♥ 目覚めたら知らない部屋に居た 1
目が覚めた少年の両耳には、パタパタと複数の足音が聞こえていた。
見慣れない天井から視線を泳がせてみると、獣耳と尻尾を生やした人間の姿がチラホラ見えた。
沢山居るみたいだ。
皆、誰もが忙しそうにパタパタと動き回っている。
“ 天井が見える ” という事は、どうやら少年は仰向けの状態で眠っていたようだった。
少年は試しにモゾモゾと身体を動かしてみた。
身体はちゃんと動いてくれるようだ。
何故自分が見慣れない見ず知らずの場所で眠っていたのか、少年には全く以て分からない。
上半身を起こしてみると、見覚えのない着物を着せられていて身体には包帯が巻かれている。
どうやら和服のようで、温泉宿で着る定番の浴衣と似ていると少年は思った。
丁寧に包帯が巻かれているという事は、怪我でもしていたのだろうか…。
一体何をして自分は怪我を負ったのだろうか…。
何も思い出せない。
まるで頭の中に靄が掛かっているみたいだった。
足音が近付いて来る音がした。
若い女の子が両手で桶を1つ持っていて、粗末でシンプルな飾りっ気のない部屋へ入って来たみたいだ。
少年が寝かされていた布団の横に座った女の子からも獣耳が生えていて、フサフサとした尻尾が生えている。
付け耳と付け尻尾を装着しているのは、何かの祭りの最中だからだろうか…。
可愛い女の子だ。
素朴そうで純情そうで未だ幼さの残るあどけない感じする優しそうな子だ。
自分がこんな分けも分からない状況じゃなくて、心に余裕でもあれば目の前の女の子に一目惚れぐらいはしていたかも知れない。
女の子
「 ㌻㍊㌫?
㌣㌦㌍?
㍗㍑㌶㌃㌧㌘㍍? 」
少年
「( は…?
言葉が分からない??
え…何を言ってるの?? )」
女の子
「 ㌢㌔㍉?
㌻㌫㌦㍗㌶㌧? 」
少年
「( うわぁ〜〜〜、全然知らない言葉だよぉ…。
何処の ≪ 国 ≫の言葉なのぉ…。
此処って≪ 日本 ≫じゃないのぉ??
うぅぅ〜〜…何でぼくはこんな所に居るのぉ〜〜〜?? )」
ぼくは自由に動く両手で頭に生えている髪をくしゃくしゃに掻きまくった。
女の子
「 ㍍㌔㍊㌦?
㍗㌶㌧㍍㌔㍉? 」
女の子は懲りずに話し掛けてくれるけれど────。
ぼく
「 ………………。
だから、分からないんだってばぁ!! 」
ぼくは思わず、何語を話しているのか全く分からない目の前の女の子に声を荒げてしまった。
だってだってだってだって──、明らかに日本語じゃないし、全く知らない言葉なんだもん!!
話し掛けられても何て答えて良いのかすら分からないんだよ!!
ぼくはどうしたらいいのさぁ!!
ぼくが「 うぅ゛ぅ゛〜〜 」と唸りながら考え込んでいると、女の子は立ち上がって部屋を出て行ってしまった。
桶も持って行っちゃった…。
あの女の子は何しに来たんだろう…。
もう1度、部屋の中を見回してみる事にした。
あまり広くはない部屋みたいだ。
部屋の中を隅々まで見ていると足音が近付いて来る。
パタパタと小走りの足音と、ゆったりとした静かな足音だ。
さっきの女の子が戻って来たのかな?
確かめる為に目を向けて見てみると、やっぱりさっきの女の子だった。
女の子の背後には背の高い誰かが立っていた。
誰だろう??
?
「 ワタシが介抱するから下がりなさい 」
女の子
「 ㌘㌢㌍㌦ 」
見知らぬ人物から声を掛けられた女の子はペコリと御辞儀をするとパタパタと駆け足で何処かへ行ってしまった。
この背の高い人は誰だろう??
それにしても、この人さっき日本語を話してなかった?!
ぼくの聞き違いじゃなければ、確かに日本語だった!!
ぼく
「 あの── 」
?
「 うん?
目が覚めてくれて安心した。
気分は…どうかな?
気持ち悪かったりしないかい?
身体は痛んだりしてないかい?
異常があるなら教えてほしい。
治療するからね 」
ぼく
「 日本語だ… 」
?
「 うん?
日本語…かい? 」
声からして男の人…だと思う。
聞き慣れない言葉なのか首を横に傾げて笑みを浮かべている。
──っ、ちょっぴりドキっとした(////)
だって仕草が何か可愛いんだもん!!
ぼく
「 あっ、あの……ぼくっ── 」
「 御礼を言わないとだ! 」って思った。
どんな経緯なのかは分からないけど、手当てをしてもらっているわけだから、御礼を……。
男の人?
「 あぁ……君の暮らしていた世界の言葉の事だね。
ふぅん…君にはワタシの言葉が “ 日本語 ” とやらで聞こえているのか。
半信半疑だったけれど、成功して良かった 」
ぼく
「 あ、あの…… 」
男の人
「 あぁ…すまないね。
自己紹介をしないといけなかったね。
ワタシの名前はセロロと言うよ。
この≪ 集落 ≫で暮らしている人獣族の相談役みたいな立場かな 」
ぼく
「 セロロ…さん? 」
セロロ
「 君は “ セロロ ” で良いよ。
ワタシの特別になったからね 」
ぼく
「 ……ぼくがセロロ…さんの特別?? 」
セロロ
「 君を発見したのは森の中でね、君は怪我を負った状態で気を失っていたんだ。
着ていた衣類は泥だらけであちこち破れていたから、清潔な和服に着替えさせたよ。
君が着ていた衣類と履き物は、きちんと浄化してから保管しているから安心していいよ。
此処へ運んで、泥で汚れた身体を浄化して、傷の消毒して手当てをさせてもらったよ 」
ぼく
「 あ…有り難う…御座います…(////)
あの…浄化って……?? 」
セロロ
「 うん?
浄化は生活魔法の1つだよ。
浄化をすると貴重な水を使う必要なく、汚れた物を綺麗に出来る優れた便利魔法でね、とても重宝しているよ 」
ぼく
「 ま…ほう…魔法??
ま…魔法が使えるんですか?! 」
セロロ
「 当たり前に使えるよ。
君も魔法を使えるようになる 」
ぼく
「 ぼくも…ですか?
ぼくは1度も魔法を使った事が無いんですけど… 」
セロロ
「 問題ないよ。
危険な状態だった君を生かす為にワタシと魂の契約を交わしたからね。
素質が無くても魔法を使えるよ 」
ぼく
「 そしつ…?? 」




