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25話 ご主人様は女子高生?

 夜の森は昼間とは打って変わり不気味に変化していた。


 風で騒めく草木、暗闇から聴こえる虫の音、遠くから聞こえてくる獣の鳴き声。


 どれも東京では経験出来ない自然の音だった。


 ジンは森の中で野宿をしていた。

 野宿とは言っても、森の中では休める場所が無いので、暗黒物質ダークマターで即席のテントを創って、寝床を確保していた。


 テントの中では、ハルカがスヤスヤと寝息を立てている。

 余程疲れたのだろう、ハルカは無防備にお腹を出して寝ていた。

 無理もない。

 10代の女の子には、今日1日で体験した事は余りに重過ぎた。

 寝れば多少は気持ちも落ち着くだろう。


 ジンは、テントの前で見張りをしながら、溜息を吐いた。

 当然だが、今日の出来事はジンにとってもかなりの負荷が掛かっていた。

 知らない世界、慣れない闘いの連続、人の死、痛み、恐怖、怒り・・・ジンの心は既に満身創痍だ。

 普通なら、ハルカと同じ様に疲れてぐっすり寝る所だ。

 だが、ジンは眠らない。

 知らない森だから見張りがいるって言うのも理由の1つではあるが・・・眠れないってのが、大きな要因だった。


 身体が睡眠を必要としていないんだ。


 闘いの後、ジンは幾つかの身体の異変に気付いていた。


 ジンの身体は、眠りや食事を必要とせず、疲労や痛覚や味覚も感じなくなっていた。

 心なしか、感情の起伏も小さくなっている気がする。


「いよいよ化物になって来た感じだな。」


(あんな無茶な戦い方をすれば当然だ。)


「クロ・・・まだ居たのか。」


(当たり前だ。)


「俺の身体はどうなっているんだ?」


(知りたければ、我を手に取って見てみるがよい。)


 ジンはハルカの枕元に置いてある黒の魔道書へ視線を向けた。


(1つ言っておくが、我を手にしても、一度ハルカに渡った所有権は戻らないからな。所有者が渡すと意思表示しなければ本の所有権は移らない。)


「なるほで、それは骨が折れそうだな。」


 ジンは、黒の魔道書を手にすると、開いて中を見る。


「おい、この人間性が1%ってのはなんだ?」


(人間性とは、ジンと言う存在がどれだけ残っているかを示す指標だ。)


「俺の存在・・・1%ってほぼ無いじゃんか!」


(当たり前だ。ジンの身体は全て消滅したのだからな。今残っているのはジンの魂だけだ。)


「魂だけ?じゃあこの身体はなんだ!?」


 ジンは自分の身体を見て確かに肉体がある事を確認する。

 今は、暗黒物質ダークマターで創造した黒い服を着ているが、確かに身体は在る。


(今、ジンの身体は全て暗黒物質ダークマターで構成している。生身の肉体は残っていない。)


「はぁ?だけど、自分の身体みたいに感じるぞ?」


暗黒物質ダークマターが肉体を再現しているから当然だ。生活に支障が無いように感覚や視覚を再現している。だが、味覚や痛覚と言った不要な機能は再現されていない。)


「待て待て待て!痛覚は置いても、味覚は必要だろ!何勝手に要らないって見限ってるんだよ!これじゃあコーラ飲んでもあの喉越しやシュワシュワが味わえないじゃないか!」


(そんな事を我に言われても仕方ない。まあ、ジンの身体は暗黒物質ダークマターで出来ているのだから、暗黒物質ダークマターのレベルを上げれば、肉体を取り戻す事も感覚を再現する事も可能になるだろう。)


「つまり、暫くはこのままって事か・・・仕方ないな。」


(ジンが無茶な戦い方をしたのがいけないのだ。生身の肉体が50%以上残っていれば、自然治癒を通して人間性を回復する事も出来たのだが、ここまで人間性が下がってしまったら自然には治らん。)


「あーあー悪かったよ。死なないと思って無茶した俺が悪い・・・それで、この魔道書の主人グリモア・マスターってのはなんだ?こんなの聞いてないし、俺が読んだ時は書いてなかったぞ?」


(黒の魔道書は、髄時、必要に応じて内容を更新して行くのだ。いや、我もこんな早く誰かに黒の魔道書を預けるとは思ってもいなくてな。正直、驚いている。)


「驚いているじゃねーよ!どうするんだよ!?俺は本当にこの子に逆らえないのか?」


(そうなるな。ハルカがジンに我の所有権を返すと言うまではジンはハルカの下僕だ。)


「下僕って、具体的にどうなるんだ?」


(うむ、魔道書の主人グリモア・マスターの命令は絶対であり、逆らう事は出来ない。そして、魔道書の主人グリモア・マスターに危害を与える事も不可能となる。魔道書の主人グリモア・マスターは黒の魔道書に関わる全ての権利を有する存在となる。だが、精神的な部分までは干渉はされないので安心するが良い。あくまでジンの身体と能力に対して絶対的な支配力を有するのだ。)


「なるほど・・・まさに下僕だな。まあ仕方ないな。」


(それだけか?後悔は無いのか?)


「まあ、自分の蒔いた種だしな。どうせハルカみたいな子供をこんな場所に1人で放って置くわけにも行かなかったし、やる事は同じだ。」


(何だが、受け入れるのが早すぎて拍子抜けだな。)


「それに。」


(それに?)


「ご主人様が可愛い女子高生なら別に悪くは無いかなって。」


(あ、そう。)

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