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1話:4 盗賊団改革記

11

 コビトがライツェルを伴い洞窟前に出るとそこには馬車が鎮座していた。

 盗賊に襲われるまでコビトが乗っていた馬車だ。

 外から見る限り異変らしい異変は見当たらないが、僅かに揺れ、中からは嬌声が聞こえてくる。


「女……か」

「あぁ、そうだ……ったく、話が終わるまで手は出すなって言っておいたのに」

「どうやって手に入れた?」

「俺は詐欺師だぞ? 騙して手に入れたに決まってる」


 王都から脱出する際、奴隷商を騙して7人の女奴隷とこの馬車を奪ったのだと簡単に説明した。


「そこであんたらがここらを縄張りにしているんだろうって情報も得て、ここに来たんだ。悪いが、あいつら止めてもらえるか? 女にも使い方ってもんがある」

「いいだろう」


 頷いたライツェルは馬車に向かう。

 直後、怒声が響いたかと思えば、馬車が大きく揺れぞろぞろと下半身を丸出しにした男らが外に出てくる。


「今日からお前さんらの仲間になったコヒトだ。話が終わるまで手は出すなって言ったよな?」

「へへ……あんな美人を前にして手を出すななんて無理な話だ」

「なるほどな……まぁ、高級娼館に卸されるはずだった性奴隷だ。ちょいと難しい注文だったかもしれない。だが、俺にもライツェルからお前らの指揮権を与えられている。今から俺の命令はライツェルの指示でもあるんだ。今後は従え」

「っ!?」


 下卑た笑いを浮かべる男らであったが、コビトの話を聞いた途端驚きの表情でライツェルを見る。

 ライツェルはそんな男らに頷いて見せた。


「そうだ。こうしていい土産も持って俺らの仲間になりたいってやってきたんだ。使えそうな男だから試してみようと思ってな」

「と、言う訳だ。さて、俺の考えでは女を抱くにもルールがある。何も口説いて女から股をひらかせろなんて言うつもりはないがな」


 コビトの言葉に男たちは首をひねった。

 盗賊稼業なんぞしていれば、女は力ずくで奪い思うがままに貪る物だ。そこにルールなどと言うものはほとんどない。


「担当を決める。そうだな……ライツェル、あんたが最初に1人2人気に入ったのがいれば、選べ。そいつはあんた専用だ。それ以外は日に1人は休みで、残りをお前らで抱け。ただし、気を失ったらそれまで、暴力は許さん」

「ほぅ」

「おいおい、休みってなんだよ」

「好きに抱かせろよ」


 感嘆の声を漏らすライツェルと違い、男たちは口々に不平を漏らした。


「お前らの好きに抱かせてたら、朝から晩まで休む暇もなくなって、すぐに壊れちまうんだよ。休みを挟めばそれだけ女も長持ちする。滅多に手に入らない高級奴隷なんだぞ? すぐに壊れたらもったいないだろうが」


 コビトの言葉に納得した表情の者もいれば、どうにも納得できず不満が顔に出ているものもいる。

 そんな連中を気にした様子もなく話を続けた。


「それよりも、今まで女はどうしてたんだ? 今後のこともあるし、この盗賊団のことを教えてくれ」

「いない」

「は?」

「いないって言ったんだよ」

「おいおい、それはないだろ。だって、お前らこの一ヶ月、この国で暴れまくってたんだろ? 襲った中には奴隷商だっていたんじゃないのか?」 


 ライツェルの言葉にコビトは驚きの表情を浮かべた。

 この国では奴隷が公的に認められている。

 犯罪奴隷や借金奴隷などに分けられ、主に娼婦となるのは後者だ。

 その借金奴隷は決して多くはないが、さりとて少なくもない。借金と言っているが、身売りもそれに含まれるからだ。時期的に今は、税が取り立てられる直前と言うことで、税のために身売りした奴隷が多く出る。

 身売りした奴隷が移動していることが多いこの時期に、敵う者がおらず好きなように搾取できたライツェルの盗賊団に奴隷がいないことなどありえない。


「暴れ始めたばかりの時はいたんだがな。暴れてるうちに仲間になりたいって連中がだんだん数が増えてくると女の取り合いになってな。4日前に最後の1人が死んじまったよ」

「ん?」


 コビトは首を傾げた。

 数が増えたと言うのは知っている。騎士団すら敵わず、容易に退けたという話は裏の世界をすぐに駆け巡った。

 おこぼれにあずかろうと国中どころか他国からもライツェルの下に数多の盗賊団が身を寄せているのだ。

 正確な数は噂からはわからなかったものの、その数は優に400を超えることはコビトもわかっている。

 しかし、だとすれば国中で暴れまわり奴隷など簡単に手に入れられるだろ。なぜそうしないのであろうか? と、コビトは疑問に思ったのだ。


「最初は良かったんだがな。だんだん人通りが少なくなって、この1週間でここを通ったのはお前だけだ」

「おいおいおいおい、ちょっと待て。嘘だろ?」

「本当の話だ」

「そうじゃない。そうじゃないんだよ。お前らもしかして……」


 そんなまさかとコビトは心底驚き、それを隠すこともできていなかった。

 ゴクリと唾を飲みこみ、あまりにも予想外な推測を口にする。


「この道でしか活動してないのか?」

「あぁ」


 ありえない。

 コビトは天を仰ぎ、重い溜息をこぼした。


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