ねたように言う。


「私はジークにしかモテないのに」

「……他の男からも好かれたい?」

「んー……。そう聞かれると……そうでもない……。ジークが好きって言ってくれれば、それでいいや」

「アイナ……」


 可愛いことを言ってくれる。

 どうやら、彼女は本気で僕にしかモテないと思っているようだ。

 実はそんなことはないのだけど、本人が僕だけでいいと言っている。

 それならば、僕はこれからも、彼女の知らないところで男を追い払い続ける。


 ベッドへ向かい、横向きに寝転ぶアイナに覆いかぶさる。

 長い髪を一房取って口付けると、彼女はくすぐったそうに笑った。


「アイナ。他の誰でもない、君に見てもらえることが嬉しいんだ」

「ん……。私も」


 アイナがもぞもぞと動き、向きを変える。

 仰向けになった彼女は僕の首に腕を回し、ぐいと顔を引き寄せ、おでことおでこをくっつけた。


「うん、ジークだけでいいや。もうお腹いっぱい」

「お腹いっぱいなら、これ以上はいらない?」

「……まだいけます。やっぱり足りません」

「僕もまだまだ足りないんだ」

「欲張り」

「君もね」


 アイナとは幼い頃から一緒で、ずっと好きだった。

 こうして夫婦になった今でも、僕はいつだってアイナ不足だ。

 ただでさえ不足しているのに、他の男に分ける分はない。


 アイナ。

 本当は君もモテてるんだけど――君に注がれる視線を受け入れるほどの余裕は、僕にはない。


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