リバウンドの時間
あれから三ヵ月。
一回り大きくなったパピコがいた。
「ゴールデンウィークはどこ行く? 中華バイキング? イタリアンバイキング? それともケーキバイキング?」
「とりあえずお前、バイキング禁止な?」
ソファでアタルにもたれかかっていたパピコは、非情宣告を受けた。
「私に死ねって言うの!?」
「アホか。このままじゃ太りすぎて病気になって死ぬぞ、お前」
パピコは鬼コーチがいるのにも関わらず、リバウンドをしてしまったのだ。
本人よりも、彼氏が焦っている。
歌を失ったパピコは、やけ食いを繰り返していた。
大学を中退することも考えたが、結局声楽科から作曲科に転科することになった。
「私の声になってください」
と、パピコがアタルに逆プロポーズをしたのだ。
経緯を知っているアタルの答えは、イエスだった。
湧き続ける食欲を食い止めるのは、一苦労だった。
ヘルシーでおいしい料理を作る努力を惜しまないため、アタルの料理の腕前はかなり上がっていた。
「元カレより上手かも」
ぽろっとパピコがこぼした言葉がアタルに火をつけ、料理研究家のようになってしまった。
パピコのダイエットは、長い道のりになるだろう。
だが、二人三脚で頑張ろう、と思えた。
一人じゃない、と思えることは、幸せだな。
「もうすぐ出荷されるぞ」
そんな毒を吐き続けるアタルも、信じられないが裏ではらしからぬ話をしていたらしい。
「パピコに敷かれたレールは、不思議と心地いいんだ」
アタルがそんなことを言っていたと、サムから聞かされた時は、授業中なのに、パピコは飛び上がりそうになった。
いつも食べているアタル特製弁当が愛おしてくなり、インスタにアップする。
空が青いことに、感謝をしたくなってくる。
パピコの心の中は、澄み渡っていた。




