第3話 大輔
あきらが、馴染みのゲイバーへ行きたいと言うので、まずそこへ行くことにした。
店に入ると、不謹慎、極まりない男たちが、ワラワラといた。
「あら、髭が青いのよ。」
と言いながら、スパンコールのミニスカを身につけた、0脚のゲイボーイがやって来た。
突然、あきらは、そのゲイボーイに、抱きついて泣いた。
「お願い、許して、ごめんなさい。」
「あら、いいのよ。忘れちゃったわ。」
青い髭を、さすりながら、桜にウインクした。
あきらは、ほっとした様子で涙を拭いた。
ショーが始まり、桜は美しいゲイボーイ達が、踊る華麗な舞に、うっとりとした。
「あなたは、踊らないの?」
青髭のゲイボーイをからかう。
「いやーだー。私は夜の蝶じゃないのよ。夜の蛾なのよ。」
あははーと、低い声で笑った。
あきらは、そのやりとりを微笑んで見ていた。
事情は分からないけれど、これでいいのだ。
ゲイバーを後にし、
大輔のクラブへ向かう。
桜は、胸がドクンドクンと高鳴った。
もう、会えないと思っていた。
店の厚いドアを開けると、曲に合わせ床が、揺れていた。人混みをかき分け、奥のブースに進む。
ニット帽に、だぼだぼのジーンズ、赤いTシャツを着た男が、レコードを見ていた。
「大輔さん。」
しばらくして
「桜!」
大輔が、桜を抱き締めた。
ブースの周りで、腰を揺らしていた女達の動きが止まった。
大輔と桜は、抱き合いながら、キスをしていた。周りの目など、忘れてしまったかのように。
大輔のファンたちは、さぞかし悔しかっただろう。
桜は嬉しかった。大輔、大輔。
忘れたことなど一度もなかった。いつも、思っていた。
違う男と付き合う度に、一生会えないと胸がキリキリした。
「なあ、ちょっと静かな所へ行こうか。」
大輔と桜は、片手に酒、片手に煙草で曲にのる客達をすり抜け、外に出た。
手を繋ぎ、バーへ向かう。
夢のようだ、桜はふわふわしていた。
近くのバーのボックスに座る。
せきを切った様に、大輔が話し始めた。




