4 いざ出陣
時は過ぎ夕刻に。食堂からは魚を焼いているか香ばしい匂いが漂っている。
それではライくんの部屋へ出陣いたしましょう。
ところ変わってライくんの部屋。
ライくんの部屋に入ったはいいけど、さて、どうやって起こそうか。いまのライくんは本当に幸せそうに寝ており、起こすのが可哀想なくらいだ。
ベッドにしゃがんでライくんの顔を眺めていると、ライくんが目を開けた。ベッドから起き上がりまだ眠いのか目をこすっている。まだボーっとしているようだ。
「ライくん、そろそろ夕食の時間ですよ。」
その声で私を認識したのか、しっかりと私と目を合わせてくる。何か言いたそうに私のことを伺っている様子だった。
さあ、ミーティア・ラーダ。初挨拶で失敗した分はここで挽回しなくては!1度目を閉じそう心の中で唱えてから喋り出した。
「いきなり私が倒れてびっくりしたでしょう。ごめんなさいね。ライくん自己紹介してくれてありがとう。改めて、よろしくね。家族3人仲良く暮らしましょうね。」
もちろん、とびっきりの優しい笑顔を添えて。
「…もう大丈夫なの?」
鈴の音のような心地よい声が私の耳に届く。かわいいお顔に恥じない声ですこと。
「ええ、もうすっかり元気よ。」
そう言うと、ライ君はベッドを出て机の引き出しから何かを取り出すと私に差し出した。これは石だろうか。紫色の光沢のある石で反射によって見える色が変わって見える。
「これ、お守り。…あなたに僕のあげる。」
深呼吸をしよう、ミーティア。ライ君が可愛いのは知っていたではないか。可愛いだけでなく性格も優しいとか…。だめだ、ここでまた鼻血を出して気絶してはいけない。深呼吸だミーティア。
「…ありがとう。大切にするわね。」
そして、姿勢を正してこちらを見つめた時に。
「これからよろしくお願いします、ミーティアさん。」
と改めて挨拶をしてくれた。でも、私はたまらず言ってしまった。
「ねえ、ミーティアなんて呼ばないで頂戴。」
二人の間に沈黙が走る。ライが謝罪しようと言葉を発しようとした瞬間、
「お母さまと呼んで、ライ君!!!!!!!」
この時の私の目は輝いていたと思う。いや確実に輝いていただろう。
最初は驚いた顔をしたライ君だったが、すぐに「はい、お母さま」と返事をしてくれた。うん、すごくかわいいです。そして、今までの話を聞いていたのか旦那様も部屋に入ってきて旦那様に二人とも抱きしめられた。ライ君が痛いと言っていたけどとても嬉しそうだった。私もなんだかうれしかった。
ライ君を真ん中にして一緒に食堂へと歩いて行った。
この時は、これからどんどん仲良くなっていけると信じていた。暗雲が立ち込めていることに気づかずに。