15話 不死者の戦い方
「て、敵襲だー!」
オークの1体が叫び、もう一体のオークが落ちている剣を拾おうと走る。
その対応の早さにジンは舌打ちするも、剣を拾ったオークでは無く、仲間を呼んだオークへと踏み込んだ。
数を減らす為には、先ずは倒しやすい敵から狙うべきだ。
暗黒物質の黒刀を斧の様に変形させて、振りかぶる。
一撃で倒せる様に殺傷能力を上げる為だ。
時間を掛けていたら直ぐに敵が集まって来てしまう。
武器を持たないオークは直ぐに背中を見せて建物の方へ逃げ出すが、既に勢いに乗ったジンの方が速かった。
隙だらけのオークの脳天へと容赦無く斧を振り下ろす。
「ギャアッ!?」
オークは頭から血を噴き出しながら、地面に倒れた。
即座にもう1体のオークへと向き直るが、オークは油断なく剣を構えて動こうとしない。
恐らく、向かって来ないのは時間を稼いで仲間が来るのを待つ為だろう。
そんな時間を与えてやるわけには行かない。
ジンは左手にも暗黒物質の斧を創造すると、真っ直ぐオークへと走り出した。
今のジンは不死身、防御や傷を気にする必要は無い。
肉を切らせて骨を断つ。
攻撃のみに意識を集中すれば良いのだ。
ドスッ
「ぐっ!?」
突如、ジンの胸に一本の矢が生える。
肺に穴が空き、痛みと息苦しさに苦悶の表情を作る。
ドスッドスッ
続けざまに二本の矢がジンの胸と右腿に刺さった。
屋上を見上げると、三体のオークが弓を引きながら、ジンに狙いを定めていた。
ジンは無造作に矢を掴むと力任せに引き抜いた。
「痛ッ!」
鏃が肉を抉り傷口が拡がる激痛を歯をくいしばって耐える。
矢を抜くと大量の出血で血塗れのシャツが更に赤く染まった。
だが、その傷も直ぐに塞がり、出血も止まる。
「何なんだおまえ!不死身か!?」
立ち上がるジンを見てオークは後ずさる。
だが、そこへドタドタと多数の足音が近づいて来た。
建物の角から現れたのは巡回をしていた5体のオーク達だ。
全員が武装をしており、仲間のオークの死体を見るや否や即座に臨戦態勢に入る。
「囲んで八つ裂きにしろ!」
オーク達は槍が3体と剣が3体だ。
槍兵は真っ直ぐ槍を構えて突進し、残りの3体は背後に回り込んで退路を塞ごうとする。
囲まれると厄介だ。
ジンは一番手前の槍兵に手斧を投げつける。
斧は回転しながら、正確に真ん中のオークの顔面に突き刺さった。
だが、残りの2体は怯むこと無く、そのまま突進する。
「ゴハァッ!」
グサリとジンの腹に2本の槍が突き刺さり貫通した。
だが、ジンは口から大量に吐血しながらも左手で槍を掴むと、自ら槍を更に深く突き刺し、敵のオークに近づく。
「な、何だこいつは!?」
オークは、驚愕していた。
まるで不気味なモノでも見る様な目でジンを見る。
最早、痛みは限界を越えており、ジンの脳は処理が追い付かず麻痺していた。
ジンは、右手に暗黒物質の刀を創造する。
刀身だけで1m以上ある黒刀を握ると、そのまま右側のオークに突き刺した。
無理に動いた為、腹に刺さった槍が捻れて、内臓が悲鳴を上げる。
あり得ないジンの生命力に、完全に油断していたオークは無防備で胸に刀を刺される。
「こ、この化物め!」
もう1体のオークは止めと言わんばかりに槍を更に深く押し込んだ。
続けて、背後から3体のオークがジンの背中に剣を突き立てる。
「まだ反撃して来るかも知れない!一旦離れろ!」
オーク達は武器を手放して、後ろに下がった。
ジンは全身から夥しい量の出血をしながらも倒れない。
「クッソ・・・キツイな。」
吐血しながらも、ジンは腹に刺さった槍を掴むと強引に引き抜いた。
内臓を引きずり出される様な激痛を感じるが、既に痛みは限界を超えていた。
気のせいか、段々痛みの感覚が薄くなっている気すらする。
通常なら、痛みで気絶してもおかしくは無い怪我だ。
気を抜いたら意識が飛びそうな限界ギリギリの精神の中で、ジンは全裸の少女へと視線を送る。
ギリギリと歯を食いしばり、怒りで意識を保つ。
「ここで倒れるわけにはいかねぇなぁ!」
それは人間と言う種としての怒りだった。
異種族の雄に同族の雌が陵辱されると言うのは種の存続に関わる事だ。
それは、なんとも言い表し難い遺伝子レベルの怒りだ。
「こいつ、まだ死なないのか!?」
「まさか、不死者か!」
「いや、アンデットかも知れん!」
オーク達が踏み込めないでいる内に、ジンは全ての刀を抜き、傷も完全に塞がる。
「ははは、何故だろうな?身体中に力が湧いて来る様な気がして来た!」
ジンは、身体の異変に少しづつ気付いていた。
次の瞬間、ジンは一気にオークへと踏み込んだ。
暗黒物質の武器を創造せず、右拳を握り締め、オークの頭を殴る。
ベキベキ!
殴られたオークは頭蓋骨を粉砕され、拳型に頭を凹ませる。
目玉が飛び出し、口や鼻から血や脳漿を噴き出しながら、絶命した。
「化物め!」
残る3体のオークはジンを押さえつけようと、掴みかかる。
しかし、ジンは上半身を暗黒物質の鎧で包み込むとウニの様に刺々しく変化させて、逆に掴みかかって来たオークへとタックルした。
「ぐあああああ!?イデェー!」
全身に無数の穴が空いたオークは激痛で地面を転がる。
ピュンッ!
そこへ、屋上から矢が飛来する。
矢は正確にジンの胸に吸い込まれる様に当たった。
カキンッ!
しかし、矢はジンの皮膚に弾かれる様に地面に落下した。
「ど、どうなっているんだ?」
オークは恐ろしいモノでも見ている様にジンを見つめる。
「ハハハハハ!もう誰にも負ける気がしないな!」
ジンは身体の変化を確信し、勝利を確信した。
「ゲハハハハハ!何だよ!面白そうな事になってんじゃねぇか!」
ジンが声の方を振り向くと、一際身体のでかい立派な鎧に身を包んだオークを中心にぞろぞろと建物からオークの軍勢が現れる。
その数は100を超えていた。




