♥ 目覚めたら知らない部屋に居た 3
茜梶 惠
「 転移…召喚…者……?? 」
セロロ
「 光の柱が現れると召喚儀式を行った≪ 国 ≫が光の柱へ聖職騎士団を向かわせて異界人を保護しに来るんだけど……、生憎と此処は場所も悪いし環境も悪くてね、人類の聖職騎士団は森の中へは入って来れないんだよ 」
茜梶 惠
「 ……怪物が出る…から? 」
セロロ
「 それも理由の1つだね。
この森の奥には魔素が噴き出している場所があってね、森の中には穢れた障気が漂っているんだよ。
この障気が曲者でね、フィールドで遭遇する怪物よりも凶悪で強い。
よって障気や魔素を浄化させる術を持たない人類は森の中へは入って来れないんだよ。
だから、森の中に光の柱が現れても聖職騎士団は異界人を保護しに来る事が出来ない 」
茜梶 惠
「 …………じゃ、じゃあ……8つの光の柱から転移召喚をされた人達は……どうなったの?? 」
セロロ
「 1つはメグム、君だよ。
メグムは運が良かったと言うべきかな。
メグムの倒れていた場所は風下だったから、怪物に襲われずに済んだ。
発見時のメグムは、泥だらけで衣類もあちこち破れて痛んでいたし、かすり傷や打ち傷も多くて怪我をしていたから、何かから必死に走って逃げていた可能性があるね。
足を滑らせて風下へ落下したのかな? 」
茜梶 惠
「 …………覚えて…ないです…何も…… 」
セロロ
「 無理して思い出す必要もないよ。
落ち着けば自然に思い出す事もあるからね 」
茜梶 惠
「 うん…。
ぼく以外の7名は見付かったんですか? 」
セロロ
「 3名は何とか保護する事は出来たけど、3名は手遅れだったね。
逃げた方角が悪かった所為かな。
3名は風上へ逃げたらしくてね、匂いを嗅ぎ付けた怪物に襲われた後だったよ。
死体…と言うべきか……怪物に喰い散らかされた無惨な骸を≪ 集落 ≫へ運んを埋葬したよ。
身に付けていた衣類の切れ端や遺品は保管してある。
保護の出来た3名も深傷を負っていてね、今は別の部屋で療養中だよ 」
茜梶 惠
「 …………3名も亡くなったんですか… 」
セロロ
「 メグムの怪我が完治して動けるようになったら、療養中の異界人と面会するといいよ。
彼等も話せない事はないからね 」
茜梶 惠
「 うん…。
…………助かった3名はどんな状態なの? 」
セロロ
「 メグムと同様に泥だらけで怪我をしていたね。
雨に打たれたそのままの状態だった事もあって衰弱もしていたし、疲れ果てた様子で体力も無かったね。
それでも五体満足な身体の者は居ないよ 」
茜梶 惠
「 えっ……どういう事で──なの?! 」
セロロ
「 森の中には大きな怪物だけじゃなくて、小さな怪物も居るからね。
外見に騙されて捕獲しようとして下手に近付くと逆に餌にされ兼ねないんだよ。
異界人は何も分からない,知らない状況で森の中をさ迷う事になるからね、片脚や片腕を失っている状態で保護したよ。
1人は両脚と片腕を無くして、立ち上がれない状態だね 」
茜梶 惠
「 …………じゃあ…五体満足な身体なのはぼくだけ──なんだ…… 」
セロロ
「 そうだね。
もう数時間発見が遅ければ、メグムは死んでいたよ。
風下だからと言って必ずしも安全ではないからね。
怪物にも襲われていた可能性は十分にあるよ 」
茜梶 惠
「 ………………うぅぅぅ… 」
セロロ
「 実際には命拾いして生きているのだから安心しなさい。
≪ 集落 ≫は結界の中にあるから怪物に襲われる事もなくて安全だからね 」
茜梶 惠
「 ……うん…… 」
セロロ
「 食欲があるなら食べれる物を用意させるけど、どうかな?
食べれそうかな? 」
茜梶 惠
「 …………そういえば……お腹が空いてるかも… 」
セロロ
「 消化の良いスープを用意させよう。
横になって待っていなさい 」
茜梶 惠
「 うん…有り難う…(////)」
セロロ
「 おやすみ、メグム 」
仰向けになったぼくに微笑んだセロロは、畳から腰を浮かせて立ち上がると部屋から出て行った。
白銀の雪景色みたいにキラキラと光る真っ白い長髪で長身のセロロには、白髪と同じ色の大きくて白い獣耳と白くてフサフサしている長い尻尾が生えていた。
セロロも人獣族なんだ…。
セロロは他の人獣族とは違って尻尾の数が10本もあった。
数えていたから間違いない。
セロロは狐の亜人……なのかな?
絶世の美貌っていうの??
声を聞かなかったら性別が分からないぐらい中性的な容姿をしている。
魂の契約……セロロの特別……生涯の番……生涯の伴侶……(////)
なんか……恥ずかしいっ!!
セロロがぼくのお兄さん…(////)
なんか……照れちゃうなぁ…たはは(////)
1度に色んな話を聞いたからかな……疲れちゃったよ…。
食事が運ばれて来るまで少しだけ寝ちゃおうかな…。
ぼくは両目を閉じて、鼻呼吸を始めた。
完治したらぼくと同じ異界人に会って話をしたいな……。