入店
中々執筆の時間が取れずに書きたい物ばかりが浮かんでしまい、もうひとつの作品とごちゃごちゃになってしまう前にこっちも出しちゃえっ!て感じです。
行き当たりばったりで本当にすみませんm(__)m
「はぁぁ~~、」
電車に揺られながら思わずため息をこぼす。
ふと見つめた電車の窓に映るのはひょろっとしてリクルートスーツに身を包み24年付き合ってきたイケメンでも無い何処にでもいそうな顔の俺、四十川 紡【あいかわ つむぐ】の何処か覇気の無い姿だった。
憂鬱ながら思い返すのはかれこれ30社は越えたであろう面接の内容だ。
「あなたがわが社を希望する動機等について聞かせて頂けますか?」
…そんな物は結局の所福利厚生や給料、他者へのステータスとして自分に着飾った時の優越感だと思う。
「はいっ、御社におかれましては近年他社の事業縮小化や撤退と有る中でも、様々な分野への新規開拓やまたはそれに付随する地域貢献への挑戦など常に向上心を持って取り組む姿勢に感銘を受け、私も御社の更なる飛躍の為に尽力させて頂けたらと思い志望させて頂きました。更には·························」
……馬鹿らしい、何故こんなにも虚しいんだろうか、始まりから終わりまでが既に見えてしまっているからなのか、それを平然と受け入れて暮らす人々の方が正しいのか、こんな事を考えている自分の方がおかしいのか。
……多分そうなんだろうな
世界中から戦争、貧困、極度な差別などが無くなってからもう100年以上たったらしい。何でも100年以上も昔に世界が滅亡寸前まで追い込まれた時にこの世界を統括する者【マザー】なる者が現れ世界を救ったとか、そのお陰で世界から戦争、貧困、差別等が無くなって、あっ、身分や地位なんかは世界に対する貢献土なんかの区別らしいけど、誰もが【マザー】に感謝を送り平和の象徴と讃え、その後は【マザー】加護の下皆で幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。
…………本当に馬鹿らしいな
勿論与えられた道筋を辿っていけば大きな失敗はしないし、平穏無事に過ごして行けるのだから良いじゃないか。と言う人の考えもわからなくはない、わからなくはないけどすんなりと納得も出来ない。それは生かされているのであって、生きているのとは違うのではないか?
もっと、世界には何かがあったのではないか。
この虚しさを埋められるような心が踊る『····』が。
プシューッ
大きめなエアーの音と共に電車のドアが開かれ、ふと駅名の看板を見ると見事に乗り過ごしていた。
「ちょっ、降ります!降りますっ」
慌ててホームへ降りたものの周りの視線が痛い。
くそぉ、こんな視線の中で次の電車が来るまで待ってられるかよっ、幸いにも乗り過ごしは一駅分だけだし歩いて帰るとするか?。そうだ!日頃の運動不足解消を兼ねて歩い帰る事にしよう!と言うか歩いて帰るつもりでしたから!別に乗り過ごしたりしてませんからっ!初めから歩いて帰るつもりでしたからっ!!。
「はぁぁぁ~~ぁ」
改札を早足で駆け抜け、それから暫く早足で歩きながら辺りに人気がないのを確認する、足が止まるのと同時に盛大なため息が出てきた。
「……本当、馬鹿みたいだな」
少し気分を落ち着かせてから辺りを見回すと全くの知らない場所だった。
「おいおい、24にもなって迷子かよ、まあどうとでもなるけどさ」
上着のポケットから取り出した複合端末【【リンクス】これ一台あればあなたの世界は無限大っがキャッチコピー】を取り出し、マップのGPS機能を立ち上げると端末から周辺地域の地図と現在地が目の前空間に写し出された。
「ん?」
首を傾げながらももう一度マップのGPS機能を立ち上げ直すものの、そこに映し出された地図は目の前の光景とは全くの別物であった。
「んん??………もしかして、……壊れたのか?」
勘弁してくれよぉ、このままじゃ本当に24にもなって迷子じゃないかっっ。何か目印になる建物や道を聞ける所はっ、わたわた
辺りをキョロキョロと見回しながら地図に無い道を進み続けると少し開けた場所に一軒の建物が見えてきた。
「あれは、店なのか?」
近付くにつれて何だか辺りの空気が今までの世界とは変わっていくような不思議な感覚に捕らわれていく。
そのまま建物の入り口まで近付きゆっくりと建物を見渡す。
遠目に店と思えた看板には【海千山千書店】と書かれていた。
「海千山千書店って……ん?下にもまだ何か書いてあるのか?お、おんざ、りぃ?ダメだ、掠れて読めないな」
しかし、2150年にもなろうとしている世の中にこんな木造のボロ屋が、しかも書店だなんて下手したら国家遺産建造物にでもなるんじゃないか?データ端末の高性能化によって紙媒体の書籍が廃れ、今じゃ変わった収集家や金持ちの一部がステータスとして持っている位だろ。
……もしかして!俺は知らない内に国家特別保護区画にでも入り込んでしまったのか!?確か国が保護をしている特別保護区は何やら特殊な方法で管理していると聞いたことがあったな、そう考えると何やら辺りも不思議な感じだし。
「うぅ~ん、ってそれって不味くないか?!俺ってば許可なく入り込んだ不審者じゃんっ!」
あわわわわっ、ど、どどどど、どうしよう?!このままじゃ就職も決まらない内に別の意味で御勤め行きが決まってしまう!
いや、きっと、きっと、ちゃんと訳を話せば理解してもらえるはず!そもそも国が管理しているんなら「いやぁ訳も解らないまま管理区域に入れましたぁ」にっこり、なんて方がおかしいんだからさ!大丈夫っ!大丈夫、……………大丈夫だよね?
「お、落ち着け俺、まずは素直に事実を説明してからだ、よしっ!」
気合いを入れて【海千山千書店】のドアをノックする。………小さく
コン、コン、
「す、すみませぇぇん」
べっ別にビビってる訳じゃないぞ!もし、もしも大変貴重な建造物であった場合に傷でも着けないように優しくノックをしただけだから!別にビビってる訳じゃないから!
…………………………返事がない。
どうしようか、ドアに鍵は……掛かってない。
仕方無くゆっくりドアを開けながらもう一度呼びかけてみる。
「すっ、すみませえぇんっ!」
ギギギッと言う木同士が擦れる音を出しながらドアが開かれていく、そしてそのドアの先には薄暗くて少し埃っぽい部屋があり、その部屋の所狭しに大量の本が積み上げられていた。
「………何だこれは、」
前にも説明した通り今の世の中は紙媒体が廃れ変な収集家や金持ち位しか本を持っていない。持っていたとしてもそれは精々10冊位だ、まぁ様々な国が管理している貴重な文献等は100~200冊位あるらしいけど、しかしそれにしたってここにある本の数は優に1000冊は越えているだろう。
もしかしなくてもこれは国家機密クラスの不味い場所に入ってきてしまったのか!?どうする?!
「おやおや、こんな古ぼけた店にお客さんだなんて珍しい事もあったもんだわぃ」
「ひぃ~っ!」
ガタッ!!
「あっ!」
派手に後ずさってしまった俺が見たものは、その大きめな振動で頭上から崩れ落ちてくる大量の本たちであった。
「む、むぎゅぅ~っ…………………………」
「おやおや、全く、近頃の若者はなっとらんのぅ」
読んで下さりありがとうございますm(__)m