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10話 悪夢

 その日、佐野春香さのはるかは、何時もの様に遅くまで塾で勉強をしていた。

 高校3年に上がり、受験勉強も本格化して来た時期で、周りも皆遅くまで残っていた。

 ハルカは、静岡の高校に通っており、東京の私立大学を目指していた。

 

 来年のこの時期には、夢の大学生ライフを送っていることを想像しながらモチベーションを上げていた。


「ん〜〜、疲れた〜〜。」


 ハルカは両手を上に上げて伸びをする。

 ずっと座りっぱなしだったせいで、身体中がカチコチだ。

 時計を見ると、21時を過ぎていた。


「もうこんな時間!?そろそろ帰らないと。」


 ハルカが片付けを始めようと椅子から立ち上がると、窓の外が明るく輝き出した。

 まるで昼間の様な明るさで教室内を照らす。

 勉強に集中していた周りの学生達もざわめき出し、窓に集まった。


「何だろう?」


 ハルカが窓に近付いた瞬間、目が眩む様な閃光が教室内を照らした。


 暫くして、光が消え目を開けると、教室内はパニックになっていた。

 

「どうなってんだ?」

「ここどこ?」

「周りが森だぞ!?」

「何だよあれ!?」

「ヤバくない?」

「武器持ってるよ!」

「こっちに来る⁉︎」


 明らかにさっきまでとは違うざわめきだ。

 ハルカは急いで窓の外を覗く。


「何、これ?」


 それは森だった。

 ハルカがいるのは予備校の5階だ。

 割と遠くまで見渡せるが、ずっと遠くまで森が続いていた。

 静岡の中でも、この予備校は市街地に在った。

 いきなりこんな森の景色に変わるなんてあり得ない。

 まるで予備校ごと森の中に転移してしまった様な状況だ。

 

 しかも、よく見ると予備校の周りには何やら怪しい人影が沢山集まっていた。


「・・・何?」


 それは、鎧に身を包んだ浅黒い人間の様で、人間には見えないナニカだった。

 5階からだと、よく見えないが、大きくて、手には剣やハンマーなどの武器らしきモノを持っている様に見える。

 そんな得体の知れないモノ達が森の中からわらわらと出て来たのだ。

 奴らの1人が上を見上げて、ハルカと目が合った。

 豚鼻の醜い顔が嫌らしく口元を歪めてニヤリと笑う。

 ハルカの背筋に悪寒が走る。


「何よあの生き物は?」


 ふと見ると、豚鼻の元へ3人の男性職員が駆け付けて行くのが見えた。

 手には野球バットと防犯用の棒が握られている。


「何だ君達は?直ぐにここから出て行きなさい!」


 体格の良い職員が豚鼻達に怒鳴る。

 だが、近付いてから、相手が人間では無いと気付き、絶句する。


「ば、化物!?」


 もう1人の職員が後ずさる。


「ゲハハハハハ!化物とは失礼な人間だな!」


 一際立派な鎧に身を包んだ一番でかい奴が笑うと、周囲の豚鼻達も一斉に笑い始めた。

 100は下らない数の豚鼻達の不気味な笑い声に、職員達は完全に呑まれていた。


「やれ、陵辱の限りを尽くせ!雌は生け捕りで雄は皆殺しだ!ここを我等の新しい拠点にするぞ!」


 リーダー格らしき豚鼻の号令が響き渡る。


「「「「オウ!!!!」」」」


 それに応ずる様に周りの豚鼻達も武器を掲げて雄叫びと共に暴れ始めた。


 最初に犠牲となったのは、3人の職員達だった。

 

 豚鼻達は戦い慣れしていた。

 躊躇なく剣を振り下ろし、職員の首を跳ねる。

 戦いなんてした事の無い職員達は狼狽えるだけで、反撃する事も出来ずに、2人目が槍で突き刺される。

 3人目が棒を捨てて逃げ出すが、あっという間に捕まり、ハンマーで頭をカチ割られた。


「ヒィ!?」


 ハルカは、恐ろしい光景に足が震える。

 これは現実?

 勉強に疲れて夢でも見てるんじゃないの?


「きゃああああああ!」

「人殺しだ!」

「建物に入って来るぞ!」


 現実逃避をしたい気持ちを、周囲の悲鳴が直ぐにハルカを現実に呼び戻す。

 豚鼻達は窓を割り、そこら中から建物内に進入し始めた。

 既に一階はパニックだ。


 今、塾にいるのは学生達と数人の塾講師と職員だけだ。

 武器も無いし、戦える人間などいない。

 携帯電話で警察を呼ぼうとする生徒もいるが、圏外で繋がらない。


「に、逃げないと!」


 ハルカは直ぐに廊下へ向かう。

 教室の扉を開けると、既に廊下はパニック状態だった。

 下の階から逃げて来た学生達で溢れかえり、逃げるどころでは無い。


「ゲヒゲヒゲヒ!大量だぜ!」


 そこへ豚鼻の化物がやって来た。


「うわああああああ!!」


 パニックが更に悪化する中、豚鼻達は、剣や槍で男子生徒達を次々に殺して行く。

 廊下は血塗れに成り、悲鳴と呻き声が響き渡る。

 中には応戦しようと立ち向かう男子生徒もいたが、素手で敵うわけも無く、直ぐに殺されて行った。


 ハルカは直ぐに教室に戻ると扉の鍵を閉める。

 

「どうすればいいの?」


 次の瞬間、扉が蹴破られて、豚鼻達が教室内になだれ込んで来た。

 

 悪夢は終わらない。


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