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【本編完結】私の居場所はあなたのそばでした 〜悩める転生令嬢は、一途な婚約者にもう一度恋をする〜  作者: はづも
最終章 夫婦と、家族

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16 多分、賑やかな朝だった

「     」


 優しい声がする。

 心地良くて、あったかくて。このまま聞いていたくなる。

 ずっとずっと、これから先も。そばで聞かせて欲しい。


 私は、この声をよく知っている。


「ん……」


 ゆっくりと意識が浮上する。

 いつの間にか寝ていたみたいだ。

 そういえば、昨日はリーンくんとエーリカちゃんが泊まりに来て、同じベッドで寝ることになったんだった。

 二人はどうしてるかな。

 そんなことを考えながら瞼を持ち上げると、


「起きたみたいだね。おはよう、アイナ」

「おはようございます、アイナお姉ちゃん」


 よく似た色をした二人に、笑顔を向けられた。

 エーリカちゃんを膝に乗せ、足だけを布団に入れて座るジークベルト。

 新しい朝を迎えて、最初に目にした光景がこれだった。

 彼は絵本を開いている。読み聞かせをしていたようだ。

 二人とも寝間着のままだけど、髪なんかは整えた後に見える。

 身支度も軽く済ませてあって、すぐ隣で絵本の読み聞かせをしてるって、それなりに騒がしかったんじゃあ……。


「おはよう……。私、起きなかった……?」

「今の今まで起きなかったね」

「そ、そう……。リーンくんは?」

「リーンなら、少し前に自分の部屋に戻ったよ」

「そっか……」


 そういえば、18歳のときは寝ている間に指のサイズを確認されたんだった……。

 一度寝るとなかなか起きない自分に、なんともいえない気持ちになった。

 夜間に何かあったら、頑張って起こして助けて欲しい。



 朝食の後、庭に出てみんなで散歩をした。

 室内に戻るとリーンくんとジークベルトが二人で遊び始めたから、私はエーリカちゃんとお話をして過ごした。

 ジークベルトのどこが好きなのかを聞かれるなどして、これがガールズトークか……としみじみとしてしまった。

 その質問には、かっこよくて優しいところ、と答えておいた。……当たり障りのない回答だけど、嘘は言ってない。



 お昼も済ませて少し経った頃、二人のお迎えが来た。

 昼食後に帰すと話してあったそうだから、約束通りの動きだ。



「お世話になりました。ほら、エーリカも」

「お世話になりました! ……お兄ちゃん、お姉ちゃん、また泊まりに来てもいいですか?」

「っ……! もちろん、いつでも……」

「次は先に約束をしてから、だね」

「「はい……」」


 迎えの馬車の前にて。私とエーリカちゃんの声が、重なった。

 ジークベルトの言う通り、小さな子を急にお泊まりさせるのはあまりよくないから、次は先に約束を取り付けて……。

 って、そもそも、この人がおねだりに負けたからこうなったんじゃ……?

 何故か私が言い聞かされている風になってるような……。


「……?」


 解せない……。

 そんな気持ちを抱えながらも、夫婦並んで二人を見送った。

 どうして私が注意される流れに……とちょっとだけ思ったけど、屋敷に戻った彼が「急に悪かったね」と使用人へ。

 私にもしっかり謝ってきたから、そんなことはどうでもよくなった。

 そうだ。謝るといえば、私もやろうと思っていたことがあったんだ。


「あの、ジーク」

「なんだい?」

「えっと……。二人きり、に……なりたいんだけど……」


 そう言いながら、軽く彼の服の裾を引いてみる。

 屋敷内、つまりは自宅とはいえ、今は二人きりじゃないから、どうしても行動が制限されてしまう。

 私がやりたいことは、他の人がいる空間ではできないのだ。

 夫は一瞬真顔になり、それから、妙にきりっとして私の手を取った。


「なろう、今すぐに。今すぐ二人になろう」

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