14話 怒り
ジンは森の先で白い建物を発見した。
草木で囲まれた森の中にポツンと佇む白いコンクリート造りの建物は違和感しかない。
まさに転移して来たとしか思えない状況だ。
ジンは身を屈めて木の陰から建物の様子を伺う。
建物の外には武装したオークが5体、剣や槍を持って周囲を巡回していた。
そして、建物の中からはオーク達の笑い声や怒声に混じって女性の悲鳴や喘ぎ声の様な音が漏れていた。
「・・・やはりここか。」
ジンは迂回して建物の裏側に周る。
よく見ると屋上にも弓を持ったオークが3体見張りをしていたので、森の中に隠れながら、バレない様に移動する。
「なっ・・・!?」
そこでジンは言葉を失う。
そこには、若い男性の裸の死体が山の様に積み上げられていた。
100体近くはある。
恐らく中学生から高校生くらいの年頃だろうか。
身体中に切傷や刺し傷の痕があり、無惨に殺された死体が無造作に積まれていたのだ。
その横では、2体のオークがせっせと死体を解体していた。
手や足を鉈の様な刃物で切断し、もう1人が建物の中に運んで行く。
「良いよな〜中の奴らは、女とヤリ放題で、俺もあっち側が良かったぜ!」
足を二本運びながらオークが愚痴る。
「文句言ってんじゃねぇ!後で幾らでもヤレるだろうが。」
鉈を持っているオークが死体の頭を斬り落としながら叱責する。
「それに、こっちはこっちで新鮮な人間の肉が食べ放題だ。見張り役よりは悪く無いだろ?」
「俺は雌の肉の方が柔らかくて好きだな〜。」
オークは足の肉を嚙りながら文句を言う。
「贅沢な奴だな。 まあ、その内、雌の何匹かは耐えられずに死ぬだろうから食える機会もあるだろうよ。 ほら、愚痴ってないで、さっさと仕事に戻れ。今日中にこれ全部処理しなけりゃ、野性動物に持ってかれちまうからな!」
まるで流れ作業の様に次々と死体を解体している姿を見て、ジンは吐き気が込み上げた。
「あいつら・・・人間を食べるのか。」
ジンは余りの光景にショックを拭いきれない。
建物の中には人喰いの化物達が大量にいる。
そう思うと、恐怖で足が震えた。
「もう嫌、やめて!」
その時、建物の中から1人の少女が飛び出して来た。
全裸に首輪を嵌められたハルカと同い年くらいの少女だ。
少女の身体には、痣がいくつもできており、身体中に粘液の様なモノが付着していた。
少女は首輪から伸びた鎖を引きずりながら、必死に走る。
「・・・かはっ!?」
しかし、誰かが鎖を引っ張ったのか、少女は首を思いっきり引っ張っられて地面に倒れた。
喉を強く締められたせいで、苦しそうに踠いている。
「ゲヒゲヒゲヒ!逃げられるわけねぇだろ!いい加減諦めろ!あんまり抵抗すると、手足を切って、逃げられない様にしちまうぞ?」
建物から現れたのはやはりオークだ。
肥えた腹を抑えながらゲラゲラと笑っている。
「そんなのやだ〜!誰か助けてよ〜!」
「お?ちょうど良いところに鉈があるな。ゲヒゲヒゲヒ、面白いから本当に達磨にしてみるか?」
オークは解体作業をしているオークの元へ少女を引きずると、鉈を手にした。
「お?手足をとるのか?なら片腕か片足は俺にくれ!雌の肉は大好物なんだ!」
先程の愚痴の多いオークが興奮した様に仲間にせがむ。
「い、嫌!やめて!お願いだから!もう逃げたりしないから!」
少女は恐怖に顔を痙攣らせながら、後ずさる。
「もう遅いぜ!ゲヒゲヒゲヒ。」
オークは、鎖を手繰り寄せながら鉈を振り上げる。
その瞬間、ジンは右手に持っていた剣をオークに投げつけた。
後先なんか考えていない。
ただ、衝動的に動いてしまったのだ。
理性など一瞬で搔き消える程の怒り。
ただ、怒りの感情が心をドス黒く染める。
剣は回転しながら、オークの鎧に当たった。
「なっ、なんだぁ!?」
体に剣が直撃したオークは、何事かと驚く。
剣は鎧に弾かれた為、特に怪我は無い。
ジンは立ち上がると、オークの方へと走り出していた。
右手には脇差し程の黒い刀を持ち、怒りに燃えた目でオークを睨む。
「ちっ、人間の生き残りか!」
オークは手に持っていた鉈を振り上げると、向かってくるジンに鉈を振り下ろす。
オークの鉈がジンの左肩に深々と突き刺さる。
鮮血が飛び散り、激痛が襲いくる。
しかし、ジンはそんな怪我など気にも留めずにそのままオークに突進した。
黒刀をオークの鎧の隙間から腹に突き刺し、体重を乗っけて、深く深く押し込む。
「ぐああああ!?な、なんで怯まない?テメェ、死ぬのが怖く無いのか!?」
オークは驚愕の表情でジンの顔を見た。
そして、背筋が凍り付く。
男の表情は余りに冷たく、その黒い瞳は、まるでゴミを見る様に自分を見つめていた。
ジンは内臓に突き刺した黒刀の形をウニの様に刺々しく変形させて、オークの内臓をズタズタに突き刺した。
「ゲハァッ!?」
オークは大量の血を口から吐き出しながら絶命した。




