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月夜譚 【No.1~No.100】

海辺のコンサート 【月夜譚No.95】

作者: 夏月七葉

 優しく空気を震わせる、透明で清らかな歌声は、アカペラでこそ美しい。余計な伴奏がないからこそ、彼女の声は映えるのだ。

 夕陽の沈みかけた、淡い朱に染まる海岸。穏やかな波を立たせる海原を背景に歌を紡ぐ彼女は、まるで陸に現れた人魚のようである。否、白いワンピースが潮風に広がる様は翼のようにも見えて、天使という表現も似合うだろう。

 元々透明度の高い声を持っていた彼女だが、この歌声を完成させるまでには様々な苦難があった。けれど、彼女は挫けることなく難題に向かい、時間はかかったが、ようやくこの歌声を手に入れた。

 だが、彼女はその声で表舞台に立つつもりはないという。一度メディアに取り上げられれば、瞬く間に時の人となるだろう。裕福な暮らしも夢ではないかもしれない。それでも、彼女はそれを望まない。

 この歌声を手に入れたのは、その為に頑張ってきたのは、そんなことがしたいからではないのだ。

 たった一人――今目の前にいるたった一人の大切な人の為に、この歌を聞かせたかった。それ以外に、理由などないのだから。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 目立ちたいためではなく、目の前にいる一人のために頑張って歌声を手に入れたという点が良かったです。 [一言] どんな人かは、この文章ではわかりませんが彼女の歌声を聞くことができる人は幸せ者で…
2020/06/29 18:40 退会済み
管理
[一言]  素敵です……!  そうまでして聞かせたかった歌とは。そこに込められた想いとは。そして……、相手は誰なのか。  想像が膨らみます!ありがとうございました!
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