2 対面
前世の記憶を思い出した私は自室で一人、ベッドに腰をかけて考えていた。
無論、これからどうするかである。
あ、すぐ離婚してみる?そうすればこのゲームからは逃げ出せる可能性が高い。バッドエンドも回避できる。だがしかし、そうなると私は帰る場所が無い。伯爵令嬢である私がバツイチの旦那様と再婚したのには理由がある。
ズバリ性格である。きつすぎて貰い手がつかなかったのがこの私である。離縁したからといって実家に私の居場所があるようには思えない。
そんな時に浮上したのが今の旦那様。旦那様もバツイチになっていたから貰い手に困っていたみたい。バツイチになった理由は前の奥さんが産後の肥立ちが悪く命を落としてしまったらしい。まだ結婚して三年ほどだったと記憶しているわ。バツイチとなるとどうしても再婚は難しくなる。子供がいるとなおさらね。でも、家のメンツのためには奥さんが必要だったって訳。奥さんをなくして2年しないうちに再婚させられたんだから旦那様はどんなお気持ちだったのかしらね。
まあ、家柄も同じ伯爵同士ってことで私が再婚相手に選ばれたのよね。両者の家の思惑が一致した、所謂政略結婚というものよね。
話が逸れてしまったけど、ひとまず離婚はやめておこう。離婚後が大変だわ。
となると仲良く家族生活を送ることが重要かしら?
私は突然ミーティアに成り代わったわけじゃないなら、それまでの記憶はしっかりとある。自分でしてたことだけどなかなかの性格だと思うわ。
そう言えば、「なんで私と婚約なさらないのっ!!!!」って婚約者持ちの方に叫んでたわ。掴みかかろうとして止められたわ。…こりゃダメだわ。貰い手が付かなくて当たり前だったわ…。
だけど今はゲームのミーティアというより、前世の私の記憶が混じったミーティアになっている。ライとうまく関係を作って投獄エンドを回避しなくっちゃ。
取り敢えず、いじめない。いじめ、絶対ダメ。
そんなことを考えていると、部屋をノックする音が聞こえた。
「ミーティア、話があるんだが少しいいだろうか」
その声に、ゴクリと唾を飲み込んだ。
大きく深呼吸してから扉を開ける。
「はい、なんでしょうか旦那様。」
「君にまだちゃんと息子のことを紹介出来ていないと思ってね。ライ、お前の母となる人だ。ほら自己紹介しなさい。」
旦那様の後ろに隠れていたが、ひょこっと顔を出してこちらを見つめてくる。二重のぱっちりした目、女にも負けない長い睫毛。
「ライ・ラーダです…。」
恥ずかしかったのか、だんだんと声が小さくなっていく。言い終わるとまた旦那様の後ろに隠れてしまった。…一つ言わせてほしい。
なんだこの可愛い生き物は。
めっっっちゃ、可愛いです。ライくん。ええ、流石未来の攻略対象ですね。ゲームのミーティアがライくんいじめてたのは、可愛すぎて嫉妬したんでしょうね。きっと、いや間違いなく。
ぐるぐる考えている間も、たまに旦那様の後ろから顔を覗かせている。もう一度言わせていただきたい。
なんだこの可愛い生き物は。
「すまないね、人見知りでねこの子は。」
「いいえ、大変可愛いらしい子ですね。私はミーティア・ラーダ。これからよろしくね。」
そう言うと、ライくんは小さくはにかんだ。背景に花が見えるほど可愛かった。
鼻血が出るかと思いました。
不思議なことにこの後の記憶がございませんの。
お読みいただきありがとうございました!
3話目は明日の更新予定です。