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【本編完結】私の居場所はあなたのそばでした 〜悩める転生令嬢は、一途な婚約者にもう一度恋をする〜  作者: はづも
結婚後 夫婦の日常編

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1 ジーク視点 妻が可愛いという話

ここからは結婚後のお話が始まります。

最初は1話完結の夫婦の日常編。


嫁の分の酒も引き受けるアルコール耐性ぶっ壊れジークと、あまりの強さに若干引いてる酒弱アイナ。

子供たちの交流会であるお茶会にて初恋泥棒しまくるジーク。

酔っ払いアイナと生殺しジークなどなど。


日常編の次はジークの夏季休暇を使って夫婦で旅行に行く章へ。

 23歳となり、ようやく一人前と認められた僕。アイナと結婚し、家も継いだ。

 父は今度こそ僕を当主とし、南の島へバカンスに向かった。

 しばらく楽しんだらこの国に戻ってくるけれど、今までの公務からは離れるそうだ。

 当主となった今、僕がこの家とアイナを守らなければいけな……。


「ジーク」


 ソファに腰掛けていた僕は、妻となったアイナの呼びかけに応え、上を向く。

 すると、むに、と頬を摘ままれ、好きなように伸ばされた。


「いひゃいよ……」


 彼女は僕の頰を伸ばすのが好きだった。

 意外とよく伸びるのが面白いそうだ。みよんみよんと引っ張られるため、ちょっと痛い。

 でも、そうしているときの彼女はとても楽しそうで。

 男の頬の何がいいのかわからなくとも、嫌だとは思わなかった。大好きな人が喜んでいるならそれでいいのだ。

 しばらく経つと、アイナは満足したらしく手を離した。

 頬をさする僕に、「痛かった?」と聞くアイナ。何故か自慢げだ。

 痛かったよ、と素直に返すと、彼女は「そっかあ」とくすくす笑う。

 我が家ではよくあるやりとりだ。


 立場のある人間となった今――まず男の頬を狙う人はそんなにいないと思うけれど――僕にこんなことができるのは、彼女だけだった。

 アイナも僕の立場をわかっているから、二人きりのときにしかしてこない。

 僕とアイナしか知らない、秘密の戯れだ。

 さて、今日はどう反撃しよう。

 こういったとき、僕は何かしら反撃をすることにしている。

 いたずらをする彼女が可愛くて、僕からも仕掛けたくなってしまうのだ。

 アイナも僕の「反撃」に期待しているように見える。そこまで含めての戯れなのだ。多分。

 少し考えて、今日の攻め方を決めた。


「アイナ」

「うん」

「君は昔から可愛いね。頑張り屋なところも、何かに夢中になりやすいところも。こうして僕にいたずらしてくるところも、可愛いよ」

「う……」


 アイナが頬を染める。いじられたばかりの僕のそれと、どちらが赤いだろう。

 僕がアイナを可愛く思っていることぐらい、本人もよく知っているはずだ。

 それでもストレートに言われるのには弱いようで。結婚した今でも初心な反応を返してくれる。


「こういう、なかなか慣れてくれないところもね」


 アイナの左手を取り、指輪をはめた薬指に口付けを。

 彼女の手に触れたままふっと微笑めば、アイナは「んんっ……」と悔しさ交じりの声を漏らした。


「負けました……」

「また僕の勝ちだね」

「私ももっといたずらの種類を増やそうかな……」

「それは楽しみだな」


 この発言も何度目だろう。増やすと言いつつ、彼女のいたずらは数種のままだった。

 学園卒業後に二人で別荘へ行ったとき、隣に座って欲しかった僕を無視して向かいに座る……といういたずらをされたことはある。

 僕がひどくショックを受けたからか、今はその手のことはしてこない。

 相手を傷つけず、苦痛も伴わないもの……となると、新しいやり方はなかなか思いつかないようだ。

 アイナは頭のいい女性だ。けれど、悪いことに関しては僕の方が上手だった。

 今度は何をしようと頭を悩ませる、ずっと前から好きだった人。優しい彼女は、この先もこんないたずらしかできないんだろう。


「次も僕の勝ちかな?」

「ジーク、意外と悪い男だよね……」

「そうかもね」

「私も悪い女になるんだから」

「期待してるよ」

「絶対期待されてない……」


 うん。全く期待していない。

 アイナ、君が悪い女になる日は来ないよ。

 僕は20年近く君を見続けているんだ。君に悪女は向いてない。

 そう言うと怒られそうだから、適当に笑顔を作ってみる。

 気に障ったのか、むすっとしたアイナに指でおでこを弾かれた。


「ひどいなあ」

「悪い女なので」

「今のが?」

「そう」


 力はほとんど込められていない、形だけのデコピン。今のがアイナの思う悪い女なんだろうか。

 王族という立場のせいか、世の中には僕を陥れようとする人も存在する。

 僕を個室へ連れ込んで既成事実を作ろうとした女性だって少なくない。ちなみに、全てきっちり回避している。

 そんな世界も知っているから、これぐらいで悪い女を名乗る姿が面白くて仕方ない。

 

「くっ……くくっ……」

「笑われた……」


 耐えきれず肩を震わせる僕。渋い顔のアイナ。

 アイナのそばは、本当に心地よい。

 あまりの愛らしさと安心感に笑いがとまらない。怒ったアイナがぽこぽこと僕の胸を叩くけど、やっぱり全然痛くない。

 ああもう、本当に、どうしようもないぐらい、


「可愛いなあ……」


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