表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アニマリア  作者: 山中走馬
3/40

プロローグ3

第3話 


 夕方近くになって会社に戻ったが、社内ではだれも俺が仕事をさぼったことを知らなければ、さぼっていたと疑うものもいなかった。


 ひとり暮らしのワンルームに帰ってもCD-ROMはカバンの中に入れっぱなしにしていたが、どうしてか意識はずっとカバンの中のCD-ROMに向かって途絶えることはなかった。

 テレビを見たりスマホを見たりして務めてあまり考えないようにしようとしてもだめだった。

 

 やがてあきらめてカバンの中からCD-ROMを取り出すと

「暇つぶしくらいにはなるさ。つまんなかったらすぐ辞めればいい」

 俺は誰かにいい訳でもするかのようにそう呟くと、ノートパソコンを開いてCD-ROMを挿入した。


 『アニマリア』


 画面にタイトルが表示された。

 

 つづいてこの文章が表示されたあと、下から世界観の説明文が流れてきた。



 それははるかはるかむかしの話。

 大地におおくの魔物が跋扈していた時代。

 高原に『太陽の子』と呼ばれることになる赤い髪の獅子の子が生まれた。

 獅子の子はやがて成長すると、それまで各種族がばらばらに暮らして争いの絶えることのなかった高原に平和をもたらさんと決意し、仲間を集めんと旗を掲げた。その旗のもとに駆け付けたのは、はるか神代に姿を消した幻獣たち。

 若き獅子は蘇りし十二の幻獣たちとともに魔物を討ち、諸部族を従えて初めて高原を統一し、国を建国することに成功した。この獅子王により建国されし国の名をアニマリアといった。


 それよりさらに時は流れ、獅子王の輝かしき御代は遠くなり、昇った太陽が再び沈むように、獅子王の血もいつしか途絶え、高原にふたたびいさかいの絶えない日々が続いたころ、突然、一匹の巨大な竜が姿を現した。 

 竜は王都の空に現れると、獅子王により建てられし王城を含む王都の壮麗な建物をことごとく焼き尽くした。

 けものびとたちは自らの国を守ろうと竜に戦いを挑んだが、いかなけものびとの強者どもも、嵐に抗うがごとく、津波に逆らうがごとく、なすすべもなく竜に倒された。

 家を焼かれ、故郷を失ったけものびとは散り散りになって高原を下った。

 だが、低地は人間たちの国であり、けものびとの居場所はなく、多くのものは殺され、さらに生き残った多くのものは奴隷となった。

 長い苦難の日々の続く中、それでもけものびとには一筋の希望があった。一つの預言がもたらされたからだ。


『天狐生まれるとき、太陽がふたたび昇るであろう、他の幻獣たちもまた蘇り、けものびとは再び高原に集うであろう』


 高原の北、けものびとの母なる山、アストロ山の星読みの塔にフクロウの羽を持つ神人が現れ、巫女にそう告げたとされる。

 この言葉だけを頼りに、この言葉だけを信じ、街の片隅に、森の奥に、洞窟の中にけものびとは息をひそめるようにして過ごしてきた。

 そして今、その預言が成就の時を迎えようとしていた......


 


 どうやらファンタジーもののゲームのようだ。世界観は思ったよりもしっかりしてそうだ。


 ゲームを始めますか

      ☞はい

       いいえ


 説明文が終わると選択画面が現れた。はいを選択する。


 名前を入力してください。

       [ フェイト ]


 名前を入力してくださいという割にはもうフェイトという名前が入力されている。何を押しても変更しない。プログラムのバグだろうか。個人で組んだものならそれくらいあるだろう。

 ENTERを押すと、これでいいかときいてくる。どうしようもないのでそのまま[ はい ]を選択する。


 種族を選択してください

       [ 天狐 ]


 これも同じだ。変わらない。ENTERを押す。



 天狐フェイト、誕生の時


 

 その一文が流れてから画面は真っ暗になった。

 しばらく待っても画面には何も表示されなかった。壊れているのか、もしかしてこのCD-ROM自体がウィルスだったとしたら、そんなことを考え始めたときに、画面の中央に小さな光る点を見た。

 真っ黒なモニターのドットがひとつ光っているようだった。

 モニターの故障だろうか。顔を少し近づけてみる。

 違う。何かが違う。ドットじゃない。何かこう、画面全体に奥行きがある。まるで窓から真っ暗な外を眺めるような。そこに小さな光が見えるような。

 俺はさらに顔を近づけた。

 すると光る点はさっきより少し大きくなったように見える。

 何なのか見極めようとじっと見続ける。

 光はどんどんと、それも加速度的に大きくなっていく。

 気が付いた時には画面全体が光に包まれた。と、次の瞬間、画面にたいして身体全体が引っ張られるのを感じた。

 おっ、と思って体を支えようと手を前のほうに出した。その手がモニターに触れようとした瞬間、空をきったようにしてその手はモニターに吸い込まれた。

 あっ、と声を出すまもなく、体全体がモニターの中に転落するように吸い込まれてしまった。

 俺は光のなかをどこまでも落ちていった。そして落下する中でいつしか意識を失っていた...

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ