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20話 痛み

 ジンの前に立ち塞がるのは漆黒の全身鎧フルプレートに身を包んだ黒騎士、両手剣を中段に構えるその姿に一切の隙は無く、まるで巨大な壁が聳え立つ様な威圧感だった。


 オークなんて比では無い圧倒的に格上の存在、それは黒騎士の纏う濃密な魔力のオーラを見れば明らかだった。


 最早、この場にジンが救うべき者達はいない。

 この戦いを続ける事に意味など無いのかも知れない。

 それでも、引くわけにはいかない。

 腹の底から込み上げるドス黒い感情が恐怖を塗り潰して行く。


 幸いこの不死身の肉体があれば死ぬ事はない。

 相手がどんな化け物でも、相打ち覚悟で攻撃を繰り返せば、勝機を見出せるはずだ。


 ジンは走りながら、大剣を脇構えに構える。

 大剣を思いっきり振り切れる様にと、ジンが無意識に取った構えだった。


 暗黒物質ダークマターで創造した武器に重さは無い。

 軽過ぎて、まるで発泡スチロールで出来たオモチャの剣を持っている様な妙な感覚に陥りそうになる程だ。


 だが、この大剣は本物であり、鋼鉄の強度を誇る。


 身の丈を超える大剣を小枝でも振る様に振り回す事が出来れば、それは相当な脅威だ。


 防御なんて考えない。

 全力で攻撃のみに集中するんだ。

 

 ジンは、ただ思いっきり大剣を横薙ぎに振るう。

 バットのフルスイングに近いフォームで身の丈程の巨大な大剣が風を切りながら黒騎士へと迫る。


 対する黒騎士は同じく巨大な両手剣を上段に構えると、ジンの攻撃に合わせる様に大剣を振り下ろした。


 ズバンッ!


 それは視認する事すら出来ない程の見事な一閃だった。

 凄まじい剣圧は大気を斬り裂き、周囲の黒煙を真っ二つに両断していた。

 そして、同じ様にジンの創造した暗黒物質ダークマターの大剣をも根元から真っ二つに両断する。


 綺麗な断面を残し、黒い刀身が宙を舞う。


「なっ!?」


 ジンは振り抜いた自分の大剣を見て驚愕する。

 剣を防がれるか弾かれるかする可能性は予想していたが、まさか剣を両断されるとは思っていなかった。

 黒騎士は既に次の攻撃の態勢に移行していた。

 腰を落とし、御返しと言わんばかりに、両手剣を脇構えにし、凄まじい殺気を放つ。


「クッ!」


 剣に込められた尋常じゃない魔力を見て、ジンは即座に大剣の刀身を修復し、中段に構えて防御の姿勢を取った。

 次の瞬間、黒騎士の一閃が横一文字に放たれた。


 暗黒物質ダークマターの大剣を両断出来る相手に防御は悪手。

 それは、頭では理解していた。

 しかし、黒騎士の殺気に、ジンは構えずにはいられなかった。

 例え、死なないとしても、痛みが無いわけでは無い。

 死ぬ程の攻撃を受ければ死と同等の痛みと恐怖が心にねっとりと粘り着く。


 黒騎士の両手剣が、ジンのガードの上から斬り込まれた。

 ジンの大剣をまるで紙切れの様に両断し、そのままジンの身体を斬り裂く。

 暗黒物質ダークマターで覆われた装甲も意味を成さず、両腕は肘から先を失い、胸から背骨までを一刀のもとに両断する。


 ジンの視界が斜めになり、ドサリと地面に転んだ。


「ぐあああああああああ!?」


 直後、まるで焼ける様な痛みで絶叫する。


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!!


 これまで感じた痛みが全て一気に押し寄せてきた様な痛み、凄まじい激痛で思考などする余裕も無い。

 脳が焼き切れそうになるのを、歯を食いしばってただ堪えるしか無い。


「・・・こんなものか。」


 黒騎士は上半身だけになったジンの前に立ち、見下ろす。


「グガアアア!!な、何だこの痛みは!?俺に何をしたんだ?」


 ジンは苦痛で地面をのた打ち回る。


「これは魔剣極限の苦痛エクストリーム・ペイン、刃が擦りでもすれば、そいつが今までに経験した苦痛を一度に蘇らせる呪いを持っている。」


 黒騎士は刀をジンの顔に突き付ける。


「苦しいか?だが安心しろ、死ねば苦痛から解放される・・・永遠にな。」


「へぇ、死ねばね・・・それは難しそうだな。」


 ジンの切り離された下半身と両腕の切り口から、黒い液体の様なモノが伸び、ジンの上半身とくっつく。

 切り離された肉体が互いに引き付け合い、身体を修復して行く。

 先程までの痛みも徐々に消えていった。


「イーヒッヒッヒッヒ!こりゃあ驚いたねぇ!その坊やは不死者インモータルかい!?」


 後ろで観戦していた魔女が興味を惹かれた様に前のめりになる。


「生憎と死ねない身体でね・・・だから、何度でも蘇ってお前達を殺してやる!」


 ジンは、右手に黒刀を創造する。

 先程までの大剣とは違い、細く長い日本刀だ。

 身体を覆う鎧もやめて、黒いパンツとロングコートへと変形させる。

 大剣ごと斬られるんなら、大きな剣も鎧も意味を成さない。

 動きやすい格好と小回りの効く武器で闘った方が戦いやすい。


「ほう・・・根性だけは認めてやるが、いつまで持つかな?死ねない事を後悔する事になるかも知れんぞ?」

 

 黒騎士は再び両手剣を構える。


「知るか!お前が死ぬまで戦い続けてやるだけだ!」

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