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「それでね。私が自殺する理由をあなたにはなします」
そういって、また呼吸を整えたあと、香奈恵はゆっくりと口を開きはじめた。彼女の悲しそうな顔がより一層悲しくなった。
「細かいことをならべれば色々あるのは事実よ。でも最大の原因はマスターテープが見つからないの。テープが見つからないの。どうしても見つからないの。一生懸命探したけど駄目だった。
あのテープの内容が公開されたらと思うと・・・・・・私、たえたれないよ。それで私は死を選ぶ決断をしました。どうしても私たえたれないの。私アイドルになりたいの。だからあのテープの内容が公開されるくらいなら死んだほうがましなの。
ごめんね。翔。私、あなたとのピクニックに行く約束を、守れなかった。本当にごめんね」
香奈恵はゆっくりと深呼吸して呼吸を整えてあらためてしゃべりだす。
「翔。・・・・・・これだけは信じてほしい。けっしてあなたのせいではないということを。
それじゃいうね。
私は・・・・・・妊娠してるの。あの人の子ども。だから私あんな人の子どもなんて・・・・・・生みたくない」
いつのまにかそっとやさしくお腹をおさえていたのにとつぜんそのてをいきおいよくはなしその顔はきょうきに変貌した。
「・・・・・・それにね。私・・・・・・感じないの。あの人とじゃないと感じないの。・・・・・・辛い。辛いわ。それが 一番辛い・・・・・・。なんで他の人とは私。感じないんだろうって。自分で自分のことがやになるの。もうほんとにってやになるの」
悲しみの顔で香奈恵は続ける。
「あとね・・・・・・祖母の介護も、もう疲れてしまったしね」
香奈恵の目にはもはや涙なんてなかった。何かふっきれたようにもみてとれる。そして理路整然と続きを話し出す。
この時、いっしゅの男への殺意が芽生えるのを翔は感じ取った。思わず、両手に握りこぶしを作る。無意識だった。