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9話 オーク殺し

「テメェッ!よくも仲間を!」


 棍棒を持ったオークが怒りの形相でジンに襲い掛かる。

 オークもまさか武器を持たない人間に仲間がやられるとは思っていなかったのか、かなり驚いている様子だ。

 だが、ジンがナイフを隠し持っていたと分かったオークには、もう不意打ちは通じない。


 オークは右手で棍棒を振り上げると、力任せにジンの頭へ振り抜いた。


 咄嗟にジンは左腕で頭を庇う。

 直後、ドゴンッと重たい一撃が左腕に当たった。

 身体ごと吹き飛ばされる程の棍棒の一撃は、ジンの左腕の骨をバキバキに砕いた。

 

 地面に倒れ込んだジンは、脳が揺れて立ち上がる事が出来ない。

 そこへ、容赦無くオークの蹴りがジンの腹へと叩き込まれる。


「ガハッ!」


 金属の鎧でできた靴はジンの鳩尾にめり込み、一瞬呼吸が止まる。


「もうイヤ!辞めてよ!」


 少女が泣きながら叫ぶ声が聴こえた。


「ゲヘヘヘへ!辞めるわけがねぇだろ!こいつは嬲り殺してやる!」


 オークは再び棍棒を振り上げると、容赦無くジンの背中や頭に叩き付ける。

 肉が潰れ、骨が折れる嫌な音が何度も何度も繰り返される中、ジンは血だまりの中で動きを止めていた。


「ゲヘヘ、もう死んじまったか、人間は脆くていけねぇなぁ!」


 満足したのかオークは視線をジンから少女へと移す。


「ひっ!?」


 少女はビクリと震えて怯える様に後ずさる。

 

「さあ、続きといこうか?楽しもうぜ!ゲヘヘヘへ!」


 


 ジンは、全身の骨が砕け、肉が潰れ、血を流し、最早ピクリとも動く事が出来なかった。

 折れた肋骨が肺に刺さったせいで呼吸も苦しい。

 ・・・自分はここで死ぬのか?

 せめて、あの少女を救ってやりたかった。


 人生、中々思う様にはいかないな。


(・・・あの少女を救おうとした事を後悔しているのか?)

 

 後悔なんかしていないさ。

 正しい事をして後悔するわけが無い。

 ただ、自分に正しい事をやり遂げる力が無かった事が悔しいだけだ。

 

(ならば、強くなれば良いであろう。)


 強く?

 そうだな、力があれば、あの少女を救えたかもな・・・だが、もうダメだ。


(何故だ?)


 もう動けないし、この怪我ではじきに死ぬだろう。


(何を言っているのだ?もう忘れたのか? 魔道書の心臓グリモアハートが破壊されない限り、お前は不死身だ!)


 体の中を魔力の流れが駆け巡るのが分かる。

 身体中が熱くて、むず痒い。

 折れた骨がくっ付き、傷口が塞がっていく。

 まるで、身体の時間が巻き戻っている見たいだ。


 1分もしない内に、全身の傷が綺麗さっぱり消えてしまった。

 最早、痛みも息苦しさも無い。


 ジンはゆっくりと立ち上がった。


「ハ、ハハハハハ!・・・これが魔道書の心臓グリモアハートか!」


 オークの方を見ると、まさに少女の上に覆い被さる様に襲い掛かっている最中だった。

 

「・・・下衆が。」


 ジンは右手に暗黒物質ダークマターのナイフを創造する。

 創り出されたナイフのサイズは今までの倍、恐らくさっきのオークを殺した時に魔力を吸って成長したのだろう。


「なんだ〜?まだ生きて・・・テメェ、なんで怪我が消えてるんだ!?」


 ジンに気付いたオークが起き上がり、棍棒を構える。

 無傷のジンを見て、オークは警戒していた。


「治った。」


「そんな早く治るわけが・・テメェ、魔術師か!?」


 意外に感が鋭い。

 ジンはニヤリと笑う。


「クソッ!だったら治す前に息の根を止めてやる!」


 オークは再び棍棒を振り上げて襲い掛かる。

 対するジンも同時に踏み込んだ。

 最早、ジンに恐れは無い。

 魔道書の心臓グリモアハートがあれば、棍棒で死ぬ事は無い、ならば痛みさえ我慢すれば勝ち目はある。

 

 リーチの差でオークの棍棒が先に振り下ろされた。

 対するジンは再び左腕でガードする。


 バキンッ!


 砕ける音と共に木片が宙を舞う。

 オークは驚愕の表情で砕けた自分の棍棒を見つめていた。

 ジンも予想外の結果に思わず目を見開く、しかし、直ぐに気を取り直し、注意が逸れているオークの首をナイフで掻き切った。


「カハッ!?」


 オークは首から大量の血が噴き出しながらよろける。

 オークは驚愕の表情で必死に両手で首を押さえて血を止めようとするが、動脈からの血は簡単には止まらない。

 見る見る内に両手が赤く染まり、踠き苦しみながら死んでいった。


 その瞳は恨めしそうにジンを睨みつけていた。


「お、終わった。」


 ジンは緊張の糸が切れた様にその場にヘタレこんだ。


(見事だ。)


 ジンは自分の左腕を見つめる。

 腕はなんの変哲も無くいつも通りだ。


(どうしたのだ?浮かない顔をしているな。)


「・・・折れてない。」


 ジンは砕けた棍棒を見る。

 左腕でガードした時、ジンは左腕を犠牲にするつもりだった。

 実際、一度目は骨が砕けた。

 だが、今は逆に棍棒が砕けて、自分の腕は無傷。

 明らかに異常だ。


「俺の身体はどうなったんだ?」


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