極秘レポート
極秘レポート:アスパラガス教について
ことの起こりは2000年前、賢者リョク=オー=ショクの
「正しき者の正しき行いによってのみ野菜は完成する」
という発言からだった。
当時の野菜達は内紛状態にあり、それぞれ緑派・黄派・赤派とその他の派閥に分かれていたとされる。
彼らは互いに、「我こそが真の野菜」と覇を競い、汁で汁を洗う骨肉の争いが行われていたのだ。
その野菜達が賢者の発言を見逃すはずも無く、皆が皆、リョクの元へ真意を問う使者を送った。
それに対するリョクの回答は、次のようなものだった。
「私は永きに渡る旅路の果て、真の野菜たちの姿を見た。
そこでは、野菜達が神から授かりし数多くの試練を乗り越え、
野菜という野菜が皆、芳しき香りを放っていた。」
と。そして、
「私はその野菜を完成させるための術を会得した。」
とも。
賢者リョクは、その術を披露する為に各派閥の主要な野菜達を呼び集め、「調理」の秘儀を行った。
しかし、リョクが「調理」の秘儀を行った瞬間、悲劇が起こった。
天空より無数のアスパラガスが降り注ぎ、リョクと集まった野菜達を貫き、無残にも蹂躙したのだ。
−後に「新緑の夜」と呼ばれる事件である。
「新緑の夜」以前、アスパラガスは野菜という「食べ物」では無く、「観賞用の植物」として見られており、
「緑派の面汚し」とまで呼ばれる存在であった。
アスパラガスらは、この事件を「神の怒り」だと称した。
我らアスパラガスを野菜と認めぬまま「調理」の秘儀を行うなどという愚かなことを、神は見過ごさなかった。
そして、他の野菜達が殺されたのは天誅であり、我らアスパラガスに不義を正すための
尖兵としての役割を与えたもうたのだ、と。
アスパラガスたちはこの事件の後、偉大なる盟主「クサスギカズラ」の下、「AA」の言葉とともに
全ての野菜たちに対して宣戦布告する。
「アスパラガス教」の誕生、そして「真・野菜大戦」の始まりである。
※重要語句:調理…理を調える、つまり野菜達が完成するために不足している理を与えるための術のこと。
AA…Amen Asparagus の略。アスパラガス教の聖句。全てのアスパラガスへと捧げる祝福の言葉。